緊張の朝
エミリアside
「つまり、、、、アリス・レティ・ドミナ公爵令嬢は関係ないといいたいのか?」
「関係ない、、ことは無いのですが、アリス様がエルザ様達に今回の一連の出来事を指図したのでしたらわざわざアリス様が帰るまでエルザ様達は待たなかったと思います。」
「、、なるほど、、
しかし、こればかりはエミリアの憶測だけでは進められない。1度アリス嬢からしっかりと事情を聞く執拗があるな。」
あの誓いのあと、私とアル兄様で今回の事件にアリス様、、ドミナ家が関わりがあるのかということを話し合っていた。
私には真っ直ぐで誰よりも貴族令嬢らしかったアリス様があんなことを命令する方には見えなかった。
しかし、やはり私の意見だけではどうにもならないらしい。
「すまない。この手紙をドミナ家のアリス嬢まで速急に送って欲しい。」
アル兄様はそう言うと手紙の表の部分にヴァレンシュタイン公爵家の印を押し、近くにいた使用人に封をした手紙を渡した。
「お手数をおかけしてすみません。アル兄様」
「気にするな、、。とりあえず返事が来るまで待とう。
それ以外今の俺達にできることは無い」
「、、、はい」
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2日後、今日はアリス様から事情を伺う日だ。
「お嬢様、今日のお召し物はどう致しますか?ドミナ家のアリス様と言えば特に貴族令嬢の試着品や立ち振る舞いには厳しいお方だそうなので、一切の妥協は出来ません!」
クレアはそう言いながらせっせとクローゼットのドレスを漁っていた。毎朝見ていて感じていたが、どうやらクレアはドレスを選んだり化粧をする、、いわゆるオシャレが好きらしい。
「いっ!、、、」
ニコニコとドレスを漁っていたクレアが急に顔をしかめたと思ったら手を押えうずくまってしまった。
「クレア?!どうしたの?!」
私がクレアに近ずいて彼女が押えている手を見るとそれは出会った時とは比べ物にならないほどボロボロになり、所々に豆ができていた。
クレアは暫く痛さに悶えたあと、私に手を見られることが不快だったのか、さっと手を引っ込めてしまった。
「クレア、その手どうしたの?」
「えと、、あの、生まれつき手が荒れ易くて、、昨日少しその、水仕事をしていたらこんなことになってました。あ、あはは、、、」
絶対うそだ。どんなに手が荒れやすくても水洗いで豆ができるなんて聞いたことがない。でも、クレアのブラウンの瞳は少し申し訳なさそうで、そこに悪意は全く感じられなかった。
きっとなにか頑張ったのだろう。もしかしたら茶会の件でクレアになにか罰が下ったのかもしれない。私が怪我をしたのは周辺の使用人全員の責任となってしまうこともあるから。
それのせいならとても申し訳ない。
「ほ、本当に何も無いですよー!さ、お嬢様はアリス様との面会の準備をなさらないと!」
「ん、、うん、、、」
クレアは少し気まずそうな顔をすると話をそらすように私を化粧台に座るように促した。
クレアは優しすぎる。私が子爵令嬢だった時の周りの大人や使用人は簡単に愚痴を零していたし、丁寧でしっかりと仕事をこなしてくれていたけど、本当に私自信のことを考えてはしてくれなかったと思う。
「クレア、、、無理はしないでね」
「もう!お嬢様ったらー。そんなことしてないですよ!」
私がぼそっと呟くとクレアは先程の苦しそうな顔とは比べ物にならないほど朗らかな表情でニコリと微笑み、私の顔に化粧を施し始めた。
「、、、はい!終わりです!お嬢様頑張ってきてくださいね。」
「あ、、、うん。ありがとうクレア」
私がクレアについて考えているあいだに仕事が早いクレアはあっという間に私の身支度を済ませてしまった。
「私のことは大丈夫ですから。お嬢様はお嬢様のことに集中なされてください!」
「うん、、分かった。せっかくクレアがおめかししてくれたんだもの。この衣装に見合う振る舞いをできるように頑張るわ」
「その意気ですお嬢様!では応接室に向かいましょうか。ブライトが言うにはもうアレン様は応接室にて待機されているようなので」
「わかったわ。じゃあ行きましょうか」
私とクレアはこうして私室を後にした。
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「アル兄様お待たせ致しました。」
「ん、、あぁエミリアか。アリス嬢が来るまで椅子でくつろいでろ」
「はい。」
私が応接室に着くとクレアが言っていた通りそこには既にアル兄様が来ていた。
部屋をよく見るとアル兄様が座っている椅子の奥にある中央のテーブルには山積みになって置かれている大量の書類のようなものが置いてあった。
「アル兄様、、そちらに山積みの書類は、、?」
「これは先日エミリアに危害を加えたエルザ嬢のピュルテ家を初めてする各家に繋がるものを隅々までさらったリストだ。
さすがにどの家も由緒ある名門貴族だけあってリストにすればこれだけ出てきた。」
アル兄様はそう言って山積みになった貴族家のリストの紙の
頂点をトントンっと軽く叩くとハアっと息を吐いて頭を垂れてしまった。
「アル兄様大丈夫ですか、、?もしかして昨日から寝ていないのでは?」
「ん、、、?いやきちんと睡眠はとってる。睡眠を取らないとルイさんに怒られるからな
心配してくれてありがとうな」
ルイさんとはアル兄様専属の執事だ。私はあまりあったことがないけど、寝起きでぼーっとしているアル兄様を必死に起こしている姿を見かけたことがある。
アル兄様と私がそうして話していると使用人の1人が入ってきた。
「アレン様、お嬢様お取り込み中失礼致します。
アリス・レティ・ドミナ様を乗せた馬車が正門を通過したようです。」
「ああ。分かった。エミリア、屋敷の表入口に向かうぞ。こちらからお呼びした以上、ちゃんと出迎えはしておかないとな。」
「分かりました」
私とアル兄様は各々の使用人を連れて表入口に向かった。
私も誰も、あの後あんなことになろうとはこの時は誰も予想することが出来なかった。