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14/18

14.最終日

同時刻に、もう一作投稿しています。

良ければそちらも読んでくださいね。

下記リンクからとべます。


タイトルは――


元剣帝、再び異世界に剣を向ける ~千年後の世界で貴族に転生したので、好き勝手やってたら家を追い出されました~


 一日目が終わり、二日目が始まる。

 日を跨ぐごとに緊張はほぐれ、自然体で接することが出来るようになる。

 ステラには槍の使い方を教えることになった。

 クエストとは別で時間を作り、個人的な特訓に付き合う。

 その様子を見ていたミルアが……


「私も剣の使い方を教えてほしいです!」


 と言い出すまで、時間はあまりかからなかった。

 結局、最終的には三人それぞれで時間を作り、個別指導をすることになった。

 これが中々にハードスケジュールだ。

 

 早朝、ミルアの剣術稽古に付き合う。

 剣術に関しては、知り合いに恐ろしいほど強い剣士がいて、そいつの訓練に付き合っていたから、そこらへんの剣士より自信があるぞ。


 それからギルド会館が開く時間まで訓練して、他の二人と合流。

 クエストを受けてエリアに向う。

 終わって街に戻ったら夕方になっていることが多い。

 そこからステラの特訓開始だ。

 クエスト後で疲れも溜まり、空腹にも耐えながら頑張る。

 

 その後は三人で夕食を取り、すっかり夜も遅い時間だ。

 ただし、まだ仕事は終わらない。

 夕食後からソフィアの特訓が始まる。

 特訓と言っても、彼女の場合は勉強と言い換えたほうが正しい。

 俺は魔法が使えるわけじゃないからな。

 持っている知識を伝えて、今の彼女が使える魔法や応用について一緒に考える。

 ソフィアが眠たくなったら、おしまいの合図だ。


 予定がすべて終わって解散する頃には、午後十時を超えている。

 宿屋に戻った俺は、軽くシャワーだけ浴びて倒れるようにベッドに入る。


「……これ今までで一番大変かも」

 

 そう呟いて、直後には眠りについていた。



 早朝。

 俺はアリアに呼び出されてギルド会館へ足を運んだ。

 この日はオフで、ゆっくり休もうと思っていたから、ちょっぴり不機嫌だ。


「なんて顏してるのさ」

「いや別に……で、何の用だ?」

「途中経過の確認だよ。雇い主として、君がしっかり仕事をしているか聞こうと思ってね」

「それで呼んだのか」

「ええ。さっそく聞かせてもらえるかしら?」


 アリアは楽しそうに尋ねてきた。

 疲れている俺は、やれやれと思いながら語りだす。

 極力簡単に、すぐに状況が伝わるように説明して、彼女はそれを頷きながら聞いている。


「なるほどなるほど。中々大変みたいだね」

「だから一刻も早く帰って休みたいんだが?」

「ふふっ、それで不機嫌だったの?」

「そうだよ」

「だったら呼んで正解だったわね」


 アリアは楽しそうにクスクス笑う。

 面白がっているのが表情から伝わってくるようだ。


「じゃ、用は済んだし帰るぞ」

「ええ~ もうちょっと話を聞かせてよ」

「近況なら伝えただろ」

「そうじゃなくて、君の感想が聞きたいな」

「感想?」

「ええ。どう? アドバイザーになってみて」


 そう言ってアリアは、優しく微笑み首をちょこっと傾ける。

 俺は少し考えて、最初に思いついたことを口にする。


「そりゃまぁ、大変だよ」


 パーティーの一員として冒険に出る方が、よっぽど楽だと思う。

 それを実感する毎日だ。

 だけど――


「そう。でも、嫌じゃないでしょ?」

「……まぁな」


 アリアには見透かされていた。

 そうだ、嫌じゃない。

 むしろ楽しいとさえ思ってしまっている。

 人に何かを教えるのは難しいけど、ちゃんと伝わったときに込み上げてくる達成感。

 成長が垣間見えたら、それをもっと感じられる。


「生意気なところはあるけど、三人とも素直だからな。今はちゃんと言ったことを守ってくれるし、頼られるのも悪い気分じゃない」

「そう。君ならそう言うと思っていたわよ」

「またそういう」


 見透かしたような瞳で見てくる。

 何年経っても、アリアには敵う気がしないな。


「じゃあな」

「ええ。終わったらまた聞かせてね」


 俺は手を振り部屋を出る。

 ギルド会館を出てしばらく歩いていると、反対側から三人の姿が見えた。

 ミルアが最初に気付いて、俺に手を振ってくる。


「シオンさーん!」

「おう。三人で買い物か?」

「そうだぜ! シオンは何してたんだ?」

「俺はアリアと話してきた所だ」

「そうだったんですね」


 彼女たちを見て、アリアとの話を思い出す。

 終わったら……か。

 そうか、もう半分は過ぎてしまったんだな。


「シオンさん?」

「何でもない」


 追い出される以外でパーティーを抜けるのは、きっと何倍も寂しいんだろうな。

 せめて残りの一週間は、やれるだけ頑張ってみよう。


 そして――


 あっという間に最終日を迎えた。

 ギルド会館に集まった三人に向けて、俺は改まって言う。


「三人とも、この二週間よく頑張ったな。アドバイザーとして関わるのも、今日で最後だ」


 俺がそう言うと、三人はわかりやすくしょんぼりしていた。

 呆れたように笑い、続けていう。


「俺から見て、君たちは成長したと思う。それを今から、実戦で証明してほしい」

「証明……ですか?」

「どういう意味だよ」

「簡単だ。俺抜きでクエストに行って、無事に達成して戻ってこれば良い」


 受けるクエストは決めてある。

 最初に受けた三つ。

 薬草採取、トラップ回収、ウルフ討伐だ。

 これを難なくこなせるなら、成長していると言えるだろ。

 何より、冒険者として飯を食うなら、それくらい出来ないと駄目だ。


「やれるか?」

「はい!」

「もちろんだぜ! みっちり鍛えられたしな!」

「うん」

「よし、じゃあ頑張って来い」


 この日、俺は初めて彼女たちを見送った。

 子供の門出を心配する親の気持ちが、何となくわかった気がするよ。


ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白いと思ったら、評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

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