17 ギルド設計図~前編~
~更地~
早速登録した土地へとやってきたジーク達。
王都からそんなに離れていないにも関わらず、目の前には凄く広大な更地が広がっていた―。
「なんだここ…。」
とてつもない広さに唖然とするジーク。
「どう?いい場所でしょ!ここなら王都に近いから便利だし、色んな依頼も受けやすい!それにギルド建てて農園作って特訓施設作って運動場作ってプール作っても大丈夫!」
「楽しそうでええのぉ!」
「でしょ!やっぱやるからには“イリーガルNo.1”のギルドを築き上げなくっちゃ!」
「いいぞぃレベッカ!」
「――バカか。ジイさんも呑気に合いの手入れてる場合じゃねぇぞ。」
「何よアンタ…。いちいち水差すテンションね。気が滅入るわ。」
「全く。つまらん男じゃわぃ。」
レベッカと創造神に冷たい目で見られるジーク。
「事の重大さ理解してるのかお前ら。デューエルの人集めしなきゃいけないんだぞ。」
「だからその為にまずギルドでしょ!アンタだってギルドあった方が色々便利とか言ってたじゃない!」
「ああ言ったよ。まさかこんな事になると思わないからな普通は。」
「猫ってホントに気まぐれね…。」
「俺が悪いのかよ。」
「どうやらジークはまだ“理解”しとらんようじゃのぉ。残念じゃ。」
「――ん?」
首を傾げるジーク。
「ええか?ここのギルドを最高のギルドにすれば、嫌でもイリーガル中に広まるじゃろ。そうすればお前さんの“大好きなもの”が次々訪れるというのに…。」
「――⁉⁉⁉⁉」
ジークの全身に雷が落ちたような衝撃が走った―。
「ワシらが想像するギルドはまさに“リゾートホテル”みたいなもんじゃ!最高のおもてなしに最高の料理、お酒。おまけに外でスポーツ出来てプールまで付いてるギルドなどここだけじゃ!そんな事が広まればたちまちイリーガル中から遊びたい“お姉さん”達が集まるわぃ!!」
「――なッ!!!!」
「…しかもここは“ワシら”のギルドじゃ!ここでのルールは“ワシら”が決められる!オーナーじゃからな!お姉さん達を好きに出来るのはジークお前じゃ!!」
創造神はジークを力強く指差す―。
「でも…残念じゃ……。ジークの言う通り、今ワシらに起きている事はとても重大じゃ…。なにせイリーガルの存続が掛かっているからのぉ……。確かに“こんな事を”している場合ではないのかもしれん…のぉ。レベッカ…。」
創造神の猿芝居は想像を絶するほどジークに効いていた。
それを瞬時に理解したレベッカは創造神とアイコンタクトを取り、阿吽の呼吸で猿芝居を続ける―。
「……そうね。本当にその通りだわ…。私が浮かれすぎてたの……ごめんなさい。」
シクシクと泣く真似をするレベッカ―。
「そんな事ねぇ!!顔を上げろレベッカ!!」
アホなエロ猫が簡単に罠に掛かる―。
「すまない!俺が間違っていた!お前がせっかくここまで動いてくれたのに…俺ときたら…。」
「いいえ…。私が間違ってるの…。少し自由になって舞い上がっていたわ。そうよね…。何よりもまずイリーガルの事を考えなきゃいけないのに…私ったら…!」
(…こりゃ名女優じゃわぃ(笑。)
「それは違う!違うぞレベッカ!間違っているのは俺だ!お前が自分の力で行動しているのに…俺はそんな意志ある人間の行動を邪魔しようとしてしまった…!情けない…。デューエルの事で頭が一杯になって全然周りが見えていなかった!すまねぇレベッカ…。今更だけど…俺にも協力させてくれないか…?俺なんかで良ければ…少しでもお前の力にはなれないだろうか?レベッカ!」
「……ジーク…!」
「…レベッカ!!」
完全に世界に入った二人は、互いに手を取り合う―。
「いいの…?私のこんなわがままを…。」
「何言ってるんだ…仲間だろ。」
こうしてギルド造りが始まったのであった―。
「こんな事してて本当にイリーガルを救えるかのぉ…?」
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茶番劇から一分後。
「よし!それじゃあ気合い入れて造りましょう!」
「「おおー!!」」
レベッカの掛け声のもと、作業が始まった―。
「まずは設計図ね!」
「よっしゃ!」
何を言われるまでもなく、ジークは率先して動き、魔法でちょちょいと大きなテレビのようなモニター画面を空中に映し出した。
「すごーい!」
「さてどうするお姫様!自由に簡単操作で設計出来るぜこれなら!」
「わぁ♪ありがとジーク様!じゃ早速…。」
―シュッ。―シュッ。
レベッカはモニターをタッチしながらギルド、特訓施設、プールにお洒落なカフェ、図書館etc…。
テーマパークを組み立てるようにあれやこれやぶち込む。
「これはここ!これはこっちで…ここにこれが欲しいでしょ?そうなったらこれはこっち!」
「バランス悪くないか?」
「え。そう?」
「“お姉さん達の事”を考えろよ!まず中央にギルドホテルを建てるだろ?そうしたらまずこっちの方向に大きなプールを置こう。ラフに水着のままギルドを出入りしてもいいようにプールと繋がった出入口と普通の出入口と二か所作ろう!勿論プールは昼間も夜も楽しめるお洒落なプール。アトラクションもいいな!激しめのスライダーとか!(あわやポロリを狙って…グフフ♪♪)」
「確かに!これ凄い良い案ね!楽しそうだしストレスないわ!」
「だろ?そうしたらその横にスパやマッサージ施設も建てよう!んで、ホテルの部屋には勿論風呂は付いているけど、こっちの横に温泉も用意しようぜ!」
「何それ最高♪」
(もうギルドじゃなくて“ホテル”になってしまっておるわぃ…。まぁええか。若者のやる気は大事じゃ。)
ジークの欲望ホテルは勢いを止めないー。
「もういっその事このホテルは全員水着で出歩く決まりにしよう!そうしたら野郎はいらないからこのホテルはレディ限定だ。そうだ!レディーファーストホテルにしよう!!」
「却下。」
鼻の下が伸びきったジークの妄想をレベッカが一刀両断。
「何でだよ!」
「方向がアンタの欲望に思いっ切り傾いているわ。これは私達が経営するリゾートホテルなんだから、来てくれる人は勿論、私達全員が満足できるホテルにしたいの!これじゃあ私が欲しいスポーツ施設や農園や図書館がないじゃない。」
「…分かったよ。お前も建てたいの建てればいいだろ?そうしたらここをこうして……ここをこうで、こう空けてここにスポーツ施設だろ…?それで…」
「うんうん。いい感じ…。そこは?こんな感じはどう?」
「お!いいなそれ。だったらこうした方が便利だし効率良くないか?」
「いいわね!そこはだいぶまとまってきたわ。次はこっちを見直していきましょう!」
(こんな息が合ってる姿は初めて見るのぉ。その力を是非デューエルでも発揮しほしいのぉ。――それにしても……長いのぉ…。実に話が長いのぉ…。ワシもその話に入れてもらえんかのぉ。。)
いつの間にか蚊帳の外にいた創造神は、「こりゃ暫く出番はないな」と静かにその場を後にし、一旦創造神の業務に戻って行った――。
「――うし!かなり良くなってきてるな!」
「そうね!やっと“三分の一”決まったわ!この調子でどんどん完成させましょジーク!」
「よっしゃあ!」
その後、二人の設計は時間を忘れるほど続いたのである―。