32 集団コント
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庭で猫達が飛び交う中、転生した紅正達四匹だけが動けずにいた。
「─どうなってんだよ⁉⁉」
「…何で私猫になってるの⁉︎」
「ニャーッハッハッハッ!!」
ドタバタの庭は、最早収集がつかない騒ぎになっていた─。
「ちょっと創造神様⁉︎ひょっとしてあの四人また猫にしちゃったの⁉︎ジークみたいに!」
レベッカが急いで創造神の元へ駆け寄る。
「…あ…ああ…こりゃエラい事をしてしまったぞぃ…。」
蚊の鳴くような声を出す創造神。
絶望しているのは一目瞭然。だが、パニックになっているこの状況を何とかしようと、レベッカが創造神を煽る。
「創造神様!!とりあえずこの状況をどうにかしなきゃ!皆を連れてどこか落ち着いて話せる場所に飛ばして!」
「なんという事じゃ……ワシはまたも失敗を……。」
レベッカの声が全く届かない創造神。
横ではまだジークがバカ笑いしていた。
「ハッハッハッハッ~!あ~腹いてぇ!」
──ブチンッッ!!
この時、レベッカの中で何かがキレた─。
「……いい加減にしろテメー等ッ‼︎‼︎‼︎‼︎」
怒号を上げたレベッカの表情はまさに悪魔─。
この状況でいつまでもウジウジしている創造神と、アホみたいに笑い転げているジークに、キレたレベッカが渾身のグーパンチを食らわせた─。
ゴチンッッ!!!
「「──⁉︎⁉︎⁉︎」」
鈍い音と共に、脳天から衝撃が走る。
創造神とジークはゲンコツを食らった頭を押さえながらレベッカの方へ振り返った。
「─ってぇな!何すんッ……⁉︎」
文句を言おうとしたジーク。だがそこには、何よりも恐ろしい顔をした悪魔レベッカの姿が─。
その恐ろしさに言葉が詰まるジークと創造神。
「いつまでウジウジゲラゲラしてんだお前等…。とにかくジークは四人をここに集めろ!創造神は私達全員を飛ばす準備!早くしろ!もう失敗すんなよ!分かったか!!」
「「は、はい!!」」
ドスのきいた声で指示を出すレベッカ。
ジークは有無も言わさず速攻魔法で四人を引き寄せる─。
同時に、創造神は瞬間移動の魔法を発動させる─。
「…よ、よし!全員集めたぞ!…ジイさん!こっちは準備OKだ!」
「こっちもOKじゃ!いくぞぃ!!」
──パァァァァ…!
創造神の魔法で、全員が瞬間移動する─。
「ニャー!!」
「ニャニャー!」
「シャーーッ!!」
庭では猫達が変わりなく暴れ続けていた─。
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~フレア王国・街外れ~
──シュンッ…!!
「―っと。どこ此処?」
「街外れの方じゃ。ここなら誰も来ないじゃろ。」
「なら良いわね。」
周囲は建物もなく人気もない、木が生い茂る林の中―。
ドタバタの庭から無事に移動してきたレベッカ達。
「――何にも良くねぇだろッッ!!!」
まず最初は紅正―。
「もう!!一体何がどうなってんのよ⁉⁉」
次にキャンディス。
「冗談じゃねぇぞ…!」
「早く“元に戻して”もらおうか創造神…。」
普段冷静なグリムとシドも、今自身に起こっている事を冷静に理解すればする程、頭が可笑しくなっていく。
四匹は移動後も変わらずパニックだ。
「……そりゃそうよね…。私も頭が追い付かないわ…。」
「……………………。」
奇想天外な光景に、レベッカも頭を抱える。創造神はなんともバツが悪そうな顔で、その光景を見つめる事しか出来なかった。
「とんでもない事しちまったなぁジイさん(笑!」
カオスな空気感の中、一人笑うジーク。何か言おうとしても、言葉が詰まる創造神。
「創造神様…。これってひょっとして“ジークと同じ”感じなの…?」
恐る恐る聞くレベッカ。この問いに、パニックになっていた紅正達も皆創造神を見た―。
次の創造神の言葉一つで運命が大きく変わる。この先の人生が掛かっている四人は希望の眼差しで訴えかけていた…。元に戻れるよな…っと。。
創造神の口が動かない―。数秒の沈黙がとても長く感じる。
覚悟を決めた創造神がゴクリと唾を飲み込み……答えを出した――。
「………………すまんッッッ!!!!!!!!」
神の渾身の土下座!!
「「「「ふざけんなッッッ!!!!!!!!」」」」
待ってましたと言わんばかりの四人のシンクロ率。
「ニャーハッハッハッ!!も、もうやめてくれッ(笑!何だこの集団コントは…!!はっ、腹が千切れるぅ…(笑!」
ジークは最後まで笑っていた。
「…ハァ~~~~。これからまたどうなるのよぉ…。」
レベッカは溜息と共に膝から崩れた。
「―本当にすまんッッッ!!!!!!」
「「「「許すかぁぁッ!!!!!!」」」」
この日…創造神は一日謝り続けた―。
そして……四人はこの日、一切許すことは無かった――。