表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/47

23 フレア王国(ジークside 1)

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


~フレア王国~


ここはフレア王国に入って一番近い飯屋―。

店員と客の視線は全て“そこ”に集まっていた―。


なにやら男が一人、物凄い勢いでご飯を食べている。

無造作に伸びきった髪を結い、服は所々破れ、穴が開いている所もある。太股辺りまであるゆったりとした法被(はっぴ)にゆったりとした股引。靴やブーツではなく足袋を履いている。腰には立派な刀を提げていた。

こうした装いはフレア王国では珍しくない。


珍しいのはその男の見事なまでの食べっぷり――!!


――バクバクッバクバクッバクバクッバクバクッバクバクッ…!!!!!


…カチャンッ!カチャン!カチャン!


食いあげられたお皿がどんどん積み重なっていく―。


「―――おい……。どんだけ食うんだコイツ……。」


「見ていて気持ちがええのぉ!」


豪快に食べる男の向かいにはジークと創造神がいた。

口いっぱいに詰め込んだ男がジーク達に言った。


「―ボエオオモ”ッ(それにしても)…!!オ"ンボーイ"ア"ブバッバ(本当に助かった)!!アビバヴォ(ありがとう)!!」


「何言ってるか分からねぇ…。食ってから話してくれ。」


「オ"オ”ッッア(分かった)!」


バクッバクッバクッバクッバクッ!!!

その後しばらく爆食が続き―。


「――ぷはぁー!!食った食ったぁ!ごちそーさん!!」


食べ終えた男とジーク達はお勘定を済ませ店を出た。


「めちゃ食ったな。いくら?」


創造神が支払い、ジークはレシートを見た。


「ほれ。しめて47,389B(ベル)。」


「高っ!つかジイさん金持ってるな。」


「ワシは創造神だからな。お金は持ってるというより生み出しておるからの。」


「金使い放題じゃん。」


「バカ者!創造神がそんなセコいマネするわけないじゃろ!」


「あの~…。」


「「―?」」


男が二人に話しかける。


「改めて…俺の名前は卍山下 紅正(まんざんか べにまさ)。有り難う!世話になった!」


男は深々と頭を下げた。

男の名前に創造神が思い出したかの様に反応した。


「卍山下紅正……。あ!お主か!」


「…ん?もしや“候補”の一人……?コイツが…?」


「これはラッキーじゃ!探す手間が省けたわぃ!」


察したジークが創造神に聞くと、創造神は「そうじゃ。そうじゃ。」と深く頷いていた。


「なんだ?俺になんか用か?しかもずっと気になってたんだけど何で猫が喋ってるんだ??」


紅正が不思議そうに二人を見つめる。


「その事は一旦置いといてくれ…。それより大丈夫か?この空腹で倒れてた奴がジイさんの候補の一人?」


「それは聞き捨てならねぇな。何の用か知らないが、俺だって好き好んで倒れていたわけじゃないぞ。」


「まぁまぁ。それよりも…紅正よ!」


「ん?」


「ワシらのギルドに入ってくれんか!」


創造神は単刀直入に言った。


「…へ?いきなり何言ってんだジイさん。」


「許してくれ。いつもの事なんだ。」


紅正のツッコミにジークがフォローに回る。


「卍山下紅正!お主を探しておったんじゃ!ワシらの仲間になってくれんかのぉ?」


「だからよぉ。話が全く見えないんだが…。命の恩人だが、主体不明のジイさんと喋る猫なんて何の組み合わせだ?」


「おいジイさん!そんな急に言っても困るだろ!ちゃんと順番に説明しろよ!」


「そうじゃの。いかんいかん。歳取ると話を飛ばしてしまうわぃ。」


「飛ばしすぎだろ。」


「まずは自己紹介から…。オホンッ。ワシは創造神。こっちの猫はジーク。宜しくのぉ。ワシらがここに来たの…「待て待て待て。」


説明を続けようとする創造神を紅正が冷静に止める―。


「創造神って…あの創造神か?教科書とかに出てくるあの。」


「そうじゃ。ワシこのイリーガルの神。創造神じゃ。」


紅正は何を言って良いか分からず口を真一文字にしたまま固まっている。


「まぁそうなるよな…。もういいよジイさん。俺が説明する。」


そう言って今度はジークが話し始めた。


「今言った通り、俺の名前はジーク。ジーク・ルアソール。宜しく。」


「ジーク…ルアソール……どっかで聞いたことあるような…。」


「マスタークエストをクリアした最強魔導士じゃよ。」


「――⁉⁉あのジーク⁉マジで⁉最強魔導士って猫だったの⁉」


再び紅正は驚いた。まさか目の前にいるのがあの伝説のマスタークエストをクリアした“最強魔導士ジーク・ルアソール”。しかもその姿が人間ではなく猫。しかも横にいるジイさんは創造神ときた―。

もはや紅正は今起こっている事に頭がパンク寸前―。


「いやいや。もう頭の中ぐちゃぐちゃ。」


「分かるよ。紅正。でもこれからもっと訳分からなくなると思うから落ち着いたら言って。のんびりいこう。」


「なんだそれ…。とりあえずお前らが本物って事だけは確か?なんかの詐欺?」


ぶっ飛んだ出来事に疑い始めた紅正。


「ふぅ~…。だよな。まずはそこから証明しないとな。話信じてもらうにはまず“本物”と分かってもらおう。」


ジークはそう言うと、突如魔力を練り上げた――。


――グワァァァァンッ……!!!

凄まじい魔力がジークの体を覆う―。


(――⁉⁉⁉…なんだこの魔力っ…!!何もしてねぇのに集まった魔力の“圧”だけで体が吹き飛ばされそうだ……!!)


紅正は必死に堪える―。


「…よし。こんなもんか!」


魔力を高めたジークはジャンプしたかと思いきやそのまま空中へ飛んで行く―。

そしてその勢いのまま、眼前一杯に広がる雲目掛けて魔法を放った―!!


「―――ウラァッ!!」


――ズバァァーーーーーーンッッ!!!!!!!


放たれた攻撃は雲を割り、遥か遠くへ消えていった―。

それを見た紅正はポカ~ンとした表情。


「…どうじゃ?少しは疑いが晴れたかのぉ?」


「疑いよりも恐怖だな…。とりあえず…あの猫が凄い事は一瞬で分かったよ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ