30 再びの悲劇
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~建物内~
ジークの鎮静化により、グリム達も何とか話を聞く気になった。
「――早く話せよ。」
しばらく続いた沈黙を紅正が破った。
「ん~。一体どこから話そうか…。」
どこからどう話しても面倒なこの話。ジークは如何にシンプルに分かりやすく且つ、話を聞いてこちらに手を貸してくれるか…と考えていた。
「よし!雰囲気変えてそこの広い庭で話そう!のぉ!」
創造神の陽気な掛け声で、皆スタジオのすぐ横にある庭に出た。
「ん~!やっぱ外の空気がいいわね~!天気も良いし!さっきまで捕まっていたのが噓みたい!」
体を伸ばしながら深呼吸をしているレベッカ。
「いいからさっさと話してくれない?勿体ぶってるのがイライラするんだけど。」
「しっかり聞かせてもらおうか。」
事を知っているジーク達以外、こうなるのは当然だろう。自分たちの前に突如現れたお爺さん、王女、猫。
理解できる方が可笑しい。
意を決し、創造神が話し始めた―。
「――ええか!まず初めに言っておく!今から話す事は、お前さん等が信じる信じないか自由じゃが、間違いなく真実じゃ。それをよ~~く踏まえて聞いてくれ!ええかのぉ?」
「俺は助けてもらった恩があるからな!信じるよ。」
「ホッホッ。そうかい!…実はのぉ…………。」
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~建物・庭~
事の成り行きを一から全て話す創造神―。
デューエル誓約書からこれから起こる事、そして創造神達が何の目的でここまで来て、今この話を紅正達にしているかを―。
突拍子もないぶっ飛んだ話だが、聞き始めてすぐに騒いでいた紅正や信じ切れていない他の者達も、創造神の顔色一つ変えない真剣な表情に、話し終える頃には自然と皆が信じていた―。
話の途中や終えた後、紅正達各々の疑問をしっかり答える創造神。
紅正、グリム、キャンディス、シド。全員の質疑応答を真摯に受け取り、丁寧に返す。その繰り返しでこの場にいた全員が創造神の話を信じる結果となった―。
「……どうじゃ?まだ他に聞きたいことがある者はおるか?」
創造神の問いに、もう誰も手をあげる者はいなかった。
「俺はもう充分信じてるけどよ、やっぱりどっか現実味がねぇよな。」
「紅正がそう思うのも無理ないわよ。私達だってそうなんだから。」
…ニャー…。
「それは俺だってそうだぞ。猫になってるって事以外はな。」
「とんだ災難だなお前も(笑。」
紅正、レベッカ、ジークが話していると、次にグリムが話を進める。
…ニャー!
「……で。結論言うと、今度は俺らがこの話の答えを出せって事か。」
「まぁそうじゃな…。これはあくまでもワシからの一方的な頼みじゃ。力を貸してくれるかどうかはお前さん達次第。勿論強制はしん。」
「そんな事言われてもね…。こんな話聞いちゃったら気になるじゃないずっと。」
「キャンディスお姉さんは是非仲間になってほしい♪」
「黙れエロ猫。」
ニャー…ニャー…
「─っていうか……なに“この猫達”は!!」
キャンディスが大声で言った。
先程から皆が気になっているであろう事…。
「俺の魔力に集まってきたってよ。」
「え?アンタ猫の言葉分かるの⁉︎」
そう─。話をしていると、いつの間にか周りに大量の猫が集まっていたのだ。
そして、どうやら猫になったジークは猫と会話が出来るようになったらしい。
…ニャーオ!…ニャー!
「知らないうちに俺の猫フェロモンが溢れ出てたんだなぁ…。ん?なんかここら辺の野良猫が全部いるらしいぜ?…へぇ~。お前らにも縄張りがあるのか!え?アイツがボスだって?」
ジークは猫と色々会話している。
それを見ていたシドが呆れながら会話を戻した。
「─ところで、ここに俺らが集まったのは“偶然”じゃないよな?アンタの仕業か創造神。」
「そうじゃ。悪いのぉ。レベッカは冒険したがっておったが、なにせ時間が限られておる…デューエルに参戦出来る実力者もな。だから申し訳ないが今回はワシがちょこっ~~とだけ細工させてもらったんじゃ。お前さんらのギルドの届いたクエストにな。」
「そういう事かよ。」
「手間だからここに集められた訳だ。」
グリムとシドはどこか不満そうな顔をしている。
「勝手な事ばっかで悪いと思っておる。更に協力してくと頼んでおるからのぉ。」
すると、少し考えてシドがこう言った。
「そのデューエルに参加して、俺らに見返りはあるか?」
「お前神に交換条件出すのかよ。」
紅正がシドの言葉に軽くツッコむ。
「見返りになるかどうかは分からんが、もし協力してくれるのならばお前さんらの望む願いを特別にワシが叶えよう。」
「─⁉︎それマジ⁉︎なんでも?」
聞いていたキャンディスが食い気味に言った。
「勿論。それぐらいじゃないと割に合わんじゃろ。」
「はいはーい!私やるわ!アンタ達に協力する!」
「…おい!キャンディス!」
キャンディスは創造神の見返りに、二つ返事でOKした。
まさかの返事にグリムも少し戸惑う。
「なによ?だって何でも叶えてくれるんでしょ?一生困らない程のお金持ちってのも可能?」
「勿論じゃ。」
「ラッキー♪ほら、やる価値ありまくりじゃない!どの道やらなきゃこのイリーガルが無くなるんだから。人に任せて人生終わるなんて嫌よ私。」
「まぁそりゃそうだけどよ…。」
「──俺もやるぞ。」
次に参加表明したのはシドだ。
「以外だな~。何にも興味なさそうなのに。」
「人を見た目で決めるんじゃねぇ。」
紅正がシドにちょっかいを出す。
「…創造神。願いを叶えるって言うのは絶対だろうな?」
「当ったり前じゃ!ワシ創造神。絶対嘘は付かんぞぃ!」
「いまいち信用ならないな…。」
「なら、神魔法による“契約”を結べば良い。これでお互い契約すれば必ずじゃ。ワシからの条件は“デューエルへの参加。”お前さんらは“願いを叶える”。この神魔法による契約は破られない。デューエル誓約書と同じでな。必ず起こる。…これでどうじゃ?」
「─分かった。その条件で契約しよう。」
シドが契約に納得し、デューエルの参戦を決めた。
「そんなに叶えたい願いがあんのか?」
「お前には関係ない。」
紅正とシドが話していると、キャンディスも入ってくる。
「ちょっとぉ!私が先よ!一番に言ったの私なんだから!」
「そんな焦らんでも順番は関係ないわぃ。」
「創造神。早く契約を済ませよう。」
「協力に感謝するぞぃ。キャンディス…シド…。二人は契約でええか?」
「いいわ!」
「ああ。」
「じゃ俺の分も契約よろしく!」
紅正、キャンディス、シド…デューエル参戦決定!!
「…お前さんはどうじゃ?グリム。」
「俺は…」
悩むグリム。
「男ならスパッと決めなさいよ!」
「以外とビビりなんだな。」
「だから人を見た目で決めるんじゃないと言ってるだろ?」
早くも決めた三人は息も合ってきた様だ。
「ビビってねぇよ!何なんだお前ら!」
「これはお前さんの自由じゃ。少し考えてからでも全く問題ないぞぃ。重要な事じゃからな。」
「全員舐めやがって…。─俺もやるに決まってるだろ!お前らごときじゃ勝てねーよ!…創造神!契約もう一人追加だッ!」
文句言いつつも、グリム…デューエル参戦決定!!
ジーク達の心配をよそに、早くもデューエル参加者が全員揃った──。
「…恩に着る─。これが最終確認じゃ!紅正、キャンディス、シド…そしてグリム!皆、デューエルへの参戦をするんじゃな?」
創造神は神魔法で契約書を出す─。
神魔法によって出されたその契約書は、なんとも言えない神々しい光に包まれている─。
──コクリ…。
そして四人が全員頷いた。
「では…ここに…ワシとお前さん達の間に契約を結ぶ─。」
創造神の魔法がどんどん進んでいく─。
「──おいおいお前ら。こんな所で縄張り争いはやめろって。…ん?アイツ等が挑発してきてるって?そんなのはほっとけ!弱いやつ程ニャーニャー泣くからな。…え?このままじゃ他の奴等に示しがつかないって?くだらん事はやめッ─⁉︎おいッ!!」
猫と話していたジーク。
どうやら猫同士の縄張り争いが勃発したようだ─。ジークの方にいた猫達と、反対側にいた猫達が、互いに飛びかかった─。
まさに一瞬の出来事─。
「神魔法…契約ッ─⁉︎「ニャーーッ!!」
創造神が魔法を繰り出そうとした刹那─。
ちょうど猫達の中央にいた創造神達の目の前を、大量の猫達が飛び交った─。
そして、一匹の猫が創造神の顔面に向かって飛び込んできた─。
「…わッ⁉︎⁉︎」
視界が真っ暗になった創造神は、魔法を出そうとしていた手元が狂った─。
─パァァァァァァ……!
契約書に包まれていた光がパッと消えた直後、再び謎の光が生まれ、揺めきながら紅正、グリム、キャンディス、シドの四人を包んだ─。
──ポワンッ…ポワンッ…ポワンッ…ポワンッ……