六十一
《決勝リーグ・第1回戦・第1ピリオド》
強天使(ウルムスリーグ優勝チーム)
→ハーモニー真樹(女24歳)
→キュア凶子(女30歳)
→ミキミキ(女16歳)
→オイゲン(男29歳)
弓術家星(プラタナスリーグ優勝チーム)
→第1星(男21歳)
→第2星(女25歳)
→第3星(男25歳)
→第4星(女22歳)
決勝リーグは、4人対4人のバトル・ロイヤル。
予選リーグと同様に、床に足の裏以外の体の部位が接触した時、または円形の闘技場から押し出され、周囲に設置された水槽に着水した時に、その選手は失格となり、闘技場から退出しなければならない。
試合時間は5分間。
ハーフタイムは無い。
『時間稼ぎ禁止』などのルールおよび反則に対するペナルティーについては、予選リーグのルールおよび反則規定を準用する。
全員を退出させた側、またはタイムアウト時に多くの人数が残っていた側、残った人数が同数の場合は、獲得したバトル・ポイントが大きい側が勝者となる。
対戦は2ラウンド。
2ラウンド共に勝利した場合は当然の勝利判定となるが、共に1勝1敗となった場合は、退出させた人数で判定し、これも同数だった場合は、獲得したバトル・ポイントが大きい側、さらにバトル・ポイントも同点だった場合は、リーダー同士の再戦で決着させる。
「『弓術家星』は、全員が弓術家のチームです」
選手控室で、日向 夕子が梨菜に向かって説明を始めていた。
「予選リーグでは、当然に単独での戦闘だったわけですが、全員が同じ戦闘スタイルだったそうです。つまり、弓を武器にした攻撃方法です」
「……今、出場しているのは、予選リーグを制した4名なのですか?」
梨菜が、波風を立たせないような慎重な口調で尋ねた。
「はい……」と、返事をした後で、日向は「あ!」と大きな声を出した。
「……そうなると……第2ピリオドに登場する4名は……第5星、第6星、第7星、第8星……敗退チームからのスカウト選手はいませんから、全員が予選リーグ未出場の構成になります……これは一体どういうことでしょう……」
「予選リーグ程度は、前衛の4人だけで事足りたというわけで。戦力を隠し持っていたとなると、よほどの自信があるのかもしれませんね」
梨菜は、大画面に写る4名の同士たちに視線を向ける。
長めのホイッスル。
同時に沸き立つ観客たちの歓声。
マスコミに『閉じた闘技』と表現されているWGBGだが、集音マイクと音響システムによる効果で、その熱気は選手陣営にもほぼ正確に伝わっていた。
『強天使』は、真樹を先頭に、右方にオイゲン、左方にミキミキ、後方に香子とダイヤ型のフォーメーションとなっていた。
それに対して『弓術家星』の4人は横一列と言いたいが、微妙に両端の二人が内側を向き、緩い弧を描いていた。
4人は長さ60センチ余りの弓いわゆる短弓を左手に持っているが、不思議なことに矢筒らしきモノを背に取り付けている様子は無く、右手の前腕に長細く黒い箱のようなモノを着けていた。
「オイゲンすわん」と、ミキミキは視線を対戦相手に向けたまま、隣に話しかけた。
「最初に攻撃が行くのでし。きゃはあ。気を付けてほしいのですわん」
「ふう……」と、オイゲンはため息をもらす。
「麗しの妹よ、忠告ありがとう。しかし、何で最初はボクなんだろうね」
「そんなこと決まっててよ」
と、真樹も視線を敵から逸らさずに言った。
「相手にあなたの『意志』が一番弱いことを知られているからよ」
「はははは」
オイゲンは、声を出して笑った。
「はっきりと言われてしまったね。しかし、この現実を受け入れてあげるよ」
弓術家たちは、弓を立て、弦を引く。
そこには、いつの間にか30センチ程度の長さの光り輝く矢が現れた。
4人の先が同じ方角を向いている。
狙いはオイゲンに集中していた。
「牙獣」
オイゲンは唱え、低い体勢で、両腕に装着した銀色の細かなウロコ模様の入った籠手を正面で交差して構えた。
4つの矢は同時に放たれ、さらに続けて二発目の矢を、まるで一発目の矢羽を狙ったように放った。
ただし、矢には羽が無く、あくまでも前進する矢の後部を指す。
そして、二発目の矢は、一発目の倍の力で弦を引いていた。
つまり、二発目の矢の方が一発目より速度が早いので、追いつくということである。
その追いつくポイントだが……
一発目の矢が4本、寸分の狂いも無くオイゲンの『牙獣』の交差部分に到達した。
WGBG公式の測定器が示した『意志』の値は、
一人あたり1500前後。
4人の力にバラつきは見られず、ほとんど同じ数値を示していた。
単純に合計すると、約6000。
「うお!」
ズシンと押しこんで来る力に、オイゲンはたまらずうめき声を上げた。
そこに、二発目が正確に重なってきた。
こちらは一人あたり約3000。
合計12000。
先のと合わせて18000。
「オイゲン!」
真樹が叫んだ。
一点に集中した8本の矢は、オイゲンの『牙獣』を何なく突き破り、両方の前腕を串刺しにした。
「早く抜かないと……」
真樹が突き刺さった弓を引き抜こうと手を伸ばすのを、香子がとっさに制した。
「私に任せて下さい」
香子は、十字棍から短い方の棍を外し、オイゲンの腕に突き刺さった矢尻に棍を当てると、一気に逆方向に矢を押し戻した。
「おお……さすが凶子。矢吹パンナを破った『意志』を持つ守護神だね」
オイゲンは賞賛し、すぐに負傷部位を『治癒』するが、ダメージ認定Bを宣告されてしまった。
『弓術家星』のバトル・ポイントに2点が加算される。
『横取り』された矢は、発射元の4人の位置へ戻っていき、香子の『意志』により爆発した。
「あの武器は……」と、日向が言い始めた。
「『炭素触媒』を応用してますね。もう、今更な感じでウンザリしますが、当社の技術を盗んだモノでしょう」
「あの腕に着いている小さな黒い箱のようなのが『矢筒』ですね」と、梨菜も続く。
「集まられたMEと融合し、相手に持ち前の『意志』以上のダメージを与えられるようです。さらに、無限に矢を発射できる仕組みにもなっています」
「『筆』のような銃タイプと違って『光弾』の速度が一定ではなく、弦の弾き方で速度を感覚的に調整できるのが特長のようです。先のように、標的の間際で矢を重ねて攻撃力を倍増させるなんてことも、できてしまいます」
「高い技術が必要ですね。全員の息が、ピッタリと合ってます」
香子のカウンター攻撃により、4人の隊列は瞬間、乱れを見せるが、すぐに体制は立て直された。
そして、次の攻撃となる動作が始まった。
「またオイゲンすわんに来るのでし」と、ミキミキが忠告する。
「次も私が防ぎます」と、香子が前に出ようとするのを、オイゲンが制した。
「キミの支援は、ありがたく思ってあげるよ。だが、何度も助けてもらうわけにはいかない」
「ダメよ、オイゲン」と、真樹が注意する。
「少しの負傷でも、相手にポイントを与えてしまうことよ。ケガをしないようにしなくてはいけなくてよ」
「私が皆さんを守ります」と、香子が言った。
すでに構えている十字棍は臨界により、輝きに満ちていた。
「だから、皆さんは攻撃に徹してください。相手側に攻撃の機会を与えなければ、勝てる相手だと思います」
「このダイヤの隊列を崩さないで」と、真樹が口添える。
4人は、ジリジリと相手との間合いを詰めた。
4つの弓は、また同時に放たれた。
再びオイゲンに迫っていく。
追随する後発の矢もまた、わずかなズレもなく、正確に。




