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レモンティーン  作者: 守山みかん


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113/137

百十三

《決勝リーグ・第3回戦・第2ピリオド》

強天使(ウルムスリーグ優勝チーム)

矢吹(Yabuki)パンナ(Panna)(女18歳)

(デュアン) 深緑(シェンリュウ)(女19歳)

アド・ブル(Add Bull)(女19歳)

キュア(Cure)凶子(Kyoko)(女30歳)


姫檜扇水仙(クロコスミア)(テルミナリアリーグ優勝チーム)

ダイヤモンド(Diamond)(女18歳)

ルビー(Ruby)(女18歳)

エメラルド(Emerald)(女18歳)

サファイア(Sapphire)(女18歳)


「よろしくお願いします」

『強天使』側から元気な声がドーム内に響き、多くの観客は中継画面越しに拍手を送った。

対して『姫檜扇水仙』側は静かな入場で、どんよりと重苦しい雰囲気に包まれていた。

ところ変わって、オーナー向けの観覧席ロイヤルルームにて。

松川(まつかわ) 貴代子(きよこ)は、同室に招いた仏頂面の水野(みずの) 佳人(よしと)に視線を向けては、何度もプッと吹き出していた。

「今ので4回目です。キヨさん」

水野は下唇を前に出し、まるで駄々をこねる子供のような顔をした。

「だって、こんなにウケる状況で、笑うなって方が無理よ」

喜代子は、容赦なくケラケラ笑った。

「ああ、もう結構ですよ。ボクはピエロ。どんどん笑って下さい」

水野は言って、ソファに埋もれるくらい大きくふんぞり返った。

WGBGにおける犯罪取締は、対象が強暴な『権限者(ギフター)』であることを(かんが)み、派閥主義(セクショナリズム)が顕著な国際警察刑事機構(ICPO)には任せず、各国から熟練の『権限者』を収集し、マトリクス的に構成された特別組織が担うこととされている。

組織名は、『(Inter)(national)権限者(Gifters)取締(Governance)(Organi)(zation)』、通称IGGO。

水野が、その局長を兼務していた。

「ボクは、羽蕗さんに何でも任せっきりにしているのがイヤなんです。元々、WGBG出場にも反対でしたから」

「ヨっちゃんは、梨菜ちゃんの育ての親でしょ。今の梨菜ちゃんの状況は、あなたがきっかけになり、導いたことでもあるのよ。それに、子が親に従わないのは、よくあることよ」

水野は、フウと小さくため息をもらした。

「真っ暗な中で、苦しそうにうずくまっていた羽蕗さんに声をかけたのが、彼女との出会いでした。まだ、4年くらいしか経っていないんですよね。あの頃の羽蕗さんはか細くて、力を入れ過ぎたら折れてしまいそうな感じでした。今の姿からは信じられなくなりましたね。

………できれば、彼女に協力したかったんです。ダイヤモンドは、人間らしい思想を持たない非人です。殺戮マシンと言っても良い」

「非人か………ルチルの戦いぶりでは、人間らしい側面も見えてたんだけどね。(そう) (ほう)は、得体の知れないモノを作り上げたわね」

「そんな得体の知れないモノに、一人で立ち向かわせたくなかったんですけどね」

そこで、またもや喜代子がプッと吹き出した。

「5回目」と、消えかけていた水野の仏頂面が戻ってきた。

「梨菜ちゃんを制御しようなんて無駄、無駄。みんなわかってるのに、ヨっちゃんだけがわかっていない。今のヨっちゃんを、ホノちゃんにも見せたいわ」

水野はムウと唸り声を上げ、それっきり黙りこんでしまった。

闘技開始のホイッスルは、すでに鳴り響いた後で、サファイアがMEを固体化、エメラルドが武器を創成、ダイヤモンドとルビーが前衛(フォワード)を担うという、第1ピリオドと同様の展開から始まった。

想定していた展開に対して、梨菜たちも指を加えて見過ごすはずがなく、アドが雷玉を打ち上げ、創成組の2人に落雷を仕掛けようとする。

打ち上げてから最短で3秒程度で落雷できるが、ルビーがアドに向けて発射した『おべっか(Flatter)』レベルの阻止弾を払いのけるために、落雷が2秒遅れた。

サファイアがエメラルドに固体化した大量のMEを手渡すのに3秒、その後、すぐに頭上に防御壁(バリア)を張り、落雷によるダメージを回避した。

エメラルドがダイヤモンドとルビー用の武器を造形し、二人に手渡すのに3秒。

ダイヤモンドは長剣(ブロードソード)を正面に構え、ルビーは拳鍔(ナックルダスター)を装着し、『強天使』の面々と向き合うまで、闘技開始7秒で完了させた。

「意外とチームワークになっとるやんけ」

梨菜と並んで前衛に位置する段が感想を述べた。

「いいえ」と、梨菜はそれを否定した。

「決まりきった初動手続(イニシャライズ)を行っただけです。チームワークの良し悪しを評価できるものではありません」

「ウチらに攻撃も仕掛けてきおった。敵ながらセンスの良い『予測(プレディク)』やったと思うで」

「それは同感です」

梨菜は言うと、ニヤリと笑みを見せた。

「そつの無い合理的な初動プログラムだったと思いますが、この後、想定できない展開が連続してもなお、あのそつの無さが維持できるかは疑問です。みんなで協力して、本当のチームワークを見せつけてやりましょう」

一同は「はい」と返事をした。

香子は、梨菜との確執に悩まされ続けていたが、ここで挽回せんと気合が入っていた。

そこへ梨菜から「葉島さん」と声がかかり、思わず背筋が伸びた。

「これから、私と段さんで強気の攻撃に出ます。防御(ディフェンス)をお願いします」

梨菜の指示を受け、全身に震えが起きた。

「はい、頑張ります」

一際大きな声が梨菜に届いた。

香子の左頬を一筋の涙が流れ落ちた。

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