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探求心に底は無く

二頭身ミカエル君「ミカァー?」

二頭身ラファエル君「らふぃー?」

二頭身ミカエル君「ミカー!」

二頭身ラファエル君「らふぃー!」


二頭身ルカ君「ルカァ~?」


二頭身親子「!!」


ミカエル君「オイなんか増えてる」

ラファエル君「 な あ に あ れ は 」

ルカ君「知らないよ(白目)」


 コツ、コツ、と足音が通路の奥へと反響する。


 リュハンシク城は旧い時代に建てられた城を増築したり改築したり、とにかく魔改造の限りを尽くした城なので、場所によっては新しかったり古い時代の建築様式が見られたりとちぐはぐな様子が見られる。


 アレクセイを案内した地下牢は、旧い時代の建築様式がまだ息衝いていた。石畳の床に、寸分の隙間もなく敷き詰められた石の壁と天井。通路の右側面には鉄格子がはめ込まれており、かまぼこ型の横穴には多少の奥行きがある。


 ベッドとトイレ、それから食事の乗ったトレイと監視カメラ(暗視モード付き)以外に物はなく、まるで動物園の檻を思わせるようなデザインになっていた。そこに囚われた者の尊厳はなく、それこそ動物園の動物のように見世物にされているようにしか思えない。


 照明は通路側の2ヵ所のみ。照明のON/OFFは壁面の配電盤にあるスイッチを弾く事で行うが、独房内に灯りはないので看守が証明のスイッチを落とせば独房内は完全な闇に閉ざされる。


 暗闇の中、どこかから滴り落ちる水滴の音を延々と聞かされながら孤独な時間を過ごすのだ。光も刺激もなく、ただ冷たい闇の中で緩やかに五感が壊死していく―――これほどの責め苦はないだろう。


 ベリルを持った看守の兵士が敬礼で出迎えてくれたので、答礼しつつアレクセイたちを独房の中へと案内した。


 通路の右側面、かまぼこ型の横穴にはめ込まれた鉄格子の向こうに、身体を丸くしているマルクの姿がある。オレンジ色の囚人服に着替えさせられた彼はすっかり憔悴しきっているようだが、それも仕方のない事だ。時間があればパヴェルお手製のNTRえっちアニメの上映会が始まるのである。いちゃラブ原理主義者にとってこれ以上の苦痛はない筈だ。


「マルク」


「団長……?」


 こんなところにやってくる筈のない相手―――グラウンド・ゼロ団長アレクセイの姿を見て安心したのだろう。起き上がるや否や、鉄格子の方までやってきた彼の顔には安堵の表情があった。


「安心しろ、釈放だ」


 看守から鍵の束を受け取りつつ、彼に言う。


「このまま当局に突き出せば人権剥奪刑は確実……奴隷としてこき使ってやるのもまあ面白そうではあったが、残念なことにキミのボスが助けに来てくれた」


 良かったな、と言うと、話を聞いていたアレクセイが表情を険しくした。


 まあ、それはそうだ。未遂で終わったとはいえ領主の娘の殺害未遂、それに誘拐、殺害の幇助ともなればこのくらいが妥当である。むしろそうせず穏便に済ませた事に対し感謝してほしいものだ。


 独房の鍵を開錠すると、少しふらつきながらマルクは外に出てきた。


「大丈夫か?」


「ええ、何とか」


「ならよかった……帰ろう、みんな待っている」


「感動の再会の最中に申し訳ないが……誓約書の件、忘れないでくださいよ。マイヨーロフ殿」


 今後、血盟旅団の関係者やリガロフ家の関係者に対し一切の危害を加えない事。


 それへの署名と引き換えに、マルクの身柄を返還するというのが今回の条件だ。


 もしこの約束を保護にした場合、こっちは今回の一連の事件をグラウンド・ゼロの総意と判断。事件の全貌をイライナ当局へと通告しグラウンド・ゼロを国際指名手配するつもりだが、まあ多分当局がそこに至る前に全員殺すと思う。


 約束ってのは、そういうものだ。


 破るためのものではなく、護るための取り決めなのである。だから約束を平気で破るような奴にはその対価を命で払ってもらう―――そうでもしなければ、約束という取り決めは成り立たない。


 ……これで2人目か。”約束破ったら殺す”と通告したのは。


 ノヴォシア共産党にグラウンド・ゼロ―――殺す相手のリストがどんどん増えていく。


 コレあれかな、ミカエル君領主を子供たちに任せた後は殺し屋にジョブチェンジしなさいって事なのかなコレ。


 この調子で「殺すぞ」って相手を威圧し続けたらミカエル君そういう系のキャラなんだって読者の人に誤解されそうだけど、違うからね? そんな事ないからね? ミカエル君心優しいミニマムサイズでモフモフできゅるるんな可愛い系の男の娘だからその辺誤解無きように。


 まあ、それは良い。


 いずれにせよ、約束は守ってもらうよ、マイヨーロフ殿。


 もし約束を違える事があれば、その時は……。







 ―――お前の命を、貰う。


















 まあ、そんな事件があってから一週間後。


 ヴェロキラプター6×6の荷台から食料の入ったケースを引っ張り出し、中からパンとジャガイモ、玉ねぎ、クリームチーズ、それからサーロの缶詰めを取り出す。


 近くの川で汲んできた水でジャガイモの表面の土を落とし綺麗にしてから、ナイフで皮を剥いていく。もちろんジャガイモの芽もキッチリと摘み取っておこう、後で腹を壊したくはない。


 にしても懐かしい……あれは確か高校の家庭科のじゅぎょうの時だったか。ジャガイモの皮を剥いてる最中にでんぷんでぬるっぬるになったジャガイモで手を滑らせ包丁で指をザックリやりかけた事があった……いかんトラウマが。


 皮を剥いた後は持ってきた小鍋に水一杯と塩を小匙一杯入れて沸騰させ、それからジャガイモを投入。柔らかくまであとは茹でる。


 その間にパンをスライスして玉ねぎを刻み、パンにサーロを塗っておく。


 サーロは簡単に言うと豚肉の脂身を塩漬けにしたものだ。イライナでは遥か昔から食用や非常食として用いられてきた歴史がある。イライナ人はみんなこれが大好きで、ノヴォシアやベラシアという似通った文化圏の中でもイライナ人はサーロに対してガチ勢なのである。


 サーロを塗ったパンの上にスライスした玉ねぎ、それから茹でて良い感じに火の通ったジャガイモの塩茹でを乗せて、皿の上にいくつか同じものを用意。ある程度数がそろったところで鍋の火を消し、フィールドワークで夢中になっている嫁のところへ。


「ふーむ……このキノコの胞子の成分はなかなか興味深いねぇ……あ、ちょっと指痺れてきたコレ。やっぱり麻痺ってるねボク。うふふ♪」


「何してんのお前」


「おおこれはこれはマイハニー。実はね、このキノコの胞子に含まれる成分が人体にどのような作用をもたらすのか、このボクの身体を使って実験していたのだよ」


「体張り過ぎて草。それよりご飯」


「わーい♪」


 ぐいっ、と状態異常回復用のエリクサーを一気飲みして目を輝かせ、こっちに駆け寄ってくるLサイズシャーロット。意識してないのかわざとなのか、のしっ、とHカップのおっぱいを人の頭に乗せながら、せっせと用意した昼食にかぶりついた。


「ん~♪」


「即席で作ったやつだから味は期待できないけど」


「いやコレ普通に美味しいよ。ボクこれ好き」


「それは良かった」


「いやぁ、ミカ良いお嫁さんになるよ。このボクが保証する」


「 も う 結 婚 し と る や ろ が い 」


 相変わらずのフィールドワークではしゃぐシャーロットにツッコミを返し、首の骨を苛むシャーロットのずっしり重量級Hカップおっぱいの重みに耐えながら、俺も自作のサンドイッチをガブリ。


 サーロの旨味と塩気が利いていて、ジャガイモの滑らかな口当たりに玉ねぎのシャキシャキ感が良い感じのアクセントになっていて食が進む。うん、悪くない。


 元々こういう現地で作る簡単な飯は冒険者になる前に色々とレシピを調べて勉強したものだ。場合によっては現地調達した食材で何とかやり繰りしなければならない事もあるので冒険者たるものそういう知識も必要になってくる……筈だったのだが、10年以上前から学んでた知識が活かされるのが大食いの嫁と結婚した後ってどういうことだ。


 いや、一度学んだ知識はもう自分の財産とも言えるので無駄とは決して言えないのだが。


「それにしても」


「?」


 ロリ枠から一転、長身爆乳お姉さんと化したシャーロットの膝の上にちょこんと腰を下ろし、むっちむちの太腿とでっかいおっぱいに上下から挟まれながらサンドイッチを頬張るミカエル君。シャーロットの奴、いきなりごそごそと上着をたくし上げて何をするつもりかと思いきや、引き締まったお腹を真っ白な手でさすり始めた。


 お腹いっぱいになった……わけではないのだろう。


「妊娠……しないねェ」


「んー……」


 そうだな、と思いながら俺もシャーロットのお腹をさすった。


 真っ白ですべすべで、それでいて引き締まった贅沢なウエスト。


 最近はシャーロットとの連戦が目立つわけなのだが、一向に妊娠する様子がない。一応はもう生身の身体だし、精密検査でも子を産める身体である事は確認されているのだが……。


「大丈夫、きっと生まれるさ」


「ん……ありがと」


 ぎゅ、と後ろからシャーロットに抱きしめられて、思わずドキリとしてしまう。


 コイツ普段の振る舞いからいきなり本音をぶつけてくるので油断も隙もあったもんじゃない―――何なのこの可愛いお姉さん。


 
















 食事を終え、フィールドワーク再開。


 ひとまず管理局からはキノコ採取の依頼を受けていて、既に規定数の50本を大幅に上回る数のキノコを採取しているのだが、シャーロットはそれで終わらせるつもりはないらしい。


 食用のキノコから毒キノコ、その他の珍しいキノコまで幅広く採取してはサンプルと称し持ち帰って研究するつもりのようだ。


 既に採取したキノコの種類は実に47種類。そのうち確認された新種は19種類もある。新種に関しては研究の上、レポートを作成して管理局に提出するつもりらしい。

 

「コレ、なかなか有用だとは思わないかい?」


 そう言いながらシャーロットが引っこ抜いたのは、調査で発見した新種のキノコだ。


 人間の手首から上くらいの大きさで、手のひら程度の大きめの傘を持つそれ。灰色で、傘の付け根のところには虫に食われたような黒い斑点がある。


 いくつか採取したそれをぎゅっと握るシャーロット。するとまるで水を含んだスポンジのように、キノコの中からどろりとした黒い液体が溢れ出てくる。


 ―――信じられない話だが、石油だ。


 シャーロットがアホみたいな探求心の果てに発見した新種のキノコ。その中の一種はなんと内部に石油を溜め込む種である事が判明している。


 とはいえキノコ1つから採取できる石油の量はたかが知れているが……これを繁殖させて大量に採取できるようになればどうなるか。


 下手をすれば革命が起こるのではないか……そんな期待を抱かずにはいられない。


「帰ったらレポートやらなにやらちゃっちゃとまとめて、コレの繁殖方法の研究をするつもりだ」


「期待してるぞ」


「ふふっ、任せたまえよ……あ、でも今夜は予定を空けておくからね?」


「……今夜も頑張らないと」


 ははは、と苦笑いする。


 正直言って、特にホムンクルス兵の嫁……クラリス、シャーロット、シェリルの3人の性欲とスタミナは天井知らずだ。搾られまくって気がついたら朝だったとか、一晩中人の上に乗ってたとかそういうのが当たり前なのである。


 サンプルを荷台の上に乗せ、スキップしながら森の中でキノコ採取に勤しむシャーロット。


 そんな無邪気な妻の様子を、遠巻きに見守る。


 人類はこの世界を知り尽くしたように思えるが……それでもあんな種を知らなかったように、実はまだまだこの世界の本当の姿を解き明かしたとは言えないのではないだろうか。


「んひょぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」


「どうした!?」


 なんか尋常じゃない悲鳴が聴こえてきたんだけど……?


 非常事態の香りを嗅ぎ取るや、反射的にベリルの安全装置(セーフティー)を解除しフルオートに弾いた。ポーランド製のAKをいつでも撃てるようにしながら、シャーロットの悲鳴が聴こえた方向へと走る。


「なんだ、どうし―――」


「いやいや、参ったねェ」


 大きな木の影を覗き込むと―――そこには、腰から下が穴にはまり込んだシャーロットの姿が。


「あっ、待っ……何か触手に触られてる感じがする」


「え、何? ソレえっちな穴? えっちな落とし穴なの?」


「そうかもしれn……あっ待って今下半身の感覚消えた」


 ま さ か の 感 覚 遮 断 落 と し 穴 ! ? 


「オイィィィィィィィそれヤバいやつじゃねえかァァァァァァァァ!!!」


「アッハッハッハ! いやあ興味深い! 実在したんだねェ感覚遮断落とし穴!」


「言ってる場合か!」


 ぐいー、とシャーロットの腕を思い切り引っ張る。


 さすがにシャーロットも触手のママになるつもりはないらしい。「ていっ」とやる気あるのかどうか分からない変な掛け声を発したかと思いきや、左手の力だけで強引に下半身を穴の中から引っ張り出す。


 穴から出てきたシャーロットの足には真っ赤な触手が何本か絡みついていて、穿いてた黒タイツも粘液まみれになっていた。あーあ……。


「こんにゃろ人の嫁によくも」


 スパパパパ、とサプレッサー付きのベリルでフルオート射撃を落とし穴の中へと叩き込んだ。壁面から生えていた触手が何本か千切れ、紫色の体液が吹き上がる。


 トドメに手榴弾でも落としてやろうかとグレネードポーチに手を伸ばす俺の後ろでは、シャーロットがせっせとタイツに付着した粘液のサンプルを取ってるところだった……いやブレねえなお前!?


「ああ待って、殺しちゃダメだよミカエル君」


「……お前、まさかこの落とし穴もサンプルとして持ち帰るつもりじゃねえだろうな?」


「ザッツライト☆」


「……嘘ぉ」


 この後、3時間かけて感覚遮断落とし穴の本体をスコップで掘り起こし、トラックの荷台に乗せて城まで持ち帰る事になるのだが、それはまた別の話である。









 

エロトラップ防衛線


 かつてリュハンシク州の東部、国境付近に展開していたという防衛線。国境線に沿う形で大量の感覚遮断落とし穴を配置する事で構成されていたが、宰相アナスタシアと国連から「いやさすがにエロトラップの軍事利用は非人道的すぎる」と待ったがかけられ、設置から3日で撤去された。代わりに大量の地雷が埋められ国境付近は地獄と化した。


 なお、この際設置された感覚遮断落とし穴はシャーロット博士の手により品種改良が施されており、触手からの媚薬の分泌や服だけを溶かす粘液の分泌が可能となった他、穴の外まで触手を伸ばし獲物を落とし穴へ引きずり込むなどよりアクティブなエロトラップへと変貌を遂げていたという。


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― 新着の感想 ―
流石にグラウンドゼロもあの条件を飲みますよね。主権国家の法律と軍隊を敵に回すと突きつけられ、なおも対抗できる冒険者ギルドなんてありません。対抗できるとしたら主権国家の支援を受けた尖兵で…彼等はそういう…
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