26 フレア王国(レベッカ&ジーク&紅正)
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~建物内・スタジオ(レベッカ、セルジオ)~
――ドンッ!!――ドンッ!!――ドンッ!!
建物全体に響く大きく鈍い音。
「―チッ!何なんだよコイツ等ッ…!」
セルジオが自身の魔法で扉をガチガチに固定している。
外からは何かぶつけているのだろうか、音と共に扉が壊れそうなほどの衝撃がくるー。
「……。」
レベッカは変わらず拘束されたままである。
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~遡る事数分前~
「――さぁ~て…脱げないなら私が脱がせてあげよう!」
「ン“ン“ン“ン“!!!」
拘束されたレベッカは身動き取れず、言葉にならない声を出すことしか出来ずにいた。
「綺麗だねレベッカ。もっともっとありのままの君を見せてくれ。」
セルジオがレベッカの服に手を掛ける―。
「ン“ン“ーーー!!」
すると次の瞬間――。
ガンガンガンガンガンガンッ!!!
誰かが鍵のかかった扉を無理矢理開けようとしている。
「―⁉誰だ?」
突然の出来事にセルジオも困惑する。
これを見たレベッカは、扉を開けようとしているのが、少なくともセルジオの仲間ではないと分かり、必死に助けを求める。
「ン“ン“ン“ン“ーーーー!!!(もしかしてジーク達…⁉⁉お願い!助けてッ…!!)」
ジークと創造神の姿を期待したレベッカ。
だが、良くも悪くもレベッカの願いは叶わない―。
ガンガン……ガキンッ!!…キィィ…。
壊された扉の向こうから男が四人入って来た。
「―やっと空いたぜ。」
「なんだこの部屋。スタジオか?」
「可愛い子の写真だらけだ!」
「そんなのどうでもいい。早くお宝貰うぞ。」
目つきも人相も雰囲気も悪い男達。
「―おい。一体何の用だ。」
セルジオが男達に問う。
「ああ?別にお前に用はねぇ!俺らが欲しいのはそっちのお嬢ちゃんだ。」
「つーかお前何でその子拘束してんの?俺らと同じ目的か?それともヤバい趣味(笑?」
「ムッツリそうだもんな!!ハーハッハッハッ!」
男達はゲラゲラ笑いだした。
(…もう…今度は何…⁉なんで私ばっかこんなに狙われるのよ…!)
「お引き取り願おう…。」
――ギュワァン…!!
「「「「―⁉⁉⁉」」」」
セルジオは魔法で変化させた大きな蔓を思いっ切り振り、四人の男達を一斉に扉の向こうへ飛ばす―。
その勢いで全員壁にぶつかった―。
―ズドッ!!!!
「…痛ってぇ~⁉」
「あの野郎ッ…!!」
飛ばされた男の一人がすぐさま反撃に出ようとする―。
しかし、セルジオが既に次のアクションを起こしていた―。男達を飛ばし直ぐに扉を閉め、幾つもの蔓で内側からバリケードを作り扉が開かないようにした。
だが、やられた男達は扉を突き破ろうと、一人の男が魔法で頑丈な丸太を出し、全員で扉を壊そうとしている―。
「「「「せぇーの!!!」」」」
――ドンッ!!――ドンッ!!――ドンッ!!
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そして今に至る――。
「―チッ!何なんだよコイツ等ッ…!」
セルジオは扉を塞ぐのに必死になっている。
「………。」
この機にレベッカはなんとか脱出を試みようと役立ちそうなものを探す―。
だが役立ちそうなものが近くになければ、あったとしても手を動かせない。
諦めかけたその時、窓の外に動いた一瞬の希望を、レベッカは見逃さなかった―。
「ン“ーーン“ッ!!(ジークッ!!)」
そこには先程着いたばかりのジークと紅正の姿が―。
レベッカが気付いたと知らない二人はとりあえず中に入ろうと表に回る。
「―なんか中から凄い音聞こえるな。」
「つか、どういう状況なのコレ?レベッカって子以外は敵っていう認識であってんのか?」
「ああ。恐らく。なんか拘束されてたし内輪もめしてる感じだから、あらかたアイツをいくらで売り飛ばすかで揉めてるんだろ。」
「そういう理由なのか…?まぁいい。早く助けッ―⁉」
「―⁉」
二人が建物正面へ向かって裏から回り込んだ最後のコーナー。
正面入り口側に出た瞬間、入り口の前に二人組がいた。男一人と女一人。それに気付いたジークと紅正は反射的に臨戦態勢に入った―。
「「――⁉⁉」」
それに気付いた相手の男と女も構える―。
そしてお互いに対峙して四人全員が思った―。
((((コイツ等…強い…))))
(つか、あのお姉さん可愛いじゃねぇか!!)
ピコーン♪
ジークだけが加えてこう思った。そしてお姉さんレーダーに反応あり。
「…中にいる奴らとは魔力の質が段違いだ。お前らが中にいる奴らの頭か?」
紅正が男女二人組に聞く―。
「何言ってんのアンタ?中にいる奴らに用はあるけど、あんなのと一緒にしないでほしいわ。」
「お前こそ何者だ?しかもその猫…。」
ジーク猫の魔力に男と女は驚きを隠せないー。
「アンタも気付いた?あの猫えげつない強さよ…。」
「おい!お前らこそアイツらの仲間なんじゃねぇか?」
相手の男の言葉にジークが返す。
「そんな訳ねぇだろ。」
「「うわッ⁉喋った⁉」」
ジーク猫が喋り、更に驚く男と女。
「なんだあの猫⁉もう化け物じゃねぇか…⁉」
「何で喋ってんの⁉しかも二本足で立ってるし!」
「そんな驚く事じゃない。それよりお姉さん。一度私を抱いてみませんか?とてもモフモフで気持ちいですよ。」
「いや。何言ってんだお前。下心丸出しで。煩悩猫だな。」
ジークのあまりに低レベルな発言に思わずツッコんでしまった紅正。
そして、ジーク猫の存在が、本来の四人の話の論点をズラしたが、冷静になってきた相手の男が話を振り出しに戻したー。
「ま…まぁいい。驚いたが、お前らに用はない。俺達の目的は中の奴らだ。行くぞ“キャンディス”。」
「そうね“グリム”。…あなた達が何の用か知らないけど、私の邪魔するなら容赦しないわよ。」
グリムとキャンディス。そう呼ばれた二人はジークと紅正を横目に、扉を開け中へ入っていったー。
「キャンディス…。見た目も名前もなんてセクシーなお姉さんだ♪連絡先教えてもらわなくっちゃ!」
「お…おい!待てッ!目的違くねぇか…?」
お姉さんを追いかけてジークも建物の中へ。さらにそのジークを追いかけて紅正も中に入っていった。
………ザッ……。
「…………………。」
ジーク達が入っていった建物の向かいの屋上―。
そこに一人の男がいた―。
彼は上からジーク達の一連のやり取りを見ていた―。