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レモンティーン  作者: 守山みかん


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九十八

真樹は、対峙している対戦相手の四つの同じ顔を見て、瞬間的に虫酸が全身を走ったため、すぐにミキミキをそばに呼んだ。

「いもうと」

真樹の口調は、意外と抑揚が無かった。

「こういう時の対策として、一番(ちか)しい者の意見を聴くのが得策という、天使様の助言を実践してることよ

断っておくけど、相談ではなくってよ。

あくまでも、私の愛する天使様の助言を尊重しているだけのことよ。

そこは、わかってほしい。

ちゃんとわかってる?」

「きゃはあ」と、ミキミキはいかにも嬉しそうな笑顔を見せた。

「私とマキねの間なのでし。

それぐらい、ちゃんとわかってるのでし。

で、何の相談なのでしか?」

「相談じゃない!」と、真樹は張り裂けるような声で否定した。

「あねは、いもうとに相談しない!

それは、ありえないことよ。

いもうとの意見を参考にし、私が判断する。

これが、正常のプロセスよ」

「きゃはあ、てへぺろですわん」

ミキミキは、ぺろりと舌を出し、唇のまわりを一周させてから、舌を引っこめた。

「マキねが知りたいことは、わかっているのですわん。

同じ顔をしている敵に対して、こちらはどう対処するか、でしね?」

ミキミキの語りに対して、真樹は、両腕を胸の前で組み、うんうんとうなずきながら、耳を傾けていた。

「注意点は、いくつかありますわん。

全員が同じ行動をするなら、対処は簡単なのですわん。

第一回戦で、弓矢のヒトたちを一瞬で倒した社長すわんのようなことが可能なわけでし」

「あの時は、顔が違っていても、全員の行動が同じだったことよ」

「昨日の作戦会議で見た映像を思い出すのですわん。

顔は同じでも、行動は違っていたのですわん。

戦闘経験者のパーシャすわんも、誰が何の役割だったかわからなくなる、と言っていたのでし」

「あの時と真逆か!」

真樹は、両手をパンと叩いた後、元の姿勢に寸分の違いも見せずに戻った。

ミキミキは、首を縦に大きく振ってうなずいた。

「一番の注意点は、誰が何の役割なのか、その特徴を覚えておくことですわん。

戦闘開始になって、ごちゃごちゃしてくると、きっと誰が誰だがわからなくなるのですわん」

「確かに」

「それから……」と、ミキミキは、ジャッキー・ロワイヤルの方をちらりと見る。

「グループには、ジャッキーさんがいるのでし。こちらも対抗して、みんなが同じ顔に見えるようにしてもらうと良いのですわん」

「おお」と、真樹の両目が輝いた。

「それは名案であることよ。誰にバケると、一番効果的なのか検討するのよ」

「そりゃもう……」

ミキミキは、今度はオイゲンの方をちらりと見る。

「だんなが一番なのでし」

「だんな……」

真樹が、きょとんとした顔で、同じようにオイゲンを見る。

「ウチらは女子よ。だんなにバケるのは、無理が無くって?」

「だから、効果として、一番なのでし」

ミキミキは、頑として主張した。

「私は……」

そこで真樹の脳裏に、不意に湧いて出た発想があった。

「そうだわ……

なぜ、今まで気づかなかったのかしら……

ジャッキーさんの力を借りれば、私は天使様になれる……」

「?」

ミキミキには、真樹から漏れてくる声の意味が理解できなかった。

「だんなは却下!

私は、天使様になれることよ。

皆で、天使様になりましょう」

「は?」と、ミキミキの目が真ん丸になった。

「社長すわんは、今、グループにいないのでし」

「そんなの関係あるか!」

真樹の叫び声がドーム内に轟く。

別の話題で盛り上がっていたオイゲンとジャッキーも驚いて、真樹に注目した。

「ジャッキーさん、私たちみんなを天使様の姿に変えて下さい」

「……」

真樹からの唐突な指示に、ジャッキーは言葉を失っていた。

「私、いつだって天使様になれることに気づいたことよ」

「……ごめん……真樹ちゃん……

言ってる意味が、よくわからないんだけど」

「私の望みは、ジャッキーさんだけがかなえられるのです」

戸惑いを見せるジャッキーに、容赦なく真樹は詰め寄る。

「対戦相手と同様に、こちらも同じ顔でのぞめば、撹乱できます。

だから、こちらは全員が天使様に……」

そこで長めのホイッスル。

いよいよ、第1ピリオドが開始した。

「急いで、ジャッキーさん!

試合が始まったわ」

「無理よ……真樹ちゃん……すぐに準備できないわ」

「お願い……」

「あきらめてあげるんだ、マイハニー」

オイゲンが割って入った。

「戦闘は始まってあげてるんだ。おふざけは終わってあげて、敵陣に目を向けてあげなければ」

「私は作戦の提案を……」

真樹は、なおも食い下がった。

「今のリーダーは、ボクだ。ボクは、その提案を承諾してあげられない」

真樹は、両頬を思いきりふくらまし、オイゲンからプイッと目をそらした。

「あれを見るでし」と、ミキミキが指さした方に、全員の視線が集中する。

姫檜扇水仙(クロコスミア)のメンバーの一人が(全員の顔が同じなので、誰かは不明)、大量のMEを結晶化させ、別のメンバーが、その結晶を両手でつかみ、何やら加工を始めた。

オイゲンは、その行動目的が何であるかを事前の分析で理解できていたので、阻止しようとダッシュで向かった。

だが、別のメンバーがオイゲンの前方に立ちはだかった。

「まあ、簡単に許してもらえるとは思っていないがね」

オイゲンは、力一杯のモーションで、右手の『牙獣(biter)』を正面の相手に突きつけた。

相手はひるまず、加工担当者が即席に作りあげた『まな板』のような真四角の盾を後ろ手で受け取り、オイゲンの攻撃を受け止めた。

ガツンと激しい衝突音が炸裂し、オイゲンの右腕に鈍い痛みと、痺れを伝えた。

「早いな……間に合わなかったか」

オイゲンは、右腕をさすりながら、後方に飛びのいて、初期位置(デフォルト)に戻った。

相手が防御に使用した板は、にわかに円形状に形成され、装備者の片腕を覆うほどの『ラウンドシールド』となり、金色の輝きを見せた。

我々(We)は創(seek)出を(a)求め(create)」と、女戦闘員は言った。

その後に棒状の武器が手渡され、これも整形がなされ、金色の『ダガーナイフ』となった。

そし(and)て破(seek)壊を(a)求め(destru)(ction)

オイゲンは、固唾をのみながら、女戦闘員の声に聞き入っていた。

「何か言ってますでしね」

いきなり耳元で聞こえた声に、オイゲンは、肩をビクつかせた。

すぐ横には、ミキミキが立ち、オイゲンに向けて、ニヤリと微笑んでいた。


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