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レモンティーン  作者: 守山みかん


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七十五

真樹とジャッキーは二人並んで、永久凍土(パーマフロスト)チームの男子二人、パーヴェル(Pavel)シュトキン(Syutkin)ヴィタリー(Vitaly)コロソフ(Kolosov)を押さえこんでいた。

筋肉隆々の二人に対抗して、胸は大きめだがスレンダーな女子たちが優勢となっている状況に、場内はかなりの盛り上りを見せていた。

権限者(ギフター)同士の押し相撲が、筋力に()らず、『意志』の力に依ることを如実に示している場面であった。

ジャッキー(Jackey)ロワイヤル(Royal)は、『魔界(カーマ・ダートゥ)』による弱化効果は発揮できたと判断し、自身の『意志』を攻撃のみに注力することにした。

「ジャッキーさん、意外と『攻撃側面(アグレッシブ)』も強いですね」

真樹が率直に褒めた。

「能ある鷹よ」と、ジャッキーは謙遜を見せなかった。

「幻惑術も、かなり『意志』と体力を使ってるのよ」

「頑張れば、私にも使えるようになるでしょうか。その……幻惑術」

「ミキちゃんには幻惑術で反撃されたことがあったわね。お姉さんの真樹ちゃんにもできそうな感じがするんだけど」

「いもうとは、私より『情報側面(インフォマティブ)』が優れているんです。そこは、私も認めています」

「じゃあ、今度、時間があったら、真樹ちゃんにも簡単にできる術を教えてあげるわよ」

「ありがとうございます。戦闘に使えるようになりたいです」

「まあ……ルール無用で良いんなら、こういう男子には、ヘタな幻惑を見せるより、全裸になった方が効果的かもしれないわね」

「本当ですね」

二人の女子はクスクス笑っている。

そんな余裕のやり取りをしているのを目の前にして、必死に押し相撲をしている男子二人は、当然に面白くない。

女子二人の向かって左側に位置するパーヴェルは、相手の攻撃を押さえている左腕を少しだけ左にずらして、ヴィタリーの右腕に接触させ、秘密の会話を試みる。

状況打破についての相談だが、だいたい次のようなことを共有した。

二人対二人の対決では分が悪い。

かといって、相手方を切り離して、一人対一人の対決に持ちこむのも分が悪い。

アンナは……

パーヴェルは、左後方でキュア(Cure)凶子(Kyoko)と対決しているアンナ(Anna)リリーホワイト(Lillywhite)をチラリと見た。

アンナも強敵を相手している状況だけに、支援を求めるのは厳しい。

そして、右側で矢吹(Yabuki)パンナ(Panna)を相手にしているラスカー(Lasker)タム(Tam)を見る。

状況は、アンナ以上に深刻だ。

やはり、支援を求めるわけにはいかない。

要するに、解決は自分たちだけで考えるしかない。

勝機があるとしたら、相手を引き離し、どちらか一人をこちらは二人で対決する形に持ちこむことだ。

どうしたら、それができるか?

何とか知恵を絞れ。

その時、ラスカーが両脚キックで、パンナにダメージを与えた場面に遭遇する。

二人は同時にこの瞬間を絶好の機会と意識する。

パンナとの位置関係は、手を伸ばせば届くというほどではないが、割りとヴィタリーの側に近い。

ヴィタリーは開いている左腕から『硬化』させたMEの(かたまり)を『撒菱(まきびし)』のような形に加工したものをパンナの足元にばらまいた。

これ事態が大した攻撃的効果をあげられるとは思っていない。

ヴィタリーの『意志』は、矢吹パンナには遠く及ばないのは理解している。

たとえ、パンナが『撒菱』を踏んだとしも、自身の『意志力』で粉々に踏み潰してしまうだろう。

二人の狙いはパンナの注意を引くことではなく、自分の正面で押し相撲を続けている二人の女子の注意を散漫させることにあった。

事実、真樹は梨菜の足をキズつけかねない『撒菱』の存在に、かなり注意力を奪われていた。

「真樹ちゃん、ダメよ」

すかさず、ジャッキーが注意を入れる。

「集中を続けないと、この有利な展開をひっくり返されるわ。相手の挑発にのってはダメ」

「でも……あのままでは、天使様の足が……」

真樹は、今にも泣きそうな顔になっていた。

真樹の『意志』に緩みが発生した瞬間、その機会を二人は見逃さなかった。

二人は、それぞれの遊ばせていた両腕にMEを集め、手のひらを真樹に見せるように構えた。

そして、パーヴェルは真樹の左腕、ヴィタリーは右腕を狙って、『爆発(エクスプロージョン)』を発生させた。

その激しい衝撃をまともに受け、真樹は両手のククリナイフを床に落としてしまった。

「真樹ちゃん!」

ジャッキーが叫ぶ。

男子二人の息は恐ろしいほどに合っていた。

床に落ちた武器は、ほぼ同時に男子の蹴りによって弾き飛ばされ、真樹から引き離された

武器を失った真樹の戦闘力が著しく落ちたのは明白だった。

一方、『撒菱』が敷かれた位置まで、梨菜の足は移動していたが、軽々とそれらは踏み潰されていた。

梨菜自身は、『撒菱』の存在など、全く気づいていなかった。

「社長さんにとっては、あの程度のモノだったのよ。私たちは、私たちの戦闘に集中しなくてはならないわ」

ジャッキーの声を聞きながら、真樹は全身を震わせていた。

「……私は……天使様を信じきっていなかった……私は何てことを……」

「真樹ちゃん、気をしっかり持って!」

ジャッキーはムチを放つように、真樹の耳元で叫んだ。

思惑が成功したパーヴェルとヴィタリーの二人は、真樹の様子を見て、ニヤリと笑った。


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