書斎にて
アレンside
「お父様、お母様。アレン・ラ・ヴァレンシュタイン
只今戻りました。」
「アレンね。中にいらっしゃい」
俺が書斎の前に立ち戻ったことを口にすると中からいつになく厳しい雰囲気を纏ったお母様の声が聞こえた。
「失礼します」
そう言って入ると、中には書斎机に座り困ったような顔をするお父様とそばの椅子に腰かけ明らかな怒気を纏ったお母様がいた。
「とりあえずアレン、お茶会で何があったのか報告をしてもらってもいいかな?何がどうなったらエミリアがあんな酷い火傷を負って帰ってくるんだ?」
「、、、全部、俺の失態です
エミリアをエスコートした際、複数の令嬢らはエミリアに対し敵意にも似た視線を向けていました。
それだけならまだ予想内だったのですが、あろうことかドミナ公爵家の令嬢を筆頭としたいくつかの家の令嬢らは俺とエミリアが離れている隙にエミリアを中庭に呼び出し、熱湯を何度も浴びせたのです。俺が来た時には既に体の色んなところに火傷をおっている状態でした。」
「、、、アレン。なんでエミリアちゃんに敵意を向けている者がいると分かっていながらエミリアちゃんから離れたの。
あなたの役目はエミリアちゃんのエスコートでしょう?
エスコートする相手に怪我を負わせるなんて、、、。
しかもエミリアちゃんは公爵家令嬢としての初めてのお茶会だったのよ?1番攻めるべきはドミナ公爵家を始めとした令嬢方だけれど、エミリアちゃんが怪我をしたのはあなたの責任でもあるわよ」
「はい。すみませんでした。お母様」
「「ちょっと待って下さい!!」」
バン!
俺がお母様に頭を下げていると当事者であるエミリアが勢いよくドアを開けて入ってきた。
「エミリア?もう火傷は大丈夫なのかい?かなり酷い怪我だったようだけど」
「はい。私はもう大丈夫ですわ!それよりもお母様、お父様。アル兄様は何も悪くないんです!私がひょいひょいと他の令嬢のお誘いを受けて屋敷を抜け出したから、、、。
それにアル兄様は私を庇って右肩にけがを負っています!」
エミリアは俺とお母様、お父様の顔を見ながら俺を庇うように必死に話し出した。
痛々しい右腕のやけどは包帯に包まれて見えなくなっていて、全てを話終えるとエミリアはそれを擦りながら心配そうに俺の事を見つめた。
「はぁ、、、。全く、エミリアちゃんがそんなに必死に庇うなら私はもうなにも言及しないわ。エミリアちゃんに嫌われたくないもの。」
お母様はエミリアと俺の顔を見ながら1つため息を着き、広げていた扇子をピシャリと閉じた。
そしてそれを見計らったかのように次はお父様が口を開いた。
「それと、アレンこの件はお前がヴァレンシュタイン公爵家次期当主として処理をしなさい。それが出来たら今回のことは不問にする。」
「わかりました。それでは俺は関係者へ連絡を取ってきます。エミリア、行こう。応接室でどんなことがあったのか詳しく聞く必要がある。」
「はい、アル兄様」
「あぁ。それとエミリア」
俺がエミリアを連れて書斎を出ようとするとお父様がエミリアを呼び止めた。
「お父様?」
「悪いがブライトとクレアをここに呼んできてくれないか。2人に大事な話がある。」
「ブライトとクレアでしたら書斎の外に待機させています。ブライト、クレア入ってきて!お父様が貴方達にお話があるそうなの。」
「はい。失礼します」
「私に、、お話ですか?」
エミリアがそう言ってドアを見るとブライトとクレアが入ってきた。2人とも心無しか顔色が悪い。それはそうだ。
お父様とお母様はエミリアにこそ優しいが基本的には自分にも他人にも厳しい。書斎に呼び出されるということは、、つまりそう言うことなのだろう。
「それでは俺とエミリアは失礼させていただきます。」
「あぁ。引き止めて悪かったね。」
俺とエミリアはそうして部屋をあとにした。
、、、クレアが泣きそうな顔をしていたのはきっと気の所為だろう。