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レモンティーン  作者: 守山みかん


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30/136

三十

ここで『WGBG』の開催要綱について説明しておく。

試合は、プラタナス、ウルムス、テルミナリア、マロニエといった四つのリーグに、各々十六ずつのチームが振り分けられている。

予選リーグは勝ち抜き戦で、四回戦を勝ち抜いたチームがリーグ優勝を勝ち得ることになる。

『WGBG』は、B国の土日のみの開催としており、予選リーグは、各リーグの第一回戦を順番に開催していく。

開催スケジュールの詳細は、まず初日の土曜にプラタナスの第一回戦、翌日の日曜にウルムスの第一回戦(梨菜たちが勝利した試合を含む)を実施し、その翌週の土日にテルミナリア、マロニエが実施された。

そして、各リーグの第一回戦が終了した翌週の土日になり、勝ち上がったチームによる第二回戦が始まろうとしていた。

第二回戦の日程は、土曜にプラタナス、ウルムスを、日曜にテルミナリア、マロニエをそれぞれ四試合ずつ実施することになっている。

さて、『強天使』の次の相手は、C国の『約束(Promised)の地(Land)』チーム。

格闘技を得意とする男子で構成されたチームで、全員が二十歳未満の若年者たちである。


《二回戦・第一ピリオド》

強天使

ハーモニー(Harmony)真樹(Maki)(女24歳)

約束の地

ハオ(Hao)ユウ(Yu)(男15歳)


ハオは、細長い顔に両手を当てて、こめかみに向かって押し上げたようなつり目の男子で、白黒反転させた星空のようなソバカスと、上顎の中切歯の一本が自己主張して一歩前に出ている歯並びが特徴である。

また、彼の両足には、四つのローラーが付いたインラインスケートが装着されていた。

「ねえちゃん、いい体つき、してるな」

と言って、ハオは目の前に立つビキニ姿の年上女子を見て、ニターっと下卑た笑みを浮かべる。

真樹は、右足を前に出し、両手を腰に当て、唇をツンと上に向けて、ハオを見下ろすように見つめている。

「……こぞう……」と、真樹がつぶやく。

ハオの両肩がキュッとしぼむ。

「私の強さを味わうことよ」

試合開始の長めのホイッスル。

ハオは、即座に真樹に向かって突進し、スライディングして、真樹を転ばせようとする。

真樹は、ヒラリと横向きになって、それを交わす。

通りすぎざまに、ハオが真樹のショーツのヒモを掴もうとするが、それも器用に交わす。

「パンツ脱がしてやろうと思ったが失敗した」

ハオが、キャッキャッと言って、はしゃぐ。

まるでチンパンジーが喜ぶ様に、そっくりである。

真樹は奥歯を噛みしめ、ハオをにらみ付ける。

ハオはクルリと回転し、再び真樹に向かって突進する。

今度は両脛を発汗させ、『臨界状態』でのスライディングである。

真樹も、ククリナイフを構えて、刃先まで『臨界』させて迎え撃つ。

途中で、ハオの両足が地面から浮き上がり、地面との摩擦を殺した滑らかな滑りが猛スピードとなって、真樹の足を払おうとする。

真樹は、その攻撃を片足立ちで交わす。

ハオは、隙を狙って、真樹のショーツのヒモに指を掛ける。

真樹は、右手に持ったククリナイフを振り下ろし、薪でも割るように、ショーツに掛かったハオの手を切り落とそうとする。

とっさに、ハオは指を放し、真樹の攻撃を回避する。

「あぶねえ、あぶねえ」と、ハオは胸を撫で下ろす。

「スケベ心を働かせ過ぎると、命とりになることよ……こぞう」

「ふん」

ハオは、ペッと唾を吐いた。

「ねえちゃんのことが気に入った。オレが勝ったら、オレの女になれ」

「ふん」と、真樹は不敵に笑う。

「私、バカはキライなことよ」

ハオのこめかみに血管の四つ辻が現れたかと思うと、またもや猛然と真樹に突進する。

今度は、『爆発(エクスプローション)』による爆圧の力を推進力に繋げ、あっという間に真樹の面前まで迫ってきた。

真樹は、冷静に両手のククリナイフの刃先を地面に付け、ハオがスライディングさせる足が刃峰に差し掛かるタイミングで、『爆発』を起こす。

ハオの体が宙に上がり、まるでカエルが両手両足を広げたような姿勢で、真樹に覆い被さろうとする。

すかさず、真樹は低い高さで後方宙返りをし、サッカーのオーバーヘッドキックを決める形で、まっすぐに伸びた右足を、ハオの股間の中心に食い込ませた。

ハオは白目を剥き、受け身を取ることもせず、そのまま進行方向の地面に、前面の全部分が接触するように着地した。

ビターン

その時に発生した音は、真樹が以前に付き合っていた男子と別れる時に放ったビンタの音に似ている、と、真樹は思った。

「バカ男を見るのは、もうたくさん。私は、やっぱり天使様が全てのことよ」

長めのホイッスル。

試合終了である。

真樹は、右手の拳を頭上に掲げた。

大歓声が真樹に贈られた。

第一回戦の全勝劇の影響で、『強天使』はたちまち人気チームとなっていた。

今試合のブックメーカーも、真樹の方が優勢で、その人気に応えた形となった。

「『強天使』の強さをどんどんアピールしていくからね」と、梨菜が意気込んだ。

「次はミキミキ」

「きゃはあ」

梨菜の指名に、ミキミキはいつものハロウィンかぼちゃのような笑顔で答える。

「世界の皆さんにミキミキを楽しんでいただくのですわん」

ミキミキが軽い足取りで『接続室(ジョイント・ルーム)』に向かおうとすると、背後から梨菜が「ミキミキ」と呼びかける。

「?」

ミキミキが振り向くと、梨菜が長い両手でガッチリとミキミキを抱きしめた。

「……会長すわん……」

「……負けてもいいから……とにかく無事に帰ってきて……」

梨菜の気持ちを聞いて、ミキミキの両目が『U』の字を逆さにした形になった。

「あいにくですけど」と、ミキミキは口を尖らせた。

「私は、勝って帰ってくるのですわん。きゃはあ。まきねのように」

梨菜が両手を緩めると、ミキミキは振り返りもせずに『接続室』に入っていった。



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