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35 紅正の分神

皆の冷たい視線がいつも以上に鋭く感じる創造神。


「…こ、これこれ…。そんな目で見るんじゃない…!大丈夫じゃ!ワシに考えがある!」


疑いしか持てないが、とりあえず皆話を聞く。


「お前さん達を元に戻せればいいんじゃが、それが直ぐには出来ない以上、皆の“分身”を生み出すんじゃ!」


「…魔法でか?」


「そうじゃ。」


「いくらなんでもそれは無理だ。」


そう声を上げたのはシド。だが、シド以外の皆も同じことを思っている。

なぜなら、自身の“分身”を作る魔法はかなりの高等技術である―。

ランクS魔導士や、分身を作るのが得意な魔導士であっても、周りの者に気付かれない完璧な分身を生み出すのは難しい。

分身を一体を作り出す事は難しくないが、一日中“それ”を出したまま動かす…しかも遠距離で他の魔導士に気付かれない“質量”の分身となると至難の業だ―。


ちなみに、最強魔導士と謳われるジークでさえ、自身とほぼ変わりない質量の分身は六体が限界。

質に構わず数だけ出すならもっと多く可能だが、分身は自身を中心に、距離が遠くなればなる程、数が多くなればなる程、分身の質も魔力も落ちていく。


雲を掴む様な話に皆ピンときていない。


「周りに分身だと気づかれない程の分身魔法など俺は出来ない。しかも遠隔なんて更にな。」


「私もよ。てか、逆にそれ出来る魔導士いるの?」


「ワシを誰じゃと思っておる。神じゃぞ♪」


創造神が自信に満ちている時程怖い物はないなと思う一行。


「本当に出来るのかジイさん?」


「出来る出来ないじゃない。それぐらいワシがやらんでどうする。少しぐらい汚名返上させてくれぃ!」


グオォォォォン……!!


そう言った創造神は、瞬時に魔法を発動させた―。


「神魔法……“本気分神(マジぶんしん)”!!」


――ボワンッ!ボワンッ!ボワンッ!ボワンッ!


神々しい光が四つに割れ、次の瞬間には紅正、グリム、キャンディス、シドの分身が現れた―。


「――どうじゃ!ワシにかかればこんなもんじゃ!」


「…凄ぇ…。全員“ほぼ同じ魔力密度”だ…。」


魔感知を得意とする紅正がいち早くそれに気付く。分身とは思えない程違和感のない“実体”そのもの。

“分身の完成形”=“新しい命”とされる分身魔法は、その精度が高くなればなる程、言わば“生命”を生み出すこととなる。


完成形をレベル100とした時に、ランクS魔導士に気付かれない分身レベルが70前後。

ジークの精度でも80~82が限界。と言っても、普通からしたら十分離れ業である―。


ところが、今回の創造神が生み出し分身レベルは“99”。

まさに神の成せる所業――。


だが…例え創造神であっても、“完璧”な命を生み出すことは当然出来ない。

魔法から本物の生命は生まれない―。

人の魔法で生命を生み出すなんて事は絶対に出来ないのだ―。例え神であったとしても。


「初めてジイさんが神だと気付かされたぜ…。」


ジークでさえも驚く神の分神―!

あまりの出来事に、目の当たりにした全員が度肝を抜かれ言葉が出なかった―。


「―すご~い!みんなそっくり!!」


そう―。またもレベッカ王女を除いては。。

魔導士ではないレベッカはそもそもの基準が分からない為、シンプルに見たままの感想なのだ―!


そんなレベッカのおかげか、この一言で皆我に返った。


「凄ぇな…。自分でも分からなくなる。」


「ここまでくると逆に怖いわね(笑。」


「チッチッチッ!驚くのはまだ早いぞ。」


皆の驚きが収まらない中、創造神がまだ自慢したいらしく、分神の解説を始め出した。


「この分神はまず気付かれる事はない!しかもお前さんらと99%同じだから、話し方や、思考は勿論、歩き方、ご飯の食べ方、買い物の仕方から風呂の入り方や細かいクセまで寸分違わず同じじゃ!凄いだろ!!だがまだまだ更に!!」


「ノリに乗ってるなぁ…。」


「その日分神が見たものや食べた物、記憶まで全て“リンク”出来るぞぃ!いつでも好きな時に!」


「そんな事出来るのか。」


「じゃあいつでもその日の出来事を見たり記憶したり出来るって事?毎日。」


「これなら困らねぇな。むしろ俺の分身が増えて面倒なクエスト行かなくてラッキーだぜ!」


「浅はかな奴だ。“時間”の大切さがお前にはまだ分からんか。」


「何年寄りくせぇ事言ってやがる(笑。むしろ二人に増えたんだから時間の有効活用だろ。」


分神に思う事それぞれに、創造神が申し訳なさそうに話を続ける。


「この分神は今ワシに出来る最大限じゃ。グリムは前向きに捉えてる様じゃが…。許しておくれ。埋め合わせは必ずするからのぉ。その日の事を見たいときは何時でも言っておくれ。毎日でも構わん。常にお前さんらとのリンクは繋げておく。家族や友人、恋人との大切な時間をワシが奪ってしまったからのぉ……。」


「え⁉⁉⁉キャンディス姉さん恋人いんの⁉⁉⁉」


絶対に今“そこ”ではない所にジークが突っ込む。


「フフフ♪どうかしら?男なんて自然と集まってきちゃうからねぇ。」


「そんなぁぁ………!!」


皆と違う絶望を食らうジークだった。


「つか俺分身いらねぇぞ。」


そう言ったのは紅正だ。


「ギルドにも所属してないし、ずっと一人暮らしだからな。分身なんかあっても意味ねぇよ(笑。」


「本当にええのか?」


「ああ。」


「ちょっと待って!!」


紅正に言われ、創造神が紅正の分神を消そうとしたがレベッカが止めた―。


「なんじゃ?」


「紅正ホントに使わないの?」


「おう。」


「じゃあ変わりに私に使わせてくれない?」


レベッカの目はキラキラ輝いていた。


「さてはお前それで“例の条件”逃れる気だろ。」


ジークが図星をついた。


「何よ!別にいいじゃない!せっかく出したのに使わないのは勿体ないでしょ!」


「逆ギレするなよ。」


「条件って何の話だ?」


「ああ。コイツ四姉妹の末っ子だからよ、それはそれは大事に育てられたんだろうな。城からちょっと離れた所に一人暮らしするだけで、姉ちゃんに条件出されてんだよ。」


「どんな?」


「一日一回は城に顔を出す事。三日に一回は城で寝泊まりする事。」


そのなんとも微笑ましい条件を聞いた紅正は馬鹿笑いするのであった―。


「だッーーーハッハッハッハッ!!!何だその条件!ほぼ家に帰ってんのと変わらねぇじゃん(笑!!ハッハッハッ!うける~!!」


「うっさい!!!」


―――ズコンッ!!


「――いッ…⁉⁉」


笑い転げる紅正の脳天にゲンコツを食らわすレベッカ。悪魔の目つきで紅正を睨む。


「他に言いたいことは?」


「…あ、ありません…。」


「よし。…じゃあ創造神様。この分神私に変えられるわよね?」


「も、勿論じゃ…!せっかく出したからのぉ。使いたい人が使えばええわぃ!」


――ボワンッ!


身の危険を察知した創造神は、紅正の分神をレベッカの姿へと変えた。


「やったぁー♪これでいちいち城に帰らなくて済むわ!」


満面の笑みで喜ぶレベッカを横目に、いじり足りない紅正は仕方なくジークをいじった。


「―これでお前もレベッカ独り占めできるな(笑。このこのぉ~♪」


「――なッ⁉だからそんなんじゃねぇって言ってんだろ!!いつまで勘違いしてんだこのバカ!!」


必死に反論していたジークの顔が少し赤くなっていたのは、怒りか照れなのか…。

その真相が分かるのはもう少し先のお話――。


「顔赤くなってんぞ(笑。」


「なってねぇよ!!!」

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