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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

ちょっと異世界行ってきた

作者: ぽいずん

突貫製作です、ゆるい目でご覧ください!

『もし、聞こえていますか? もしもし』

「うわっ!?」


 あれ? ここはどこだ?

 あれ、俺は何をしていたんだったか… 確か片道徒歩30分の大型スーパーに買い物に行っていたはずだが。


「そうだ! 横断歩道を渡っていたら交差点でトラック同士の事故があって、荷台に積んでいた荷物が俺の方に飛んで…」

『思い出しましたか? そうです、貴方は事故に巻き込まれ、荷物が頭部に当たって昏倒したのです』

「はぁ… つまり俺は死んだという事ですか?」

『いいえ、まだ(・・)死んではいません』

「え? それは一体どういう事ですか?」


 ここまで会話をして、初めて俺がこの場所に1人ではない事に気づく。

 ふと見ると、なんと表現して良いか… 日本人ではあり得ない造詣の美しい顔、透き通るような肌、悪い言い方をするとまるで人形のような女性が立っている事に気づく。例えるなら女神様といった感じか… まぁ女神様なんて見たこともないけどな。


『言葉の通り、まだ死んではいません。とはいえ、あのまま数十分もすると死んでしまいますが』

「そうなんですか…」


 そうか、かろうじて俺は生きているようだが時間の問題というやつなんだな。でもそうなると、今ここにいる俺はなんなんだ? 特に怪我をした様子も無いし痛いところも無い。


『それはですね、地球世界にいて瀕死の状況になっている貴方の分体… と言うべき存在が此処にいる貴方なのです』

「それってつまり、どういう事なんですか?」

『先ほども言いましたが、このまま放置すると間違いなく貴方は死んでしまいます。そこで、私は貴方と取り引きをしにこの場所まで呼び寄せたのです』

「取り引き… ですか。そしてその内容は?」

『実はですね、私の管理する世界が滅亡の危機に瀕しているのです。魔物だけが住む世界と繋がってしまい、今現在も侵攻を受けています。

 そこで取り引きなのですが、私のような創造神は加護を与えたり剥奪したり、新規で創造する事は出来るのですが地上に物理的な干渉をする事ができないのです。なので貴方に加護を与え、私の世界の危機を救ってほしいのです。もちろん役目を果たした暁には貴方を地球世界に帰す事も約束しますし、何よりも私の世界で強くなり、貴方に起きている状況を覆す事も可能になるのです』

「え…?」


 つまりどういう事? 今の俺は放っておけば死ぬ状況にあって違う世界を救いに行く? いやいや、全くわからん!


『私の創造した世界ではレベル制を採用しております。レベルが上がれば肉体も魂も成長し、とても屈強な体になる事ができるのです。

 私の世界で魔物を倒し、問題を解決する頃にはレベルがたくさん上がっていて、貴方は高みに到達した人間になれるという事。そうして成長した肉体をもって地球世界に帰れば、今の瀕死の状況からでも生還が可能になるという事です。


 私は問題が解決できるし、貴方は死ぬ運命から逃れる事ができる。どうですか? お互いが得をする取り引きだと思いますが』


 うーん、確かに今の話を聞く分にはお互い得をする… かもしれない。この話が正しいのであればだけどね。

 でもどうだ? 事故に巻き込まれたのはしっかりと覚えているから間違いないと思うし、それが原因で昏倒したというのも頷ける。実際には荷物が飛んでくるのは見えたから覚えているけどぶつかった事は… ちょっと曖昧なんだよな。


『もちろん貴方が私の世界で死んでしまったら意味が無いので特別に特大の加護を与え、貴方が望むスキルを3つ授けます。ご自身が決めたスキルで自在に戦い、魔物達を討伐してほしいのです』

「そうですか… まぁ取り引きだという割には俺に選択肢はぶっちゃけありませんよね、断れば死ぬだけですし。わかりました、その話をお受けしましょう」

『ありがとうございます!』


 了承した途端、眩いほどの笑顔になりつい見惚れてしまう… なんだこの美しい生き物は!


『では、まず私… 創造神ローズロールの加護を与えます。これには成長促進の効果が多大にあり、通常であれば数十年かけて得る事の出来る経験値を短期間で得る事ができます。つまり、普通の人間に比べると数十倍レベルが上がりやすくなります。

 そして次にスキルなのですが、これは貴方が戦う上で是非とも必要だと思うものを教えてください』


 創造神ローズロール… 様か、ローズはバラでロールは巻くだっけ? 直訳するとバラマキですか!


『そのような冗談は好みませんが…』

「うわっ!? なんかすいません!」


 やべぇ、考えていることが筒抜けって事ですか! 本当なんかすいません!


 しかしスキルか… まるでゲームでキャラ作成するみたいな感じになっているな。

 戦うためのスキル… つまり死なないためのスキルって事でもあるな。なんせ生きてさえいれば負けたとしても次がある訳だしね。

 そうなると、一つ目は回復系魔法かな? 自分で怪我を治せるんなら戦闘に於いてこれほど有利な事は無いだろう。そして二つ目は多重思考がいいな、全力で集中しながら戦闘していても、もう一つの思考で回復や支援魔法を扱う事ができれば安全度は激増し間違いない!


 そして三つ目… 一体何が良いだろうか。あっ、そういえば確認しなきゃいけない事も結構あるよな?


「質問なんですが、言葉とかはどうなりますか? 地球世界でも日本語は日本でしか使う事の出来ない言語なので、とても他所の国で通じるとは思えないんですが」

『そうですね、言語スキルは加護に含めましょう。残り一つはどうしますか?』


 あ、そうか… 俺の考えてる事は分かるみたいだったもんな、説明しなくても理解されているというのは何とも言えない感じだけど、まぁ楽だと言えば楽ではあるな。


 さて、じゃあ最後の一つは… やはり定番のアイテムボックスとなインベントリと呼ばれるスキルしか無いだろうな。

 ローズロール様の世界がどんなものかは知らないが、やはり魔物を倒すって事はあちこち移動して戦闘しなければいけないという事だろう… 多分だけど。でもそうだとなれば、食糧であったり替えの武器だったりを持ち歩いて移動するなんて大変にも程があるよな。もちろん荷物持ちを雇うって選択肢もあるんだろうけど、そうなると戦闘中に保護対象が増えるかもしれない… さすがにそれがハードモードだろう。どうせ勝利して帰ってくるんだ、縁もしがらみも少ないにこしたことがない。


『それでいいですか? それでは確認します。一つ目は回復系魔法… であれば、聖属性の素養を与えましょう。これでレベルが上がり、成長すると聖女や聖者と同様の魔法を覚えます。二つ目の多重思考… これは私の世界では希少スキルなのですが、問題解決のためには致し方ないと思いましょう。三つ目、名称は違いますがストレージと呼ばれる保存用の空間を作り出すスキルがありますのでそれにしましょうか… これもレベルによって保存量が違いますが、レベルはマックスで付与します』

「え? スキルにもレベルがあるんですか?」

『そうですね、武術系、魔法系は最大レベル10までありますね。もちろん修練を積めば上がっていきます。多重思考に関してはレベルの概念はありません、なので慣れればどんどん上手に使えるようになるでしょう。

 スキルレベルも加護にある成長促進が効きますので、そう時間もかからずにマックスまで成長するでしょう。

 では、これより近接戦闘の訓練を少しやってから地上へと送ります。地上では私の守護する国家が儀式魔法にて貴方を召喚しています、今は召喚される途中で貴方を呼んでいるという事ですが… ここでは時間の流れが外界とは違いますので安心してください。

 そして役目を果たしたら… 貴方を地球世界へと間違いなく送還しますが、戻った時は貴方が事故で昏倒した瞬間になってしまいます。そこでも間違いなく生還するためにきっちりとレベルを上げ、成長してください』

「あ、はい」

『そして貴方自身の個人情報が知りたくなったら、ステータスと唱えてください。そうすれば貴方のステータス… 成長具合をご自身の目で確認する事ができます』

「あー、アニメや小説なんかで良くあるアレですね。どれどれ、ステータス」



 クロスケ・シライ Lv1 【勇者】


 STR:C

 VIT:B

 INT:C

 AGI:C


 ローズロールの加護


 聖魔法Lv1 多重思考Lv-- ストレージLv10



 うん、デジタルで表示はされないんだね。てっきりゲームのようにステータスは数字で見れると思ったんだけど… まぁこれでも指標にはなるのか。

 というか勇者なの? 俺が? それはちょっと荷が重いといいますか… ねぇ?




 その後、ローズロール様による剣技の稽古… という名のしごきを経て、とうとうこの俺、白井黒助(52歳)は異世界の地に旅立ち、ローズロール様が守護しているという国家、アベニール王国に降り立つ。


 アベニール王国側にすれば、俺という存在は異世界から召喚された勇者にしてローズロール様の使徒という事と認識されており、それはもう丁重に扱ってくれた。

 世界を救うという名目の旅… この名誉に預かりたいと多くの力自慢や魔法を学んでいる者達がやって来ては、是非仲間にと押しかけられたりもした。


 中でも一番心が揺らいだのは… アベニール王国の第一王女が俺の嫁になるといって迫ってきた時だな。アレは正直言って物凄く悩んだよ… だって第一王女様、ローズロール様に匹敵するんじゃないかっていうくらいの美少女だったんだよ!

 とはいえ、俺も日本に帰れば嫁も子供もいる一家の大黒柱。この誘惑を何とか乗り越えてやったんだ!


 ちなみに俺の容姿はなぜか25歳くらいまで若返っていて、戦闘する上で身体的に困る事は無かったんだよ。まぁ実際の俺は52歳… ちょっと動けばすぐにガタがくる老骨一歩手前だ、さすがにこれでは危ないとローズロール様が思ったんだろうね…





 そして… 5年の歳月をかけて別の世界からやってくる魔物を駆逐し、魔物の世界と繋がっているという歪みを修正してその役目を何とか果たす事ができたのだ。



『さて、まずは礼を言わせていただきましょう。私の創造した世界を救って頂き感謝します。それにもう少し時間がかかると思っていたのですが、まさか5年ほどで達成してしまうとは… 正直大したものだと思っています。


 一応確認ですが… この世界に留まる事も出来ますが、それでも帰るという選択肢で間違いないですか?』

「はい。やっぱり科学の無い世界ではどうにも暮らしにくいですね… 多くの出会いで心が揺れますが、やはり俺は日本人でいたいと思います」

『なるほど、意志は硬いという事ですね。承知しました、それではこれより元の世界… 地球世界へと送還いたします。最初に言った通り戻ったら事故の直後です、ですが今の貴方のステータスならばあの程度の衝撃は跳ね除けられると思います。もちろん受けてしまった傷によってしばらくは動けなくなるかもしれませんが、恐らくすぐに回復するでしょう。


 それでは… 貴方の人生が良きものであるよう』

「はい、なんか色々とありがとうございました」



 こうしてこの俺、白井黒助は役目を終えて帰還を果たしたのだ! うん、帰ってこれたのだ!







「………! ………………!」


 うん? なんか耳元で誰か騒いでいるのか? うるさいな。


「……っと、…………さい!」

「聞こえていますか? しっかりしてください、今救急車を呼びましたから!」

「んん… うん? 痛いっ! いたたたたたた!」


 うぉぉぉぉ! なんだか全身がすげぇ痛い! ああそういえば事故の直後に戻るんだったっけ。しかもアレだよな… 鍛えたからっていってもそうなる前に受けた傷なんだから、耐えるとかって話じゃなかったんだよね! まぁそれでも意識が戻ったっていう事は、致命傷からは逃れる事ができたって事だよな。うん、とりあえずそれで良しとしよう。


「だ、大丈夫ですか? 何やらうなされていましたが、三途の川とか見えてたりしましたか?」

「いや… 俺、ちょっと異世界行ってきた」

「え? ああ頭を打っていますもんね… 気をしっかり持ってください!」



 そんなこんなで救急車が到着し、病院へと運ばれた俺。頭がい骨骨折とかいう致命的とも言える重傷だったのにもかかわらず、なんと1ヶ月で退院許可が出るまで回復した。

 というか、速攻で治せたんだけどそれをやったら… ねぇ? ヤバいでしょ? だからあえてゆっくりと治療したんだよ。それでも入院生活が暇すぎて1ヶ月で逃げ出したけどね!



 この後、なぜか戻ってくる時に消えていなかった加護の力と聖魔法を使い、地球世界の裏側で暗躍する事になるんだがそれは別のお話。まぁ言語スキルがあるからどんな言葉でも通じるっていうのは便利だよね!


 じゃあちょっと、人目を忍んで治癒魔法で稼いでくるぜ!

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