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02 デューエル誓約書

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


『マスタークエスト』


その話は魔導士ならず全人類が聞いたことのあるおとぎ話のようなものだ。

“おとぎ話のようなもの”――。皆がそう思っている。

だが……願いを叶えると言うこのマスタークエストの話が何百年も前から現在まで語り継がれているのにはいくつか根拠があった。


まず一つ目が、このイリーガルには大小規模は様々だが数多くのギルドが存在する。

そしてそのギルド全てを管理しているのが『魔導機関まどうきかん』と呼ばれるこの世界のお偉いさん方である。


その魔導機関にあるクエスト一覧の看板には、“マスタークエスト”という文字がずっと存在している。

そんな事誰もが知っているのに誰も挑戦している所を見た者はいない。だからその文字さえも最早何の変哲もない景色と同化しているのである。当然の事だろう。


二つ目が、マスタークエストの内容。

内容はもの凄くシンプル。どこにでもあるモンスターの討伐。


だが、その指定モンスターが「竜の王」通称“ドラゴン”だ。

大昔からドラゴンは世界に厄災をもたらすと言われている。

このイリーガルの六つの大陸には、それぞれドラゴンが存在するが、その姿を見た者は世界でもごくごく僅か―。

存在自体が謎に包まれているが、目撃談がいくつかあることからマスタークエストよりは実在が確かだ。


そして三つ目、このマスタークエストは誰でも受けられる訳ではない。

条件は以下の二つ。


・魔導士ランクS以上のみ。

・ギルドポイント1,000,000P以上。


これを言われただけではピンとこないが、魔導士になった者は直ぐにこのクエストの異常条件に気付く事となる。

魔導士の中でSランクになれるのがそもそもほんの一握り―。

それ以上に“ギルドポイント1,000,000P”……。これが尋常では到底成しえないでたらめポイント。

「こんなものクリアした奴は宇宙人だきっと。」そう言われても可笑しくない。


だが、このマスタークエストにはこれが条件としてしっかり“クエスト公式認定”されている。

もしマスタークエストがおとぎ話ならこんなものを表示しておく必要が全くない。

だから今でもこの話は伝説として受け継がれていたのだ―。


何百年と止まっていた伝説を再び動かした青年、ジーク・ルアソール。

これはそんな彼が新たな伝説を生み出すかもしれない物語―。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


~ジークの家~


「――おいおいおいッ……!どういう事だよこれ……⁉」


目が覚めたジークは自分の家にいた。

本来ならここから夢のパラダイス人生が始まる予定だったジークは、今の自身の現状に全く理解が追いつかない。


部屋の鏡に映る姿は他の何者でもないただの“猫”。

フワフワの毛並みにピンとした耳。

顔や体を何度触っても、何度見返そうともひたすら猫だった。


「夢じゃねぇよなぁ……。なんで俺猫になってんの⁉︎⁉……なにこの耳とか肉球!マジで猫じゃんよぉ……!!」


動揺が隠し切れないジーク。


「待て待て……。何故こうなった……??よし。一から思い出そう……。

確か俺は、マスタークエストに挑んでドラゴンを討伐して……それから急に現れた創造神と出会って……願いを叶えてくれるって言って確かに俺願いを言ったよなぁ……。

創造神も“叶える”って言ったし……それからどうなったんだっけ……??」


上を見ながら出来事を思い出していくー。


「―あ!そうだ!……創造神が出した光みたいなのに包まれて……なんか心地いいなぁ~と思ってたら、そのまま寝ちゃったんだ俺……え?…で、起きて気づいて今……か。

…………は??意味分かんないんだけど……」


頭の中がぐちゃぐちゃなジーク。

一から順を追って思い出した結果、“しっかり意味が分からない”という答えに辿り着いた。

ジークの思考回路がショートする寸前、それは起きたー。


―――ブワンッ!!


「――⁉⁉」


ジークの目の前に突如、創造神が現れた。


「……あッ!!創造神!おい……!これ一体何がどうなってんだよ⁉」


少し苛立つジーク。現状をまだ理解できていないが彼が唯一確信しているのは、『願いが叶っていない』という事。


「俺はマスタークエストをクリアしたはずだッ!!ドラゴンも倒した!あんたに願いも言った!そしてそれを叶えると言ったのはあんただ創造神!!やはり伝説なんて噓だったのか!!」


「――すまん!ちょっと協力して。」


創造神は片手で軽く「ごめん」のポーズをしながら言った。


「…………は?」


「実はのぉ……」


創造神は事の成り行きを話し始めたー。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


~神の宮殿~


ジークが願いを言い、創造神の光に包まれた数分後――。


「―よし。これで後はジークを戻せば願い通りの人生じゃ。」


願いを叶える為、創造神はジークに神のみが使える“神魔法”を使い願いを叶えた。

後はこの神の宮殿から現実の空間へと戻せば終わりとなる。本来ならー。


創造神が現実空間へのゲートを開いた瞬間、突風が吹いた。


ビュゥゥンッーー!!


「……なんじゃ??」


今までにこんな事は無かった。

………ヒラッ………ヒラッ……パサ…。

突風と共に、上から一枚の年季の入った紙が落ちてきた。


「ん?なんじゃこれは……。」


紙にはこう記されていた。


――――――――――――――――――――――――――――――

【条約と制約】


千年後、人間vs竜族によるデューエルを開戦する。


条約一条:人間、竜族それぞれ代表メンバー六名を選び一対一の決闘を行う。


条約二条:メンバーの一人は双方の世界の王または王妃を選出。ならび各チームのリーダーとする。


条約三条:残りのメンバーで全五仕合。先に三勝したチームの勝ちとする。


条約四条:勝者チームにはどんな願いも一つだけ叶える権利を与える。敗者チームは代表としてリーダーの消滅、及び勝者チームの言いなりとなる。


条約五条:このデューエルの責任者、審判は創造神とし、公平なジャッジを行う事。最終的な取り決めは全て創造神が決める事。



制約:もしデュエールを開戦しない場合、双方消滅となる。

上記の条約を破った場合、破った者の世界を消滅させる。


以上、条約と制約の元に千年後、異世界デューエルを開戦する事とする。



XXX三六九年  「三七零(370)代創造神」「闘神エンコ」「竜王倶利伽羅(くりから)

――――――――――――――――――――――――――――――


「………えーーーーーーーーーーーー⁉⁉⁉⁉」


読んだ創造神はちょービックリ。


「え?え?ちょっと待ってナニコレ。これ何??え?デューエル……?大昔の書物でしか読んだことないぞワシも!本当に存在したのかこんなものが……。しかも世界消滅……⁉

それに最後のサインに先代の創造神の名……それに闘神エンコ……竜王クリカラ……。

どちらも異世界の歴史書の中で“最強の魔導士”ではないか……。。。」


創造神の紙を持つ手が、体全体が小刻みに震えるー。


「…………!!!!!」


そして創造神は更に恐ろしい事に気付いたーー。


「……ちょい待って……“XXX三六九年”……そこから千年後って………今??……ワシじゃね??………。」


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


~再びジークの家~


「―――ってな具合で今ここに来たんじゃけど。」


「知るかぁぁぁ!!!!」


創造神の話にジークがキレた。


「お前がキレるな若造ぉぉ!!!」


創造神もキレた。


「キレるだろ普通よぉ!話が突拍子過ぎてついていけん!俺には関係ないだろ!早く願いを叶えろ!ドラゴン倒しただろ!何で猫になってんだよ!何で俺の家に来てんだよ!!」


摩訶不思議な出来事の連続に、ジークは怒りの歯止めが利かなくなっている。


「ワシに向かってなんて態度じゃ!!しかも言いたいことがメチャクチャだ!ワシが来た理由は今話したじゃろうが!」


「だからその話の意味が分かんないって言ってんだよ!!いきなりきてこの世界の消滅だのデューエルだの言われて誰が“はい分かりました”ってなんだよ!」


「よし……いいかジークよ。こんな言い争いをしに来た訳ではない……。

お主はマスタークエストをクリアしたのに、願いが叶うどころか猫になっておる。怒りたくなるのも分かる。じゃが……ワシもわざわざ冗談を言うつもりはない。一度冷静に話を聞いてくれんかのぉ?」


数秒前までの軽いノリだった創造神が真面目に語りかけた。

それを察したジークはぶっきらぼうに溜息をついたが、とりあえず創造神の話を聞くことにした。

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