濡れ手で……あわわ(その2)
周囲の注目が集まるが、逆さに振ってもなにも出てこない俺である。あ、どーもー、怪しい者ではないんですぅという振る舞いだけしてせこせことハンドインポケットで歩きだす。
「勉強しようと思ってたのに、なんかお出かけみたいになっちったな……」
しかもガチで鍵以外は手ぶらなのでなんにもできない。小銭すら持ってないからな。
おとなしく帰るか……と、歩き出す。
下ろされたのは商店街の近くだ。歩きで、まぁ三十分はかかるまい。だらだらと行こう。
そう考えつつ足を向けた矢先、アーケードの中ほどでなんやらビラを配っている影が見えた。客引きか。
目線を合わせないようにしつつ、ツツツと滑らかに移動する俺。しかし影は俺をホーミングしてきた。ぬぅ、ロックオンされている。
「すいませんいまマジでお金ないんで」
片手念仏鎬受けのポーズで断りながらすり抜ける。
「ううん、それならタダでいいよ」
しかし相手の執拗さは俺の防御をかいくぐってきた。
というか客引きがタダでいいってなんだ。
俺は顔を上げる。
「ってお前かい。お前このパターン二度目じゃね」
「須々木が僕のテリトリー歩くからでしょ」
呆れた感じに肩をすくめるのは、佐野だった。
髪型も額を広めに出し、私服のときとは趣の異なる燕尾服で執事っぽい恰好。白手袋で銀のトレイの上に載せたチラシを、道行くひとに配っているようだ。
服装のために細身なのがより際立つが、腰から尻にかけてのラインも強調されているので俺的にはポイント高い。
「つかテリトリーってなんだ。この商店街は路地裏に近いし、どっちかってと倉刈さんのテリトリーだと思ってたぞ」
「裏通りだけだよ、あの人のテリトリーは。さいきんもチャレンジャー増やしてたみたいだけど、通り一本向こうはちがうルールの領域だからね。そのかわり向こうもこっちの通りには不干渉、みたいな」
「もう完全に縄張り争いとかシマの問題なんだよなあ」
「治安悪そうに言わないの。そういうわけで、表については僕の方が親しんでるんだよ」
「なして?」
「だってそこ僕のバイト先だから」
親指で背後を示す佐野。
よく見たらそこには、ハーフティンバーっぽい(たぶん表面デザインだけであって本物ではない)つくりの建物が狭そうに商店街の建物群の間へ鎮座していた。
小綺麗にまとまった印象のそこは丸窓の向こうにカウンターと座席が見え、なかをせわしなく給仕服の少女たちが駆けまわる。
すなわちメイド喫茶であった。
「喫茶『亞空館』へようこそ。一杯くらいならおごるよ? 僕キッチン担当だから、料理長にお願いしてちょちょっとね」
「キッチン担当なのになんで表で客引きしてんだ……」
「僕がいると女性客が入りやすいんだって」
なるほど、たしかに佐野が周囲に向かって愛想を振りまくと磁石に吸い寄せられるように女性客がチラシを受け取り、そのまま店に入っていく。魔性の女だ。
「お客様と話したりゲームしたりとか、接客するのは苦手だけど。ビラ配りくらいならね」
「お前も大変だね」
「お仕事だもの。大変じゃないわけないよ。というか須々木、中間の勉強するんじゃないの? どうしてこんなところにいるのさ」
「いろいろあって八雲さんに拉致られそうになってたんだよ。ギリギリで難を逃れていまに至る」
「八雲、って綾瀬さんのお母さんの? 拉致監禁だなんて許しがたい所業だね」
「自宅に手錠持ってるやつに言われたくないんだけど同情してくれることにだけは感謝しとくわ」
お前の家を訪ねるときは細心の注意を払っていこうと決めてるからな、俺。
そんなこっちの内心も知らず、佐野は頬に手を添えてぼやく。
「でもいろいろってなにさ?」
「綾瀬の誕プレに俺をラッピングしてお届けしようとしやがった」
「ああ、誕生日なんだ綾瀬さん。ちなみに僕の誕生日は七月の二十一日だよ。覚えておいてね」
「ちゃっかりしてんなお前な。まぁ、無茶な誕プレ要求しないなら、な」
「えっへへ。しないしない」
あやしいけどちょっと可愛い笑みを浮かべて小首をかしげる佐野だった。
ともあれ疲れたのは事実だし佐野のバイト先に来たことなかったので、一杯くらいならとご馳走になっておくことにする。
からんとドアベル鳴らして中に入ると、木目のあたたかな欧風デザインが視界に広がる。周りが映り込みそうなほど磨かれたカウンターの向こうでは、せかせかとメイドさんたちが動いていた。
はっと俺の来店に気づいたらしいひとりが、すたたたと駆けてくる。クラシカルなロングスカートメイドさんだ。上乳と太腿の露出面積を引き上げたエロメイドさんもいいけどこういう正統派清楚系もいいね。清楚系って言うとなんかアレだけど。
「おかえりなさいませご主人様。……あら、佐野執事長となにかご関係の方?」
「お前執事長なの?!」
「なんかそう呼ばれてるんだよね。――こちら私の客人です、丁重にもてなしを」
「かしこまりました……」
しずしずと対応されることになった。恐縮です。
奥の席に通されて、そこに佐野が注文取りに来てくれる。
「なににする?」
「お前のおすすめでいーよ、高いの頼むのも気ぃ引けるし」
「じゃあすいませーん料理長、カップルドリンクひとつ」
「それもうやったからやめろ、二番煎じだ」
「だっだれと!? いつどこで?! あっあいつか! 倉刈!!」
いよいよ呼び捨てにするレベルで敵認定する佐野だった。こいつらほんと仲悪い。
「あーやだやだ。あの女、さりげなく距離を詰めてるから本当にいやだよ」
「言うてもアレは事故的なやつだったからな……そもそもドリンク俺ひとりで飲み干したし」
「え、あの女そこまでイイ状況堪能しておいて最後にそれなのかい? それはそれで拍子抜けというか、ある意味でがっかりだよ。やる気あるのかなあの人?」
「お前あの人のこと潰したいのか応援したいのかどっちなんだよ」
「敵だから潰したいけど、敵だからこそ最大のパフォーマンスを発揮したところでしか潰したくないね」
相手の全力を引き出して勝ちたい千年不敗の一族みたいだねお前。複雑だなぁ……。
結局アッサムティーを頼んだ。『ふーふーして冷ますサービス』があるらしいがそこは丁重にお断りして、ストレートで飲む俺。うん、うまい。
「さて、飲んだら帰るかな。あんま仕事の邪魔してもいかんだろ」
「執事長権限で文句言わせないから大丈夫……というのは冗談だけど、まあ周りの目もあるしねぇ。ところで須々木、今日って夕方は暇かい?」
「暇っちゃ暇だけど。勉強切り上げて洗濯物取り込んでアイロンかけて晩飯の仕込み終えたらヒマ」
「さらっと流してるけどしっかり主夫やってるよね……。じゃあ暇ならさ。このドリンク分、働いてもらってもいいかな?」
「飲んじゃったあとで言ってくるんだからお前もタチ悪ぃよな……べつにいいけどよ。なんぞ力仕事でもあんのか」
一杯分くらいなら働いてやらんでもない、と思いながら訊き返すと佐野はたははと笑いながら外を指さした。
「仕事ってわけじゃないんだけどね。どうもここのところ、お店の付近で不審者が出てるらしくて」
「ほう? 不審者か」
「そう。なんかちょっと派手目な格好で、『見えないものと戦ってる』風な」
「中二病こじらせた奴じゃねえの?」
「それがどう見ても三十代なんだって」
「手遅れだな。きっとどっかで大きく恥かく経験を積んでこなかったんだろうよ」
「なにその含蓄あふれる発言。まあとにかくね。一応不安だから、一緒に帰ってもらえたらなって思ってさ。いいかな?」
「ふーん。お前んちとうちは大して離れてないしな、構わねえけど」
小中の学区こそちがえど、歩いて遊びに行ける程度には近所だ。中二おじさんが不安だと言うなら、それくらいの働きはしてやろう。
俺が快諾したことで佐野はぱっと表情を明るくする。
「ありがとう。じゃあついでなんだけど明日は――同伴出勤、お願いしてもいいかなっ?」
「そのネタも二番煎じなんだよなぁ……」
綾瀬が出会って即座に同伴登校ってフレーズで畳みかけてきてっからな。
俺が回想しつつ返すと佐野はショックを受けた様子で、「きゃ、キャラ被りは避けたい……」と切実そうな嘆きを漏らしていた。
いやあのね、お前らひとりでも普通のコを目指せば即座に被りは避けられるんだよ。お前ら全員『変な人』カテゴリで被ってんだから。ほんと頼むよ。
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お店から出て家に帰り、要点まとめたノート(結局、綾瀬から借りることになった。マジで学年順位高いらしくて見やすくわかりやすかった。くやしい)で復習し、息抜きに「ちょっとエロいもんでも見るかぁ」とかやっていたら二時間が過ぎて後悔し、また復習し。
なんやかんやで夕方になった。
部屋からリビングに出て、俺はベランダの外の景色を見やる。
「……なんか空が赤いな」
中二おじさん出現の報を聞いたせいか、若干言い回しがそれっぽくなってしまう俺だった。
が、意識してるのはともかくとして、実際妙に空が赤く感じられたのだ。目頭をもむ。
「勉強してて目ぇ疲れたのかな? ていうか尋のやつから連絡とかもなんもないけど。大丈夫なのかあいつ……」
スマホを取り出してもさっぱりと連絡途絶しているのがなんとはなしに不安。あいつも子どもじゃないし、さすがになにか起きてる……ということはない、と思いたいけど。
ともあれひとりで家にいてもしょうがないので、尋にRUINで連絡いれつつ帰ってきたとき用に「晩飯は19時半です ちょっと佐野と会いに出かけてます 米が炊けたらしゃもじで返しておくこと」と残して家を出る。
途端に突風に襲われた。
「く……目にゴミが……」
なんか向かい風つよくない? 髪が荒れ狂って俺は顔をしかめた。
あとカラスも多いような。なに、また尋のやつがなんかやらかしてんの? ヒッチコック再来はやめてよ。ナチュラルに絵面こえぇんだよアレ。
「へんなこととか起きないといいんだけど」
言ってしまってからフラグ感すごいな? と思ったけど覆水盆に返らず。家訓その8、過ぎたことは忘れよの精神で、俺はひとまず商店街に向かった。
だが嫌な予感はどうも当たっていたようだった。
「っうぁあああー!」
「しつこい!」
商店街の通りに入ると、叫び声と同時、路地から吹っ飛んでくる人影を目にした。
地面と水平に高速ホバー移動した男が背中から大の字に壁にブチ当たって「へヴぁっ」と声にならない声と共にうなだれ、ずるずると背をもたせかけたままズリ落ちる。
飛んできた方向を見ると、倉刈さんが出て来た。
サイドバングの髪をファサっと払う。
そのこめかみに……あ、汗。
倉刈さんが汗をかいている……!?
「ふう……あら、須々木くん。また買い出し?」
「というわけじゃないんですけど。な、なんですかいまの。というか商店街の通りと路地裏の通りって、こう明確に領域を分けられてるはずじゃぁ」
「普段はそうなのだけど……っと、」
言いつつ倉刈さん、かかとを軸にギュルんと反転した。
動きに伴い目から残光がたなびく――え、ゾーン入ったの?
と思っていたら路地の方よりコッソリ迫って倉刈さんを襲おうとしていた連中のうち、最前列にいた奴の懐にダックイン。
そこから稲光のようにジグザグに、路地からあふれてきていた悪漢たちの間を駆け抜ける。倉刈さんが通り過ぎるたび、悪漢どもが地に臥せっていく。
最後は壁を蹴って中空に踊り――
「倉刈……ちっ、ちとせェェェッ!!」
「気安く下の名を呼ばないで」
残っていたひとり、スケバン風の恰好をした女の両肩の上に両太腿を着地させると。
フランケンシュタイナーみたいな動きで相手を地面から引っこ抜いた。女が吹っ飛ぶ。
頭からゴミ置き場につっこんだ女は、溜まっていたゴミがクッションになったようだがぴくぴくして、やがてパタリと動かなくなった。
すくっと立ち上がる倉刈さんは呼吸を整えつつまた髪を払う。
「名前で呼ぶ許可は、須々木くんにしか与えていないの」
「かっけェ……」
でもこえぇ。
そんな内心はさすがに口に出さず、おそるおそる近寄りながら俺は訊いた。
「で、どしたんすかこれ。なんでこっちの通りにまであふれ出してんですか? ルールは?」
「ここに暮らして《路地裏街》の《血闘》に出てる《血闘者》たちならそこのルールもわきまえているのだけれど……どうも外から入ってきた連中に、場の空気読まないのが多数まぎれこんでたみたいね」
「固有名詞めっちゃ混ぜ込みながらでしたけど大方は把握」
結局のところ倉刈さんの持ち込み企画なんですね。
という考えを抱いていたのが伝わったか、倉刈さんは少しだけむっとして腕組みする。おっぱいが腕に乗った。
「言っておくけれど、私は声かけする人員をしっかり選定したのよ」
「それはどういう基準で?」
「決まっているじゃない。無法者のなかでも話のわかる無法者、空気の読める無法者、徒党を組まない無法者だけを呼んだの」
「ははあ」
それ、『脅せる相手の基準』として必要な項目だったんだろうな……と思いながら俺はうなずいた。
倉刈さんはめずらしくも、疲れたふうなため息を漏らしてつづける。
「これでも【女王】とか呼ばれてしまっているのだし。路地裏の環境保全、『厄介な外来種は入れない』ということに注力してきたのだけれど。……なぜかいま、この街に妙な連中が増えてきているの。いまのもそういうのを潰していただけ」
「治安が悪くなってると?」
「端的に言えば」
原因がつかめない、という顔で倉刈さんは伏し目がちになった。
うーん。たしかに冷静になって考えると、情報収集と情報コントロールに長けているであろう倉刈さんが動いていて、呼び込む人選をミスるとは考えづらい。
たぶんこのひとは『自分が動いていることが伝わって、それが及ぼす影響』とかまで加味して動ける人だ。つまり先がめっちゃよく見えてる。
それでいてこういう、謎の事態が起きているというのは……。
「……私の把握してる情報網のレイヤーとは、またちがうレイヤーでことが起きてる」
「こわいこわいこわい。確信を持ってフラグ立て進めるのやめましょうよ」
俺はとりなしたが、お仕事モードに入ってるらしき倉刈さんは硬い表情を崩してくれなかった。そういうマジメ一辺倒の顔はクールビューティな印象で好きだけど、俺たちに実害ありそうな状態でそれが出てると考えると途端にヤだ。
あ、俺たちに実害、といえば。
「そういや倉刈さん、三十代で派手目な恰好した奴とかは見かけてません?」
「見ていないけど。なぁに、それは」
「なんか見えない敵と戦ってる風な動きをしてる不審者らしいです。さいきんこの辺に出没するって」
「不審者……三十代。ううん、いまのところ倒した覚えはないわ」
「ですか」
じゃあ倉刈さんが戦ってるような連中とは別件なのかな。どうも見た目キナ臭いのが多いから、同類かと思ったんだけど。
ひとまず佐野をさっさと送り届けた方がいいかなぁ、なんて考えながら俺がメイド喫茶の方へ足を向けると、進行方向ですくんだような動きをする人物が見えた。
「え、あ、お兄ちゃん?」
「あん? ……尋? お前こんなとこにいたのか」
なんやらどきっとした顔で立ちすくんでいたのは尋だった。俺に出くわすと思っていなかったのか、なんやらどぎまぎした様子できょろきょろしている。
「お兄ちゃんこそ。勉強は?」
「してたけど。RUIN見てねえの?」
「えっあっ。あーほんとだ。あー……」
タッタッとスマホの画面操作して何事か文面を打ち込みつつ、尋はいま気づいたようだった。引きこもりの電脳ライフ万歳民のくせにずっとスマホ見てなかったんだろうか、こいつ。
「ともあれ合流したなら一緒に帰るか、お前も」
「わ、わー。お兄ちゃんと帰れるの、ウレシー」
「んだよその棒読み……とにかくだ。どーもこの辺の治安が悪くなってるらしいから、しばらくひとりで帰るのとか出歩くのはやめ――――うわっっ!?」
俺はすくんだ。
言葉の途中で上から降って来た太い音圧に身体を貫かれ、反射的に身を縮めてしまったのだ。
え? え? とアーケードの天蓋を見上げる。
丸みを帯びて、アーチになったその上で……、
「須々木くんっ!!」「うわっ! 尋っっ!」「ひゃあ!」
またしても『ゴウン!!!!』って感じの太ッッい音。
俺ら三人はかばい合ってその場に屈みこんだ。さいわい、なにか落ちてくるとか割れてくるとかはなかったようだけど。
でも明らかに。
「上でひとが、駆けまわってたような……?」
アーチを構成する摺りガラス越しに、飛び交う影が見えたのだ。
それも……なんというか。
色彩、けばけばしく。
派手目な恰好――の?
「ええ……上にいんの? 不審者」
周りの人たちもざわめいている。
俺たちはなんとも対応に困りながら、とりあえず佐野の店の前まで移動した。
やつの店でもさっきの轟音は聞こえていたらしく、「なにいまの? 落雷? あるいは屋根落ちた?」などと質問されたがどう答えていいかわからず。
「なんかわからんけど。ただお前の言ってた、派手目な不審者が――、」
と説明しかけたところで背後に『ザシャっ』と音がしたのでビックリしてまた声が止まった。
おいやめろよぉ。さっきから急展開が連続しすぎてんだよ昼に覚えた英単語とか公式とかトびそうになるだろぉ。
思いつつ振り向くと、影が実体を持って立ち上がろうとしてる感じの人物がそこにいる。
上から下まで黒づくめ。ながーい黒髪をひっつめにして後ろで水引によって束ねた、年中マスクしてる口裂け女ルックな恰好。
淀んだ眼の光が印象的な長身の女性、御手洗さんがそこにいた。
「うわ、落ちた!」
唯一俺たちの背後を見ていた佐野が心底引いた顔で言う。
落ちた、ってことは、アーケードの上から?
ていうか今日は別の仕事だから外してるとか八雲さん言ってなかったっけ。おーい御手洗さ……あ、こっちに気づく前になんか走り出した。つーかアーケードから落ちたなら10mくらい落下してるはずだけど脚とか折れてないのかあの人。こわい。
「え、なに? なに起きてんの? ……え?」
ぼやくしかない俺の横で、倉刈さんと佐野と尋もちんぷんかんぷんな顔だった。
とりあえず月末までは友達契約つづいているので、俺は御手洗さんにRUINで「大丈夫ですか? さっき商店街で見ましたけど」と打ってみる。
二分ほどで返信がきた。
『縺雁燕縺溘■縺ォ霑キ諠代′縺九°繧峨↑縺?h縺?↓縺吶k縺
遘√?螳牙?縺ッ菫晞囿縺ァ縺阪↑縺?h縺?□』
こわいこわいこわいこわいこわい。
「ホラー展開やめて。オカルトの住人だからってやっていいことと悪いことあんだろ」
「あの御手洗さんが追われてるだなんて……そんなヤバい連中まで入り込んでいるのかしら、この街に」
「なんとかしてよ倉刈さん、街の安全を守る正義のアウトローでしょあなた」
「じゃあ須々木くんの安全を守るために真っ先にあなたを排除しましょうか、佐野さん」
いつもの言い合いにも心なしか覇気が無い。
なんとなーく不気味なものがにじりよっているような感覚に背を撫でられながら、俺たちは御手洗さんの去った方角を見据えるのだった。
あ、派手目な恰好の三十代おじさんもアーケードから飛び降りて来た。御手洗さんの逃げた方角を追ってる。……なんなんだマジで、おい。