10 涙の数だけ強くなる
「だからアナタの彼には無理だって言っているのよ!」
「そっちだって同じよ!!」
「姉様達の彼では無理ですわ!!」
「「アンタもよ!!」」
ギャーギャーギャーギャー。
ピーチクパーチク。
姉妹の言い合いは終わらなかったー。
レベッカとジークは自然とその場を離れ、レベッカの部屋へと来ていた。
~お城・レベッカ部屋~
「ああ~。城のお茶は美味いねぇ~。……案外お前も大変なんだな。」
………ズズズッ……。
ジークは出してもらったお温かい茶を飲みながら言った。
「そうなの。王女には王女の悩みくらいあるわ。…パパとママが“殺された”のに…姉さん達はくだらない言い争いばかり…本当に嫌になっちゃう…。」
レベッカはソファに座り顔を落とす。ジークはレベッカの言葉に違和感を覚えた。
「―⁉…殺されたって…。お前知ってるのか?」
「当り前でしょ。その事は私達しか知らないわ。調査に来た警察とね。国の混乱を防ぐ為に伏せてあるのよ。…って……え?…“お前知ってるのか?”って…。逆にアンタ知ってるの??」
レベッカは不思議そうな顔をしてジークに聞いた。
「俺もジイさんに聞いた事だけどな。」
「―⁉⁉。ジイさんって…さっきの創造神様の事…?ちょっと待って!助けてもらった時に話を全部聞いたけど、この事は聞いていないわよ!ひょっとして知ってるの⁉犯人!」
レベッカはジークに詰め寄る。
「ちょ、そんな近く来るなって!俺もジイさんも犯人は知らない…。ここにくれば何か分かるかもしれないと思ったんだ。」
「なんだ…そうなんだ……。」
「悪いな。力になってやれなくて。でもジイさんが言うには“他の異世界からの侵入者”みたいだぜ。」
「――え…⁉⁉」
「俺がこの姿になるまでの経緯は聞いただろ?誓約書が突然現れて、それに驚いたジイさんは転生失敗。俺は猫。あの誓約書が本物かどうか色々調べてバタついてる時に、その“侵入者”とやらが現れたらしい…。ジイさん自分の事凄い責めてるぜ…。今も血眼で犯人の情報探してんじゃねぇか?」
「………そうだったんだ。」
「どうも可笑しいと思うんだ…。俺がマスタークエストをクリアしたのと、誓約書が現れたのと、レベッカの両親が襲われた事…。全部がこんな同時に重なると思うか?」
「…確かにそう言われると…。でも仮にそうだったとして…!…“一体誰が”パパとママを殺したのよっ…!!何の為にッ…!!」
レベッカの目には涙が浮かんでいたー。
「…それはまだ分からない。でも、俺とジイさんが絶対見つけるよ。お前の両親を襲った奴。」
「――私も探すわ…。」
「……ん?」
レベッカは何か腹を括ったような顔をしていた。
「パパとママを襲った奴を私が見つける!そして同じ目に遭わせてやるわ!!」
「…“同じ目に”って…それ人殺じゃありません…?レベッカさん…。」
「ジーク!あなたと創造神様は犯人を捜しているのよね?」
「あ、ああ…まぁ。」
レベッカの剣幕と殺意に返しがタジタジになるジーク。
「だったら私も仲間に入れて!!目的は一緒だわ!」
「いや、まぁ…確かにそうだけど…。」
「そのデューエルとやらやっぱ怪しいわ!普通の犯人だったら創造神様がすぐに分かるはず!調査に来た警察も手掛かりがまだ何も見つかってないの!少しづつ謎が繋がっていってるのよジーク!分かる??」
「お…おう…。」
「アンタもデューエルに出る為に私が必要でしょ!リーダーは王か王妃がならないといけないんでしょ?」
「うん…そうだけど…。よく考えたらお前も姉ちゃん達も“まだ誰も王妃になれてない”だろ…?どうするんだ…?」
「やっりなるわ“私”が!!」
「え?え?何に?」
「“王妃”に決まってるでしょ!!私がなって、人間側のデューエルのリーダーやるわ!もうそれしか道はない!!」
「……………。」
ジークは言葉に詰まった。
「よく言ったのぉ!!!お嬢ちゃん!!!」
「うわ!!出たッ!!」
ジークとレベッカが話しているところにまたも突然、創造神が現れた。
「人をオバケみたいに言うな。」
「出方が悪いんだよ。」
「創造神様!」
「やあレベッカ王女。」
レベッカは思いのたけを創造神にぶつけるー。
「私やります…。デューエルのリーダー!何故か分からないけど、パパとママを襲った犯人に辿り着ける気がするの!」
「…そうかいそうかい。」
そう言うと創造神はレベッカに頭を下げた。
「―!!…え…創造神様…?」
「すまんのぉレベッカや…。ワシのせいで君のご両親がこんな目に…。守ってやれなくてすまぬッ…!」
創造神の体が悲しみと後悔で小刻みに震えていた。
「やめてください創造神様…。あなたのせいじゃありませんよ。」
レベッカが温かい顔で創造神を見つめた。
その表情を見た創造神は少しだけ何かが救われたのか、急に涙が溢れ出したー。
「すまんのぉ…。本当にすまんのぉ…。」
しんみりした空気をジークが一掃した。
「いつまでもメソメソしてんじゃねぇぞジイさん。」
気恥ずかしそうに乱暴な言葉で言う。
ジークなりの気遣いだろう。
「そうですよ創造神様!私はもう大丈夫!当然悲しい気持ちはあるけど、せっかく目の前に犯人の手掛かりが掴めそうなの。なら私は、それを絶対に無駄にしたくない!」
「レベッカ……。」
「犯人を私も探したいの!!そして犯人を見つけて………私がソイツの息の根を止めてやるわ!!」
「―――――ん???」
悪魔のようなレベッカの顔つきと発言に創造は一瞬理解に手こずった。
お読み頂き有難うございます!
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作者のモチベーションに繋がり、更新が早くなるかもしれません(笑!
引き続き物語を楽しんで頂けるよう頑張りたいと思います。
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