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それぞれの旅立ち


 どどん、と目の前で美味しそうな匂いを発するステーキを見下ろし、セロは何ともまあ複雑そうな表情を浮かべていた。


 熱々の鉄板の上でバターの香ばしい香りと共に肉汁を発している巨大な肉の塊―――今回の戦いでしゃもじが撃破した、ガノンバルドの肉だった。


「いやいやいや……確かにガノンバルドとは戦ってみたいとは思っていたのだが……」


「ほら、ガノンバルド」


「ガノンバルド(調理済み)」


 バートリー家の一件が終わって別れた後、一足先にベラシア最大の都市ミリアンスクへと直行していたセロとマルガレーテの2人。以前に別れた際に大量の物資を提供した事もあって、道中での補給は最低限で済んだらしい。


 意外と魔物とエンカウントする事もあまりなく、すんなりとミリアンスクへと到着したのだそうだ。その後は冒険者の仕事を受ける……前にマルガレーテのリクエストで観光していたところで、今回のガノンバルド襲撃、そしてマガツノヅチ出現の知らせを聞いて引き返してきたという。


 戦いたかったなぁ、と言いたげな表情でガノンバルドのステーキを見下ろすセロの隣では、マルガレーテが無駄のないスマートな動作でナイフとフォークを使い、小さく切り分けたガノンバルドの肉を切り分けていた。


 以前はガーリックソースで食べたけど、今回はバターソース。ノヴォシア、イライナ、ベラシアでは酪農も盛んで、こういう乳製品は非常に多く出回っている。特に料理にバターやサワークリームを使う頻度は極めて多い。どのくらいかと言うと、日本人が料理に醤油を使うくらいの頻度、と断言してもいい。


「あっ美味しい」


 もぐもぐとガノンバルドのステーキを食べていたマルガレーテがぽつりと感想を漏らすと、セロもちょっと大きめに切った肉を口へと運んだ。


 何も言わなかったけれど、美味しかったのだろう。ちょっとだけ目を開いた彼女の顔を見て、俺も二度目となるガノンバルドのステーキを堪能するべくナイフで肉を切り分けていく。


 相変わらず凄まじい量の肉汁だ。竜には捨てる部位が無いと言われるのも頷ける。堅牢な外殻や鱗は耐火性の高い素材として防具や工場の耐熱部品に、堅牢な骨は武器の素材から薬や食材として、そして可燃性の体液は燃料として……あらゆる部位が、あらゆる用途で使われる。


 竜は力の象徴、食物連鎖の絶対者であると同時に、人類に恵みをもたらす存在でもある、という事だ。


 ちらりと視線を隣のテーブルに向けた。


 中身が転生者だからナイフとフォークの扱いにはそれなりに慣れているしゃもじは、特に何の問題もなくそれらを使いこなして切り分けたステーキを口へと運んでいる。そろそろ叫びそうだな、と思ったところで耳栓をすると、モニカとしゃもじが同時に立ちあがった。


「「うっっっっっっっっっっっっっま!!」」


 唐突の絶叫×2、いつもの倍の音圧。食堂車の天井がびりびりと震え、窓には亀裂が生じ、厨房の向こうにいるパヴェルはまるでプロパガンダ写真に写るソ連兵みたいなポーズで固まっている。何だアレ。


 向かいの席でナイフとフォークの扱いに慣れず、箸を使ってステーキを食べようとしていた範三は白目を剥いており、隣にいるおもちはと言うと顔色一つ変えず口いっぱいにステーキを押し込んでもぐもぐしている。


 耳栓してたからアレだけど、多分普段の倍だから400dBくらいはいってたかな、と他人事のように思いつつ耳栓を外し、切り分けたステーキを口へと運んだ。


「そういえばさ、ミリアンスクってどんなところだった?」


 何気なく問いかけると、バレないように付け合わせのグリンピースを脇に退けようとしていたマルガレーテを「好き嫌いは駄目だぞお嬢、大きくなれないぞ」と咎めていたセロはコップに手を伸ばしながら話してくれた。


「なんというか……大都市といえば大都市だけど、森の中みたいに静かな場所だったぞ」


「へえ」


「美術館とか図書館とか、そういう場所がいっぱいある。動物園もあった」


「動物園」


「ああ。普通の動物だけじゃなく、ゴブリンとかラミアとか、一部の魔物も飼育されてたよ」


「魔物まで?」


「ベラシアは古い時代の生態系が残されている場所って聞いたけど……まあ、他の動物園ではなかなか見られないな」


 そりゃあ確かにそうだ。


 ゾウとかライオンとかクマとか、そういう普通の動物を飼育している動物園だったらキリウにもあった。母さんから貰った小遣いでこっそり行って見てきたけど、動物に関しては転生前の世界と変わらないな、というのが正直な感想だった。


 ちなみにキリウの動物園にはジョンファから輸入したと思われるハクビシンもいて、檻の前で見ていると『お、仲間やんけ』と言わんばかりにピンクの鼻をピクピク動かしながらみんなこっちに寄ってきた。


 まあ、話が脱線したけどそんな場所だ。前世の世界と大きな変化はない。


 でも、魔物までそうやって展示している動物園というのはなかなか聞かない。珍しいもんだな、と思いながら、バターソースの染みた付け合わせのマッシュポテトを口へと運んでいると、マルガレーテがニヤニヤしながらセロの脇腹を軽く肘でつつく。


「ゴブリンに威嚇されて威嚇し返してたもんね、セロは」


「やかましい」


 何やってんのお前。


 檻を挟んで互いに互いを威嚇するセロとゴブリン、想像してみるけどだいぶシュールな光景だとは思う。


 楽しそうで何よりです、と思いながら食事を続けているミカエル君の隣で、ステーキを平らげたクラリスが早くもおかわりを要求していて、まあこっちも平常運転だなと苦笑いする。


 付け合わせのグリンピースを口へと運んでいると、デフォルメされた熊のイラストが描かれたエプロン姿のパヴェルが別の皿を持ってきた。湯気を発する深い皿の中は朱色の透き通ったスープで満たされていて、キャベツやニンジン、タマネギといった野菜と一緒にガノンバルドのものと思われる骨付きの肉も入っている。


「ガノンバルドのスープです~」


「「おー」」


 これは美味そうだな、とスプーンを手に取ると、俺が食べるよりも先にスープを口にしていたしゃもじ&モニカが、また叫ぶ気配を見せた。


 咄嗟に耳栓を手に取るが、しかし遅かった―――あと1秒気付くのが早ければな、と思っていた頃には、本日二度目の絶叫が食堂車を揺るがした。


「「うっっっっっっっっっっっっっま!!!!!」」


 無事、耳が死んだ。












「なんか……悪いな、またこんなにどっさり」


 ランドクルーザー70のトランクと後部座席は、またしても大量の食糧や日用品、飲料水でギッチギチになっていた。少なくともこれで3週間から1ヵ月は無補給でも大丈夫だとは思うが……。


 食料の中には前回討伐したガノンバルドに加え、今回しゃもじが討伐したガノンバルドの肉とか、それを干し肉にしたものも含まれている。ガノンバルドは身体がとにかく大きく、それでいて捨てる部位が無いほどどの部位の肉も食用として適している(というか高級食材である)ので、それを全部保存するとなれば巨大な冷凍庫でも借りなければ収まりきらない。


 列車にある大型の冷蔵庫でも、ギッチギチに詰め込んでやっと10分の1が保存できる状態だ。だから入りきらない分はその日のうちに食べてしまうか、冷蔵庫での保存が不要となる干し肉にしてしまうか、誰かにお裾分けするしかないのだ。


 そういう事情もあってランドクルーザー70の車内は食料やら素材で一杯だ。外殻とか鱗とか骨は高値で取引されているので、不要であれば売ってもいい。それで旅費の足しになる筈だ。


 他には車の燃料としてガソリンの入ったジェリカンも積み込んだし、銃器類のクリーニングキット(パヴェルお手製らしい)も積み込んだ。


「なんかすまんな……戦闘に遅れた挙句飯にこんな物資まで」


「いいっていいって」


 ちょっと申し訳なさそうに言うセロの傍らで、マルガレーテが助手席へと乗り込んだ。普段は後部座席に乗っている(というかセロ曰く「彼女専用のスペースがある」らしい)マルガレーテだが、大量に積み込んだ物資の関係で後部座席は簡易保管庫と化している。


「あ、そういえば」


「?」


 くいくい、と手招きされたので、セロに続いて近くの積み上げられたパレットの影へと向かう。先ほどまでの親し気な表情を浮かべていたセロはどこへやら、周囲に誰もいないか念を入れて確認するセロの顔には、プロの諜報員のような隙のない表情が浮かんでいた。


 こりゃあ何か重大な話でもあるな……それも良いニュースか悪いニュースかと言われたら、限りなく悪いニュースが。


 そうなんだろ、そういう事なんだろ、と思いながらセロの顔を見上げていると、彼女は腕を組みながら話を始めた。


「……道中、奇妙な話を聞いた」


「奇妙な話?」


「ああ」


「ウガンスカヤ山脈の山中にある地層から、”未知の兵器が発掘された”らしい」


「未知の兵器?」


 問うと、彼女は頷いた。


 ウガンスカヤ山脈―――ベラシア最大の都市、ミリアンスクの前に立ちはだかる山脈だ。急勾配が多く、機関車に負荷がかかる事が予想されるため、多くの列車はこのバラドノフ村の先にある都市『ヴィラノフチ』からもう1両の機関車を連結、いわゆる”重連運転”で山を越えるのだという。


 そのために、ヴィラノフチには重連運転で列車を送り届ける専門の業者がいるのだとか。


 俺たちも例外ではなく、ヴィラノフチに到着したらそのために業者を雇う予定ではある。


 しかし―――その通過点となるウガンスカヤ山脈での話には、不穏な空気しかない。


 すると、セロは懐から1枚の白黒写真を取り出した。どこかから盗み出したものなのだろうか?


 写真には数人の騎士団の人員が映っており、彼らの目の前には見覚えのある車両が鎮座している。足元には履帯があり、重厚な装甲と半円形の砲塔、そしてそこから伸びる主砲……。


 旧ソ連が製造した、『T-55』と呼ばれる戦車だった。


「これは……そんな、まさか」


「私も不思議に思った。どこかの、我々以外の転生者がうっかり異世界人に兵器を鹵獲されたものと思っていたんだが……どうやらこのソ連の戦車は、ウガンスカヤ山脈内の地層から発掘されたものらしい」


 よく見ると、砲塔の側面には所属を現すエンブレムのようなものが描かれている。でも、写真が不鮮明なせいでエンブレムははっきりとは見えない。


 装甲の塗装も剥げ落ち、履帯もよく見ると外れているようで、転生者が召喚した兵器というよりは本当に地中に埋まっていた兵器……と見るのが自然かもしれない。


 しかし、なぜ?


 なんで異世界にソ連の戦車が?


「こいつは今どこに?」


「それが、スクラップ業者が分解して運ぼうとした瞬間に爆発、全焼したらしくてな……」


「爆発? 地中に埋まってた戦車が?」


「ああ。燃料に引火したのか、電気系統がアレだったのか、それとも砲弾の信管が誤動作を起こしたか……詳細は分からん。だが、少なくとも異世界人たちに戦車を解析される事は回避された、という事は確かだ」


 受け取った写真を見つめながら、俺は目を細めた。


 ベラシアの地中から出土した戦車、そしてそれを回収しようと戦車の分解を試みた業者が爆発で全滅……いったい何があったのだろうか。


 そして砲塔側面のエンブレム。相変わらず不鮮明だが、辛うじて『Д-33』という識別番号と、【鎌と金槌と星】を組み合わせたエンブレムである事は分かる。


「その写真はやる。パヴェルにも見せてやれ」


「ああ、わかった……なんだかすまない」


「気にするな、飯と物資の礼だと思ってくれればいい。じゃあ、私はこれで」


「気を付けて」


「ああ。こっちで何か掴んだら連絡するよ」


 そう言い、セロはランドクルーザーの方へと歩いていった。


 慣れた様子で運転席へと乗り込み、シートベルトを締めるセロ。手を振って見送る俺にクラクションを鳴らして別れを告げ、2人と大量の物資を乗せたランドクルーザーはレンタルホーム脇の空き地を走り去っていった。


 やがてランドクルーザー70の後ろ姿が車道を行き交う車列に呑まれて見えなくなったところで、もう一度貰った写真を見下ろす。


 120年前の人類消滅、謎の組織、クラリスの正体……ただでさえ多くの謎を抱え込んでいるところに、新しい謎がまた1つ……増えた。













 キーを捻ると、新たに召喚したキャンピングカー……Bimobil EX 435のエンジンが、高らかに唸った。


 軍用車を思わせる、武骨な車体のキャンピングカー。車内の冷蔵庫とか空いたスペースには、ミカたちからたっぷりと提供してもらった食料や飲料水などの物資(正直、こんなに提供してもらって大丈夫かと心配になる)が積み込んであって、入りきらない分はルーフの上、スペアタイヤと一緒に防水シートをかけて乗せてある。


 個人的に嬉しかったのは、食料品の中に煉羊羹が含まれている事ね。保存食としても有用だし、お菓子としても美味しい。まさか異国の地で和菓子を口にできるなんて、という懐かしさにも似た感激があったんだけど、砂糖とかどうやって手配したのかしら?


 こっちの世界の食糧事情は前世の世界と比較すると厳しい方に入る。基本的にお菓子なんて貴族の子供の口にしか入らない贅沢な代物で、砂糖も高値で取引されていると聞いた。羊羹にもそれなりの量の砂糖を使うはずなんだけど……もしかして盗んだのかしら?


 なーんてちょっと失礼な事を思う一方で、ミカたちが羨ましくなる。


 パヴェルみたいな万能選手が居るという事が、どれだけ心強い事か。


「なんだか寂しいな」


「そう言わないでよ、いつかきっとどこかで会えるわよ」


 見送りに来てくれたミカに運転席からそう言うと、助手席でガノンバルドのジャーキーをもぐもぐしていたおもちも赤べこみたいに首を縦に振った。


「それより羊羹ありがと」


「パヴェルは”口に合うかどうかわからんぞ”って言ってたけど」


「大丈夫、もう試食済みよ。口にはばっちり合うわ」


「早っ」


「ところで彼器用ね。パヴェル貰っていっていい?」


「ダメに決まってるだろ」


 そりゃあそうよねぇ。


 ぶえっくし、と食堂車の方から野太いくしゃみが聞こえてきて、ちょっと笑ってしまった。


「しゃもじたちはこれからどこへ?」


「せっかくだし、いろんな国を見て回るわ。手始めにドルツ地方かしらね? 生の豚肉を食べる文化があるって聞いて興味が湧いたわ」


「生の豚肉」


 何だっけ、”メット”だっけ? 


 ドイツの厳格な審査基準を満たしてないと食べる事が出来ない生の豚肉。日本ではまずお目にかかれないというか食べれない代物、それとほぼ同じものがこっちの世界にもある、と倭国に居た時に購入した西洋文化の本で知ったのよ。


 父上たちは『生の豚肉? 正気の沙汰じゃないなあ』なんて言ってたけど、多分海外から見た倭国の刺身とか寿司も似たような感想を抱かれてるんじゃないかしら。一刻も早くこっちの世界でも世界的な人気を勝ち取って欲しいと切に願うわ。


 さて、そろそろ行こうかしら。


 アクセルを踏み、ミカに手を振ってキャンピングカーを走らせた。うん、Ripsawと比較するとだいぶ普通の車ね(そりゃあそうよ)。


 どっさりと積み込んだ荷物のせいか、ちょっとハンドルが重い。とりあえずは車をぶつけないよう細心の注意を払い、見送りに来てくれたミカや列車の窓から手を振る血盟旅団のみんなに手を振って、私たちも空き地を離れた。


 ウインカーを出して右折、バラドノフ村の外を目指す。とりあえず目指す先はドルツ地方―――今だ統一されていない群雄割拠の地に、生の豚肉が待ってるわ。


 そういえば、さっき見送ってくれた人の中に範三が居なかったわね、と思って少し寂しくなった。寝ていたのか、それとも何か用事でもあったのか―――そう思いながらキャンピングカーを走らせていたその時、何気なく歩道に視線を向けた私はちょっとびっくりした。


 バラドノフ村の出口付近にある古びた信号機の足元に、見慣れた朱色の袴姿の獣人が立っていた。


 腰には見覚えのある刀―――満鉄刀を提げている。


「範三……」


 腕を組み、笑みを浮かべていた範三が、ぐっ、とこっちに向かって親指を立てた。


 何よ、わざわざこんなところで待っていたって言うの? まったく、彼らしいと言えば彼らしい。義理堅い範三が友人の見送りをしないわけがない、とは思っていたけれど、こんなサプライズを用意して待っていたなんて。


 私も彼に向かって親指を立て、クラクションを鳴らした。


 これでしばらく、彼ともお別れ。


 けれどもなんだろうか。倭国で以前に別れを告げた時と比べると、範三の顔に浮かぶ笑みは晴れやかなようにも、あるいは憑き物が落ちたようにも見えて、随分と解放されたようだった。


 まあ、復讐という重い枷から解放されたんだもの―――これからは楽しい人生を送れるよう、私も祈ってるわ。


 範三の姿がサイドミラーから消え、車は村を出て草原に差し掛かる。


 どこまでも、どこまでも、ずっと地平線の彼方まで続く舗装すらされていない道。がたがたと揺れる車内で地図を広げるおもち(この子よく車酔いしないわね)が、ドルツへの道を確認しながら言った。


「ねえしゃもじ」


「なあに?」


「その”メット”っていう生の豚挽き肉って、美味しいの?」


「食文化として定着している以上は美味しいと思うわ」


 まあ、それを確かめに行くんだけど。


 ドルツにはもちろん行くし、現地の文化も堪能するつもりだけど、他にもイタリアとかフランスにあたる国にも行ってみたいわね。リンゴを使ったお酒のシードルとか、レモンを使ったリモンチェッロとか、そういうお酒も堪能してみたいわ。


 え、未成年なのに飲むなって? 失礼ね、私は成人済みよ。


 そんなことより。


 ―――本当、健康な身体ってなんて素敵なのかしら。


 転生前、病院のベッドと病室だけが私の世界の全てだった。


 けれども、今は違う。


 自由に外が出歩ける。自由に呼吸ができる。


 今の私には、自由がある。


「さあいくわよおもち! 世界が私たちを待ってるわ!」


「ん、きっとそう」


 だから思い切り楽しむのよ。等身大(ありのまま)の世界を。


 前世で出来なかった分まで、思いっきりね。













 AA20が重々しい警笛を打ち鳴らした。


 口にホイッスルを咥えた制服姿の駅員が、出発許可を意味する白い旗を振って合図を送ってくれる。機関車に乗るルカがそれに旗を振り返して返答するや、俺たちの列車もゆっくりと動き始めた。


 木材で造られた小さな、けれどもお洒落な駅のホームが後方へと流れていく。


 バラドノフ村での滞在は長かったようで短かったし、何よりピャンスクのガノンバルドの一件から色々あり過ぎた。


 Bランクに飛び級したり、ガノンバルド討伐を聞きつけたしゃもじに目を付けられたり、範三の復讐を手伝ったり……色々と煮詰めて濃縮したような、そんな濃い一週間だったと思う。


 苦難もあったが、楽しい事もあった。そして何より、新しい仲間もできた。


 さて―――これから先、どんなことが待っているのだろうか。


 この線路の先でどんな出会いが待っているのか、実に楽しみだ。






 第十二章『剣戟の果てに陽はまた昇る』 完


 第十三章『山脈を越えて』へ続く





 

 

ここまで読んでくださりありがとうございます!




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