18 ギルド設計図~後編~
日が沈み夜を迎え、また辺りが徐々に明るくなる―。
日が出始め、今日も世界を照らす太陽が見え始めた頃、その声は聞こえた――。
「「―――出来た!!」」
夜通し設計したジークとレベッカはハイタッチをしながら喜んだ。
「完璧だ!」
「まさに夢のような場所ね!」
「早く建てようぜ!」
「そんなに慌てないで(笑。…ねぇ!どう?“創造神様”!」
レベッカは後ろを振り向くがそこに創造神の姿はないー。
「…あれ?いない。どこ行ったんだろう?」
「また何か用があったんだろ。」
「確かに。創造神様忙しいからね。」
「そんな事より早く建てようぜ!」
「早くって言ってもこんなの完成させるには“相当大人数”の業者さん達必要でしょ?…任せて!私が手配してくる!普通の十倍は早く仕上げるプロを集めてもらうわ!」
「待て待て。お前大事な事忘れてねぇか?」
「……大事な事?」
ジークは自信満々に言い放つ。
「そう。レベッカ…お前の前にいる俺が…“最強魔導士”だって事をよぉ!!」
―ブワァァァ……!!
「―!!」
ジークの両腕にどんどん魔力が集まっていくのがレベッカにも分かった。
「普通の十倍……?俺なら“一瞬”だ。」
そう言うと、ジークは手で“印”を結び魔法を繰り出す――。
「“然魔法…… 猫 又 千 手 ”!!」
――バッ!!
ジークは両腕を地面につけた。すると、広大な更地の地面が徐々に揺れ始めた―。
―ゴゴゴゴゴッ……!!
「何が起ころうとしてるの……?」
レベッカはキョロキョロと辺りを見渡す。
そして次の瞬間――。
――ボコッ……ボコボコッ……!!ボコボコボコボコボコボコッッ!!!!
地面が突如膨れ上がり、まるで生きた粘土のように動き形を変えてゆく―。
グニョン!グニョン!グニョ~~ン!
「すご……。」
瞬く間に地面はジークとレベッカの設計図通りにギルド、ホテル、農園、プールと次々に自ら建設していき、ものの数十秒で巨大リゾートホテルテーマパークギルドが建設された―。
「目の前の光景が信じられないわ……。アンタやっぱ化物ね……何か色々と。」
レベッカはジークをまじまじと見ながら言った。
「見た目は俺のせいじゃない。」
「まさか一瞬で建てるとは。十分凄いけど“これじゃあ”まだね…。」
ジークの魔法によって建設されたそれは全て材質が土、砂、石、雑草……。地面の質そのままだった。
物凄くクオリティの高い砂遊びのような見た目。
だが、そんなレベッカの心配は直ぐになくなった―。
「“これ”で終わりなんて思ってもらっちゃ困るぜ。レベッカお姫様。」
「―え?」
「こんな質の悪いギルドじゃ綺麗なお姉さん達は集まらねぇだろ!綺麗なお姉さんは綺麗な場所に集まるんだよ!」
――パァァァァァァァァ……!!
光と共に、建設された建物達の材質、外観、内装まで全てが変化した―。
空のプールには透き通る綺麗な水が溜まり、温泉にもお湯が。
図書館には本がたくさん並べられ、ホテルのソファやベッドや布団はフカフカになっていた―。
レベッカの前には正真正銘、本物の宮殿の様なリゾートホテルテーマパークが完成された。
「どうだ!!これだけでもう王国中の噂になる事間違いないぜ!」
「すっご~~い♪♪これが私達のギルド⁉⁉アンタ本当に凄いわねジーク!!何でも出来るじゃない!」
「まぁな♪」
「完成記念にプールで遊ばなくちゃ!」
「よっしゃー!俺が一番だ!!」
ジークはプール目掛けて全力疾走―。
それに続くレベッカ―。
「ちょっ、ちょっと待ちなさい!私が一番に決まってるでしょ!」
―――ザッパァァーーーンッッ!!!
二人は同時にプールに飛び込んだ―。
「プッハーッ!最高っ!」
「気ぃ持ちー!!」
「労働の後のプールは格別だぜ!」
「そういえばアンタ猫のくせに水平気なの?」
「本物の猫じゃないからな。マタタビにも興味はない。」
――ポフンっ!
そう言うとジークは魔法で浮き輪をとサングラスを出し、プカプカと寝そべりながらジュースを飲み出した。
「あ!何それズルい!私の分も出してよ!」
「しょうがないな……ホレ!」
―ポワンッ!ポワンッ!
「やった!ありがとジーク!……ねぇ!ついでに私の服水着に変えてよ!勢いで飛び込んだから服がもう重くて重くて…!」
「俺は便利屋じゃねぇぞ全く…。」
そう言いながらもジークはレベッカの要望通り、水着に変えてあげた。
――シュンッ!
「もうホントに最高~♪ずっと浮かんでいたいわぁ~。ジークありがと!」
―――――ドキッ…――
(――なんだ…?…今胸のあたりで何か違和感が…。)
シンプルな黒いビキニ。ブロンドの髪と水に濡れた白い肌に、水面の陽がキラキラと反射する―。
端正な顔立ちにスラっと細いながら、強調される所は強調された抜群のスタイル―。
天真爛漫なその笑顔に、ジークの鼓動が一瞬高鳴った――。
「――ええのぉ(笑。青春じゃわぃ。」
「―うぉ……⁉ ジイさん⁉⁉ 」
……ツルンッ!……ドボーンッ!!
急に現れることが得意な創造神に、流石のジークも毎度毎度驚かされるばかり。
驚いた反動で浮き輪からプールに滑り落ちていった―。
「ちょっと何やってん…あ!創造神様!」
「やぁレベッカ。“ギルド”は無事完成したみたいじゃのぉ!」
「そうなの!見て見て!創造神様!凄いでしょ?…まぁ造ったのは全部ジークだけど(笑。」
「少し離れてる間にまさかここまで仕上げたとは流石じゃのぉ。ちょっと驚いたわぃ。」
「…ぶはッー!…ゲホっ…ゲホっ。…当ったり前だろ。俺にかかりゃ朝飯前だね!」
落ちたジークが水の中から出てきて浮き輪に捕まる―。
「他にももっと色んな所があるの創造神様!アレを見て!このプールがここでしょ?それでね…ここがこうなって…あっちがこうなってるの!…それにね……ここはこうで……」
レベッカは設計図のモニターを指差しながら、創造神にあれやこれや一から説明をし始めた―。
創造神が相槌する間もなくマシンガントークが続いている。
そんなレベッカの姿を、創造神は優しく見ていた。
「ホッホッ。嬉しそうじゃのぉレベッカ。」
「ちょっとはしゃぎ過ぎだな。」
「“アレ”からまだ日が浅い…。辛いはずじゃが、ああして笑顔が見られるのがワシの唯一の救いじゃ。」
「まだ自分責めてるのかジイさん。」
「…責められずにはおれん。しかし…悔いてばかりでも解決にならんからのぉ。…今ワシに出来ることをやっていくのがせめてもの罪滅ぼしじゃ。」
「ふ~ん…。でも、レベッカは少しもジイさんのせいだとは思ってないだろ。」
「その優しさに甘えてはいかん。一番辛いのはレベッカじゃ…。口には出さんがのぉ。他人のワシなんかでは到底、気持ちを全て理解なんて出来るはずがない。」
「まぁそうだけどさ…。…そう考えるとレベッカの姉ちゃん達こんな状況でよくあんなくだらない言い争いしてるよな。。王と王妃も成仏出来ないぞあれじゃ…。」
「レベッカには悪いがあの姉さん達は最悪じゃ。。あれだと逆に何の心配もいらんがのぉ。」
「確かに。」
「まぁなんにせよ……新しくギルドも完成したんじゃから、一つ一つこなしていくしかないのぉ。」
「――そうだな…。」
「今日はご苦労じゃった!お前さんにしては頑張ったのぉ!ここまで仕上がるとは驚いたわぃ。」
「俺にかかればこんなもんよ!」
「本当によく頑張ったのぉ……“レベッカの為に”(笑。」
「…は?レベッカの為じゃなくてお姉さん達の為な。」
「またまた~。照れんでええぞぃジーク」
創造神はニヤニヤしながら肘でジークを突く。
「どういう意味だよ?」
「隠さなくてもええぞぃ(笑。さっきまたレベッカを見て“ドキッ”としたじゃろ?」
「―――⁉⁉⁉」
「青春しとるのぉ!このこのぉ!」
「ふ、ふざけんなッ…!!してねぇよ絶対!!」
必死に誤魔化すジーク。
「お前さんの事は手に取るように分かるんじゃ(笑!単純じゃからのぉ!ホッホッホッ!」
「…バカ!!だからそういうのじゃねぇんだよ!!」
「だったらなんじゃ(笑。ホッホッホッホッ。」
「笑ってんなコラ!」
二人のコソコソ話にレベッカが気付いた。
「―――ねぇ!私の説明ちゃんと聞いてるの?創造神様っ!」
「勿論!しっかり聞いておるぞぃレベッカ。そこの建設の仕方は便利で都合が良さそうじゃのぉ!」
咄嗟に話を会わせる創造神。
「でしょ!さすが創造神様!分かってる~。」
「都合がいいのはお前だよジイさん…。」
「ホッホッホッホッ。まずは第一目標達成じゃな!」
無事、ギルドとは思えないギルドを造り上げたジークとレベッカ。
ジークの気持ちが芽生えるのはほんの少し先の……いや、もっともっと遠くのお話…かもしれない――。