十八
「『WGBG』には、どれくらいのチームが参加するのですか?」と、梨菜が訊ねる。
ゴースワンは、梨菜に向けて、ニッコリと微笑む。
「まず、国内リーグである『GBG』からは、全チーム参加します。我々、B国から二十七チーム、宗 鵬のC国から二十二チームの構成です。そして、招待チームですが……」
そこで、ゴースワンの舌が少し外に出て、上唇を右から左に向けて、ペロリとなめる。
「ウィルヘルム・フィッシャー率いるG国から十一チーム、マギーレインのR国から三チーム、そして、日本からはミス・リナ、あなた方、一チームの参加が予定されています」
「合計六十四チーム……」と、梨菜がつぶやく。
「さすが、計算が早いですな」
ゴースワンが感心する。
「先ほども言いましたが、四つのリーグに、それぞれ十六チームになるように振り分けます。予選リーグは、勝ち抜き戦で優勝を決めます。そして、各リーグを優勝した四チームによる決勝リーグを行います。決勝リーグは、総当たり戦で、勝ち点もしくは、予選リーグを含むバトルポイントの総合計点で、優勝チームを決定します」
「きゃはぁ、それに優勝したら百億円なのですわん」
ミキミキが無邪気にはしゃぐと、ゴースワンの目尻が嬉しそうに下がる。
「予選リーグでも十億円の優勝賞金が支払われます。決勝戦での優勝賞金は、ミキのおっしゃるとおり、百億円です」
「そんなに、たくさんのチームが参加するんですね……」
梨菜が、不安そうに言う。
「ウチからは、たった一チームだけなのに……」
「少数精鋭よ、梨菜ちゃん」
貴代子が、瞳を輝かせて言う。
「一チームに注力しようって、私がホノちゃんに提案したの」
「松川さん……」
「梨菜ちゃんのチームに、『保険』は必要ないわ。ホノちゃんから聴いたわよ。梨菜ちゃん、大型トラックを一瞬でコッパ微塵にしたって」
「それぐらいのことができたからって……」
「それぐらいのことって……そんなことができるヒトは、あなたしかいないわ」
貴代子は、肩をすくめる。
「第三ピリオドが始まります」
ゴースワンの呼びかけで、一同は、ディスプレーに注目する。
フィールドに、アンナ・リリーホワイトとワルタ・ウルフが対峙している姿が映っている。
アンナは、長い銀色の髪を頭の上に螺旋状に巻いたヘアスタイルで、大きな銀色の瞳をキラキラさせた美しい少女。
容姿のイメージに合わせた銀色のビキニタイプの『戦闘服』を着用しているので、白い肌の露出度は高く、ピカピカに光って見える。
「アンナの美しさに、会場もどよめいているようですな。奇しくも、ミス・リナと同年齢。美貌の点でも、お互いヒケをとりません。強さのほどは、これから見せてくれるでしょう。『WGBG』が本当に楽しみですよ」
「アンナとパンナ、きゃはぁ、名前も似てるのですわん」
ミキミキは、嬉しそうに、片足立ちでスピンをしてみせる。
梨菜は、唇をキュッと一文字に結んで、画面に映るアンナの姿を見つめている。
対するワルタは、前戦のドゴールほどの巨体ではないが、長身の筋肉質の体格で、銀製の鎧のようなモノを全身に装着している。
右肩が盛り上がったデザインで、右腕を包む籠手に直径五センチほどの黒い穴が見える。
「ワルタが着用しているのは、鎧型の『光弾砲』ですよ。全身からの『ME』を集め、右腕の発射口から破壊力のある『光弾』を放ちます。こんなモノを使えば、一発で体内の『ME』が枯渇してしまいますが、彼が使えるのは、『蓄積型』を備えているからですよ」
「『蓄積』と『攻撃』の両方を持ってるのですか。器用な構造ですね」
貴代子が感心しているのか、あきれているのか、複雑な笑みを見せる。
「玲人にも使えそう」と、梨菜が、ボソッと言う。
「玲人って……ホノちゃんの?」
貴代子の問いかけに、梨菜は静かにうなずく。
「有利香さんの仕立てです。玲人は、『情報側面』も備えています」
「ウチの研究技術も、なかなかハイブローね。ホノちゃんが言うように、世界最強かも」
貴代子は、ニンマリと笑う。
試合開始のホイッスルが鳴り響く。
アンナは、両足を開き、両手を下に伸ばす姿勢で、全身から発汗させ、『臨界状態』にする。
「あのスタイルは……」と、真樹が声を上げる。
「『天使様』と同じでなくて。全身を『臨界』させてることよ」
ワルタは、砲口をアンナに向け、容赦なく太い『光弾』を発射する。
まるでミサイルのような『光弾』が、まっすぐにアンナを襲う。
アンナは、右手のひらを正面に突き出し、ワルタの『光弾』をまともに受け止める。
「ムチャな!」と、ゴースワンの悲鳴が轟く。
「ワルタは、個人ランキング五位の強者。『意志』の強さだって、半端じゃないはず。それを、片手だけで受け止めるなんて……」
「たぶん、『天使様』があのオジサマの相手をしても、同じことをしたと思うことよ」
真樹が、抑揚なく言う。
梨菜は、苦笑する。
ワルタの二発目が、アンナに向かう。
アンナは、今度は、左手のひらで受け止める。
ワルタは、とどめと言わんばかりに、三発目を発射する。
受け止められる手のひらは、もう無い。
アンナは、両手の『光弾』を自らの『爆発』で押し戻し、向かってくる三発目にぶつける。
ボリュームたっぷりの三発の『光弾』がぶつかり合い、球状の大きな『爆発』と衝撃波を生み出す。
ドーンという雷鳴のような轟音と共に『プチカップゼリードーム』の中が白い輝きと煙で満たされ、二人の姿が全く見えなくなる。
ゴースワンは言葉を失い、ディスプレーに目が釘付けになっている。
やがて、煙が晴れ、ドーム内がうっすらと見えるようになってきた。
キラキラと輝く銀色のプレート。
ワルタの姿が、画面に映った。
対するアンナの姿は……
「アンナは、どこに行ったんだ?」
ゴースワンが興奮ぎみに言う。
「さっきから、同じところにいます」と、梨菜は淡々と答える。
「微動だにしていません」




