プロローグ1 帰省しようとしたら事故りました
皆さんお久しぶり(?)です、往復ミサイルです。早速ですが新作スタートです。楽しんでいただければ幸いです。
それではどうぞ!
実家に帰るのは何年ぶりだろうか。
山の中に穿たれたトンネルの中、車を走らせながら、ふとそんな事を考える。最近は仕事が忙しくて実家に帰省するどころか、連絡する余裕すらない。ひたすら仕事、仕事、仕事。サービス残業の時間も増えてきた……そんな中で掴み取った長期休暇だ、奇跡と言っていい。
俺の名前は『倉木仁志』、入社して3年目の21歳だ。岩手の実家から遠く離れた東京の会社に就職したのは良いんだが、やはり実家を離れて一人暮らしというのもなかなか寂しいものだ。前向きに考えれば1人の時間が増えたとも言えるが、それでも孤独感は常にやって来る。
まあ、他人とのコミュニケーションがちゃんと取れるような人間ならばそんな事も無いのかもしれないが、生憎俺は学生の頃からあまりそういうのは得意じゃなかった。友達が居なかったわけじゃないが、他のやつにガンガン絡みに行くような人間とは程遠い、いわゆる陰キャだった。
そんな奴が東京で1人暮らし。我ながら、よくそんな生活を送ろうと決心したものだと思う。
まあいいさ、久しぶりの帰省だ。家族も居るし、少しすれば親戚も戻ってくるだろう。久しぶりに従兄弟たちと昔の思い出話に花を咲かせるのも悪くない。
トンネルを抜け、カーブへと差し掛かる。
実家に戻るには峠をいくつも越えなければならない。いい加減高速道路とか開通しても良いような気がするのだが……東京からここまで車を走らせる労力はかなりのものだ。もうちょっとこう、交通の利便性をだな。
昔と変わらぬ山道を走り、カーブへと差し掛かったその時だった。
対向車がカーブの加減をミスったのか、車線を大きくはみ出しこっちへ突っ込んできたのだ。いきなりの事だったのと、長時間の運転で疲れていたせいで反応が遅れ、背筋に冷たい感触が走った頃にはもうフロントガラスの向こうに対向車が迫っていた。
向こうの運転手は中年の女性。相手の慌てる顔がはっきりと見えた頃には、凄まじい衝撃とひしゃげるような金属音が走り―――俺の意識を、あっさりと叩き潰した。
入社3年目―――やっとの想いで掴み取った長期休暇は、人生と共に終わる事となった。