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46 センスxオペラxユニオン

レベッカはテレビを消した―。

項垂れるようにソファに沈んでいく。


「今の心境はどうですかレベッカさん!」


「新魔導士と呼ばれることについてどう思われますか!」


ジークと紅正が記者のマネをしてレベッカに質問攻めする。


「うるさいッ!!」


思わぬ事態に嫌気がさすレベッカは絶賛ご機嫌斜めだ。


「一気に有名になって良かったわね。これで高レベルのクエストくるんじゃない(笑?」


「目立ってしまったが結果オーライだ。運よく世間の目が“レベッカ魔導士”のみ注目されてる。」


「全ッッ然良くないでしょ!」


切り替えの早いキャンディスとシドは、この事態をとてもポジティブに捉えていた。


「お前は何がそんなに嫌なんだ?ロイドン捕まえて皆喜んでくれてるだけだぞ。」


「それはそうかもしれないけど…。こんな間違った報道したらまた“可愛い私”が狙われるかもしれないじゃない!実際は戦えないんだからもし万が一が起こったら困るでしょ私が!」


「なんだその心配…。」


「だったらそれも含めてこちらが先に先手を打った方がいいだろう。」


「どういう事?」


嫌でも目立ってしまうリゾートホテルの様なギルド。このギルドに所属しているのが一国の王女と分かればそこは皆納得するだろう。後は、何故王女がギルドで魔導士をしているか等の変な詮索が心配される。

こんな状況になってしまった以上、早めに先手を打ちたいと考えるシドはジークに提案した。


「こうなった以上、“ここ”にもすぐに記者達が来るだろう。それを利用してこちらが上手く情報操作出来れば儲け揉んだ。」


「なるほどなぁ~。…で!具体的には!」


ジークは記者ごっこを続け、今度はシドの口元へ握った拳をマイク代わりに持っていく。


「王女という事がバレたのなら、これだけデカいギルドは説明がつく。王女だからな。後聞かれるとしたら何故“ギルドを造って”、“王女が魔導士をしているか”だ。」


「確かに不思議だ。」


「あくまで一つの例だが、レベッカはご両親が亡くなられた。これはもうイリーガル中でほぼ全員が知っている…だとすれば、不謹慎だがそれを理由にレベッカは“自立したい”という事を全面に押し出す。

そして何故それで“ギルド”を選んだのかを聞かれたら、困っている国民を一人でも多く助けたり力になりたいと思ったとでも言えば大丈夫だろう。その理由で王女に強く反発する奴なんかごく僅かしかいない。余計な詮索をする奴も一気にいなくなる。」


「アンタ優しいのか冷酷なのか分からないわ…。」


キャンディスが静かに呟いた。


「猫使いの魔導士ってのはどうするんだ?いくら王女でも捕まえた相手がSランク並みの魔導士じゃな…。」


「そこは大した問題じゃない。幸い誰も現場を見ていないからな。国民だって王女一人で戦ったなんて思わないさ。城から護衛の魔導士を付けていると言えばそれで解決だ。ゴードンさんには護衛がいると言い忘れた、ロイドン達の供述は“ただの野良猫”。これで全て説明がつく。王女と凶悪犯、どちらの方が信憑性あるかなんて一目瞭然だろう。」


シドの完璧な論破に皆何も言えなかった。


「コイツが一番怖いんじゃないか…?」


「ああ。俺も同じ事を思ったよ…。」


何はともあれ、時間が無い一行はこの作戦でいこうと話し合った。

レベッカも少しでも自分の身に危険が迫らない様、シドの提案に全力賛成した。


「後は私に任せて!上手い事言ってこの事態を早く収めるわ!護衛がいると知れれば迂闊に手を出してこないでしょ!護衛なんていないけど…。」


「バレなきゃ大丈夫だろ。王女なら護衛がいて当然だと皆思ってるさ。都合がいいじゃねぇか。」


「でも、今回みたいな不測の危険に晒されるなんてクエストじゃよくあるから、レベッカも少しは身を守れるようにした方がいいんじゃない?レベッカって魔力使えるの?」


キャンディスがレベッカに聞いた。


「王女様は過保護に育ってるから戦えないぞ。」


「なによその言い方!不愉快だわ!」


「じゃー戦えるのか?」


「…いや、それは…ちょっと……でも私だってその気になれば…ね!」


「無理して戦う必要はないと思うけど、“魔導成形(オペラ)”だけでも使えれば最低限自分の身を守れるんじゃない?」


「そりゃそうだな。」


「それグリムが戦ってる時も言ってたけど…魔導成形(オペラ)って何なの?」


「そのレベルか…王女は。」


「よし。俺が教えてやる。確かにオペラだけでも、出来る出来ないじゃ天と地の差だ。もう売り飛ばされないように自分の身は自分で守れ。いいな?」


「うん…。物騒な話だけど…。」


そう言うと、ジークは説明を始めた。


「まず…。俺ら魔導士に限らず、この星全ての生命には魔力が流れてる。これは分かるな?

そもそも魔導士ってのはこの魔力を自分でコントロール出来て初めてそのスタートラインに立てる。まず初めに自分の中の魔力を感じ、体内で増幅させたり操作するのが“魔生練成(センス)”って呼ばれるものだ。


これが一番の根っこでありベースだ。これが出来ないともうそこで終了。


このセンスが出来て、そこで練った魔力を体外で様々な形に成形するのが、さっき言っていた魔導成形(オペラ)だ。これが出来ればこの体外に出した魔力で攻撃も防御も出来る。あくまで小手先だけどな。」


「へぇ~~。やっぱ凄いのね魔導士って…。」


「後はその先に“魔属結合(ユニオン)”ってのがあるんだけど…そこまではいいや。」


「嫌よ!ちゃんと説明して!私は色々知りたいんだから。」


「めんどくさ…。魔属結合(ユニオン)ってのは、オペラで出した魔力に、更に“属性”を結合させるんだ。

キャンディス姉さんは雷、グリムは風…ってな感じでな。この属性は人によって得意不得意があるから人それぞれだけど、色々変化させて一番自分にしっくりくるのが合ってるな。

基本的にAランク魔導士以上はこのユニオンが扱えて当然だ。Sランク魔導士になるにはセンス、オペラ、ユニオン全てが出来て且つ、全てが洗練されていないといけない。……分かったか?」


「皆が凄いという事がよ~く分かりました!」


難しい言葉が出てきたレベッカは自分で分かりやすくシンプルにまとめた。


「ほらみろ。言いきなり全部言ったってこうなんだよ。」


「レベッカもオペラぐらいならすぐに出来るようになるわ。私が教えてあげるから頑張りましょ。」


「ありがとうキャンディス!」


「俺も色々教わりたなぁ~キャンディス姉さ~~ん♪♪」


そんなこんな話している内に、シドの言った通りスーパーキャットの前には多くの報道陣が集まっていた。

レベッカは覚悟を決め「行って参る!」と一人出陣していった。

窓から外の様子を伺うジーク達。レベッカの姿が見えると、報道陣達はもの凄いフラッシュで写真を撮り、同時に何人もの記者が大声を出していた。


<今回凶悪犯を捕まえたレベッカさん!今の心境はどうでしょうか!>

<犯人が捕まった事により安心している国民が大勢いるかと思われますが、その国民の皆様に何かお伝えしたいことはありますか!>

<何故王女がギルドを建てようと思われたのですか!>

<今回のクエストでは何が犯人を捕まえるきっかけとなったのでしょうか!>

<レベッカさんはいつから魔導士として活動されていたのですか!>


矢継ぎ早に質問が飛んでくる。あまりの報道陣の勢いに一瞬困惑したが、肝の据わっているレベッカは群衆の前に力強く堂々と出ていった―。


王女にも関わらず、親しみやすい親近感と王族としての品性。その凛々しく気品のある佇まいは見ている者達を一瞬で静かにさせた―。


「――へぇ~やるじゃないレベッカ…。空気を一変させたわね。」


見ていたジーク達も、今まで一度も見た事がないレベッカの雰囲気に一瞬惹きつけられた―。

僅か数秒の出来事…。だがその数秒に多くの人間がレベッカに“本物の王”の姿をイメージさせる。



その姿を一番強く思い描けたのは……創造神だった―。



だがしかし、当然レベッカ本人は無自覚なのである―!


(…よーし!皆で話し合った通り上手く誤魔化さないと!!)




そして…。

レベッカの頑張りにより何とか話がまとまり、次第に世間の熱気も落ち着きを見せていくのであった―。








第一部 【 完 】


最後まで読んで頂き誠に有難うございます!


公開した当初から、自分が思っていた以上に多くの方々に読んで頂けた事大変嬉しく思います。

それ以上に驚いています(笑。


小説を書くという事がまだまだ未熟な為、至らない点も多々あるかと思いますが、ここまで付き合ってくれた皆様には感謝しかありません。

本当にありがとうございます!



さて、猫が赴く異世界存続クエスト~は、ここで第一部「完」とさせて頂きます。


勝手ながら、まさかこんなに多くの方々に見てもらえると思っていなかったので、色々キャラクターや設定、今後の展開などを急いで考えました。。


これから新たに続きを書きたいと思っております!

あくまで趣味で書いている為、更新が少し空いてしまうかもしれませんが、ご愛読頂いている皆様に一日でも早くお届けできればと思います。


今後もジーク達の活躍を期待していただければ幸いです。

本当にありがとうございました!


それでは、今しばらくお待ちくださいませ。



キョロ


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