6.クエスト選び
「じゃあ今度は、君たちが自己紹介する番だね」
「はい!」
アリアは三人に話題を振った。
おっさんの件は否定してくれないのか、と思ったけど、俺がおっさんなのは事実だし何も言えない。
元気よく返事をしてくれた赤髪の少女から、順番に自己紹介をすることに。
「私はミルアです! ジョブは剣士で、一応このパーティーのリーダーです。これからよろしくお願いします!」
「こちらこそ」
ニコリと微笑むミルア。
赤い髪はアリアと同じだけど、雰囲気は全く別だな。
元気で明るくて、しっかりしている感じがする。
彼女の自己紹介が終わって、しばらく間が空く。
ミルアは隣に声をかける。
「次だよ」
「あたしか。あたしはステラ! よろしくな!」
ミルアより簡単な自己紹介を済ませたステラ。
ソファーの後ろに槍が立てかけられているし、おそらくジョブは槍使いだろう。
単なるイメージだけど、ある意味ミルアより元気が良いかも。
続けて最後の一人。
左端に座る空色の髪をした少女の番になる。
「ソフィア」
「……」
「……」
「えっと、ジョブは?」
「魔法使い」
「そうか」
「うん」
これは会話と呼べるのだろうか。
ソフィアと名乗った彼女は、じっと俺の顔を見つめている。
目は背けないし、人見知りって感じではなさそうだけど……
コミュニケーションは苦手そうだな。
三人とも見た目から若いのは伝わる。
十代前半……いや、ギリギリ後半くらいか。
こんなにも可愛いらしい女の子が冒険者を目指すなんて、と驚きを感じる。
改めて、冒険者ブームを実感した。
三人が話し終わったのを確認して、アリアが口を開く。
「自己紹介は済んだね? 概要は説明してあるから省くけど、これから二週間、彼と一緒に冒険者として活動してもらうよ」
「はい! よろしくお願いします」
「よろしくな~」
ソフィアは黙って頷く。
「うん! あーそれとね? 話したと思うけど、今回はお試しだからお金は必要ない。その代わりと言っては何だけど、途中とか最後に感想を聞かせてほしいの」
「わかりました」
ん、ちょっと待て?
お金はいらないって聞こえたけど、俺への報酬はちゃんと支払われるよな?
そんな疑問が頭によぎる。
表情に出ていたのか、アリアが気付いて補足する。
「君への報酬はギルドから支払うよ」
「そうか。なら良かったよ」
ただ働きさせられるのかとヒヤヒヤした。
彼女からのお願いとは言え、無報酬は困るからな。
生活できなくなるし。
「じゃあ後はよろしくね」
「え、じゃあって他に説明は?」
「ないよ。後は一緒に冒険して、色々と教えてあげるだけだから」
「そんな簡単に言われてもなぁ」
「シオンなら大丈夫よ。アタシが選んだ男なんだから」
また根拠のない期待を向けてくる。
まぁ、やるって言ったことだし、仕事はしっかりこなそうとは思う。
そんなこんなでアリアは部屋から出ていく。
残った俺たちだけど、ここで話すことは特にない。
「えっと、この後はどうするかな? 基本は君たちに合わせようと思うんだけど」
「あ、じゃあその、最初から教えていただけませんか?」
「最初から?」
「はい。私たち、まだ一度もクエストに行ったことがなくて」
話を聞くと、彼女たちは三人とも別の街から引っ越してきたばかりだと言う。
冒険者登録を済ませたのも、二日前だったそうだ。
その時にギルド側からアドバイザーの話を提案されて、今日に至るという経緯まで聞いた。
「そうだったのか」
「はい。だからその、出来ればクエストの選び方とか、手順も教えてもらえると嬉しいです」
「うん、良いよ。じゃあホールへ行こうか」
「はい!」
俺は彼女たちと一緒に、一階のホールへ向かった。
話を聞く限り、冒険者についての知識が足りないのはわかる。
逆にそっちの方が、俺としてはやりやすい。
何を教えれば良いのかを考えなくても、全部教えれば良いんだからな。
「ここがクエストボードだ。見たことあると思うけど、ここに毎朝新しい依頼書が張り出されるんだよ」
「ほとんど残ってませんね」
「まぁね。この時間はピークをかなり過ぎてるし」
現在の時刻は午前十時。
クエストボードにも数枚の依頼書しか残っていない。
その現状を見て、ステラが不満そうに言う。
「全然ないけど大丈夫なのかぁ~」
「心配ない。どっちにしろ、今のランクじゃ受けられるクエストも少ない。Fランクのクエストならこの時間でも残ってるよ」
そう言いながら、残っている依頼書に手を伸ばす。
冒険者にはランクがあり、クエストにも同様のランク付けがされている。
特別な条件がない限り、自分のランクより上のクエストは受けられない。
登録直後なら、全員がFランクに指定されている。
ちなみに俺は、追放された彼らのランクをそのまま継いでいるので、一応はSランクだ。
「選んでみるか?」
「あたしが?」
「ああ」
「って言われてもな~ 何を選んでいいのかわかんないし」
ステラは頭に手を当てながらそう答えた。
それからうーんと唸りながら依頼を眺めていたが……
「わかんない! やっぱ選んで」
「了解。じゃあ――」
俺は依頼書を選び取る。
「この三つにしよう」
選んだ依頼書に、三人の視線が集まる。
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