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2.旧友に相談しに行く

 酒場を出た俺は、トボトボと帰り道を歩く。

 落ち込んではいるものの、近くで痴話喧嘩をしているのがわかる程度には落ち着いていた。

 というのも、パーティーをクビになったのは、これが初めてじゃない。

 この街に来て約十年。

 パーティーを追い出されたのは、これで五回目だ。


「いやまぁ……今回は長くもったほうか」


 夜空を見上げながら、ぼそりと呟いた。

 酷いときなんて、加入してひと月で追い出されたこともあったな。

 理由もめちゃくちゃだったような……今さら思い出しても仕方がないけど。


 宿屋に戻った俺は、腰に巻いていたカバンを外し、他の装備と一緒に机の上に並べた。

 シャワーで汗を流し、寝間着に着替えてベッドに寝転がる。


「はぁ~ さて、明日からどうするか」


 パーティーを追い出された日の夜は、いつもこうして寝る前に考える。

 最初の頃は、何がいけなかったのか、なんて反省したりもしていたけど、最近はあまり考えない。

 どれだけ思い返しても、自分に非があったとは思えないからだ。

 今回だってそうだろう。

 役割はちゃんと果たしているし、貢献だってしてる。

 おっさんはいらないとか、意味不明なこと言われちゃ、こっちも返しようがない。


「あぁ~ もういいや、明日の朝に考えよう」


 今日のクエストは大変だったし、いつもより疲れた。

 疲労した頭で考えても、良い案なんて浮かばない。

 まずはしっかり休もう。

 そうして俺は眠りについた。


 翌日の朝。

 いつもの時間に目が覚める。


「うぅ……もう朝か」


 時計の針は午前六時半を示していた。

 ギルド会館の開館時間は午前八時。

 良いクエストを受けたいなら、開館と同時に入るのがベスト。

 だから普段は、七時半にはギルド会館前に集合していた。

 とは言え、それも昨日までの話だ。

 癖で早い時間に目が覚めたけど、もう少しゆっくりしてから出よう。

 

 俺は道具の整理をしたり、のんびり朝食をとってから出発の準備を整えた。

 実際に宿屋を出たのは、午前九時を回った所だったと思う。

 ギルド会館までは歩いて十五分の距離だ。

 その時間なら、朝の混雑も治まっているだろう。

 ついでに彼らもクエストに出発している頃だから、会うこともなさそうだ。

 

「さすがに昨日の今日で会いたくはないからなぁ」


 呟きながら乾いた笑いが出る。

 いろんなパーティーを追い出されているから、この街には出来れば会いたくない人がたくさんいるよ。

 そんなことを考えながら、ギルド会館へと到着した。

 扉を開けるとベルが鳴り、受付嬢の視線がこちらに向く。

 軽く会釈してから、俺はクエストボードの前まで足を運んだ。


「あるかな……」


 別にクエストを探しているわけじゃない。

 この大きなボードには、クエスト以外にも様々な用紙が張られている。

 例えはギルドからの報告書だったり、パーティーメンバ募集の紙だったり。

 俺が捜しているのは後者だ。


「前衛職募集……魔法使い募集。う~ん……」


 メンバー募集の張り紙は数枚見つけられた。

 しかし、残念ながら要項に当てはまりそうにないものばかり。

 現時点で募集をかけているのは、ここに貼ってあるパーティーだけだろう。

 そうなると、しばらくソロで活動しなくちゃだが……


「……はぁ、仕方ない。またあいつに頼んでみるか」 


 こういう時、結局いつも頼ることになる。

 申し訳ないと思いながら、俺は受付まで足を運んだ。


「すみません。ギルドマスターに話があるのですが、取り次いでもらえませんか?」

「アリア様との謁見ですね。失礼ですが、ご予約はされましたか?」

「いえ、予約は特に」

「それは困ります。アリア様と謁見する場合は、事前にご予約していただかないと」

「あぁ~ 大丈夫だと思いますよ。シオンが来たと伝えていただければ」


 受付嬢は困った顔をしている。

 どうやら彼女は、受付嬢になって日が浅いようだ。


「とりあえず、連絡だけしていただけませんか? それで無理なら諦めますから」

「……かしこまりました。では、少々お待ちください」

「はい。よろしくお願いします」


 受付の前で五分ほど待つ。

 すると、奥から走ってくる音が聞こえてきた。

 さっきの受付嬢の女性だ。


「お待たせいたしました! すぐにお部屋へご案内いたします!」

「はい」


 それから彼女に案内され、ギルドマスター室へ向かう。

 ギルドマスター室は会館の二階奥にある。

 一番大きくて仰々しい扉の上には、金色の文字でギルドマスター室と書かれていた。


「ありがとうございます」


 案内してくれた彼女にお礼を言うと、彼女は深々と頭を下げて去っていった。

 一体何を言われたのか。

 何となく想像がつくけど、考えないようにしよう。


 俺は扉と向かい合い、軽くノックを三回する。

 すると、中から女性の声で――


「どうぞ」


 と聞こえてきた。

 俺は「失礼します」と形式に従い声をかけ、仰々しい扉を開ける。

 中は広々としていて、長細い机と高級そうなソファーがあった。

 奥には偉い人が座っていそうな椅子と机があって、横には女性が一人立っている。

 そして、彼女は偉そうに椅子に座って、俺を見るなりニヤっと笑みを浮かて言う。


「相変わらず辛気臭い顏してるね~」

「開口一番がそれか? 君こそ変わらないな、アリア」

「そりゃーもちろん! アタシは永遠にアタシだからね? 久しぶりだな、シオン」

「ああ」

 

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[気になる点] > パーティーを追い出されたのは、これで五回目だ。 繰り返しているならパーティのランクが上がってメンバーを変えたい時期がくる事をメンバーと話し合って穏便に脱退時期を調整していないこと…
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