表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

憂鬱

作者: 高田秀成

憂鬱でたまらなくて遠くに逃げ出したくなるとき、僕は本当がどこにも逃げ出せないと言うことを知っている。ーーーいくら遠くに行っても、僕は僕から逃げ出すことはできないということを。雨、雨の土曜日の夕刻、空はただ薄暗い。あぁ、憂鬱よ!お前は天への畏怖も、大地への敬意も、死への恐怖も、生への渇望も薄らいだ現代、人間に残された唯一の、人間を人間たらしめるものだというのか!この身体の中から滲み澱む、僕を自己嫌悪へ落とし入れるものが!古来、幾人もの偉人が憂鬱から、或いは自分自身から逃げ出すために自ら命を絶ったがーーー僕にはそれさえ憂鬱から逃げ出す手段に思えない。不具合を起こした機械の電源を切ることで安心することなどとうていできまい。

結局僕にはどうすることもできないのだ。まだ雨は止まず、僕の憂鬱も消えない。ならば僕は、身体を失ったかわりに何もかもを手に入れ、延長されたわずかな快楽を舐めることしかできないこの現代で燻る、この憂鬱を、そう、この憂鬱という素晴らしいやつを甘んじて受け入れようじゃないか!

ーーーきっとその思想さえ、この憂鬱の中に飲み込まれるとしても。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ