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レモンティーン  作者: 守山みかん


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101/136

百一

ここまでの闘技内容を振り返ってみよう、とルチルは、思考を働かせた。

試合上の経過時間は、未だ1分少々だが、こちらは立て続けに3人が討伐された。

バトルポイントは、『強天使』が3人討伐に加えて、ジェダイトの腕を切り落とした認定分の3点。

対して、『姫檜扇水仙クロコスミア』側は、完敗状態のゼロ点。

これを逆転しようものなら、少なくとも3人を討伐し、残り1人に対して、片腕を切り落とすくらいはしないといけない。

もちろん、それを無傷でやってのけて、ギリギリ同点となるのだ。

ルチルは、軽くため息をもらす。

考え方を変えてみよう。

こちらが、どれだけキズついても、相手全員を討伐すれば、当然に勝ちになる。

ルチルは、さっきより深いため息をもらす。

最低限、必要な要件は、右腕を不能にされないことだ。

ダガーナイフによる攻撃手法で、その腕を失ったら、攻撃そのものができなくなる。

ここで、ルチルは、1つの結論を見い出した。

相手方のねらいは、ダガーナイフを持つ右腕を不能にすることだ。

闘技再開に合わせて、相手方は、真っ先に右腕をねらってくるだろう。

それを回避するのが、自分の1つ目の目標だ。

そして、効果的な攻撃を仕掛けること。

これが、2つ目の目標となる。

ルチルは、今までで一番深いため息をもらす。

違和感……

先ほどから(まと)わりついてくる違和感が悪い流れを生んでいるような気がする。

違和感の要因……

おそらく、これは自分自身が生み出しているものではなく、敵側が作り出したものだ。

つまり、攻撃されている状況にあるということだ。

その違和感の大元を駆除しなければ。

長めのホイッスル。

ジェダイトの敗退に係る時間停止が終わり、闘技が再開された。

オイゲンと真樹は、ダッシュでルチルに襲いかかった。

ルチルは、左手に持つラウンドシールドで右手を覆うように構えた。

「読まれてたか……」と、オイゲンは、チッと舌を鳴らす。

二人の攻撃は、頑強な盾によって弾き返された。

すぐさま、ルチルからのカウンター攻撃に備えるため、二人は同時に防御姿勢を取る。

「……うそ……」

真樹がつぶやく声を聞き、オイゲンは、遅れてそのつぶやきの意味を理解した。

盾の向こう側に、ルチルの姿が無いのだ。

気づいた直後に、背後から悲鳴が聞こえた。

振り向けば、そこには右踵からの出血を手で押さえるためにうずくまっているジャッキーの姿があった。

「ジャッキーさん……」

真樹は声をかけるが、ジャッキーは激痛に堪えられない様子で、そのまま前に倒れた。

右踵の出血が著しく、しかもジャッキー自身が『治癒(ヒール)』できない状況に陥っていた。

闘技再開わずか6秒後の停止ホイッスル。

停止後に、盾の向こう側には、いつの間にかルチルが戻っていた。

真樹は、すぐにジャッキーのそばまで走った。

「『治癒』できなくなってるの……」

ジャッキーが苦しそうに伝えた。

「どうやら『権限』が『封印』されているようだ」

と、オイゲンはジャッキーの負傷付近に触れ、身体状況を『走査(SCAN)』しながら言った。

「ほんの一瞬の間に、『封印』を施したようだ。

ウチの社長(ボス)以外に、こんな事ができるヒトがいるとはね」

「封印……」

真樹は、驚きと動揺を隠しきれずにいた。

「とにかく、ジャッキーさんの治療を……」

「ダメよ……真樹ちゃん……」

ジャッキーは、真樹を抑えこむように言った。

「あなたは、まだ闘技中……敗退した私なんかに、貴重なMEを消費しちゃいけないわ」

「でも……でも……」

真樹は、泣きそうな声を上げた。

「ジャッキーさんの治療は、私にまかせて」

闘技停止と同時に入場していたパーシャ(Pasha)ミシュレ(Michelet)が言った。

「パーシャ……」

真樹は、声を詰まらせた。

「『永久凍土(パーマフロスト)』は、『強天使』との対戦終了後に解散したの。

今は、『強天使』への移籍契約が完了し、私も正式に『強天使』のチーム員になったの。

だから、仲間(クルー)を助けるのは、当然の役目よ。

それに、妹のリディアとキーラが負傷した時に、『強天使』のチーム員には、世話になったわ。

そのお返しもしなくちゃね」

パーシャの目は、キラキラと輝いていた。

「まずは、ジャッキーさんに仕掛けられた『封印』を解除しないと。

私には、それができるの」

「『権限』が戻れば、自分で『治癒』できるわ」

と、ジャッキーが続いた。

その直後、パーシャは一瞬にして『封印』の解除を行い、ジャッキーの治療は、あっけなく完了した。

「それぞれ、得意分野があるもんだね」

と、オイゲンは感心していた。

パーシャは、ふふっと笑った後、オイゲンを見つめる目を細めた。

「また、一緒になれたわね」

「はは……」

オイゲンの笑いには、戸惑いが混ざっていた。

「パーシャとは、以前からの知り合いなの?」

と、真樹が、キョトンとした顔をしながら尋ねた。

「ボクが、父親の会社に勤めていた頃の同僚だったんだ」

「真樹さんには話せないこととかもあったわよね」

パーシャは、いたずらっぽく笑って、そう繋げた。

オイゲンが力強く息をのむ音が周囲に響く。

真樹も、いたずらっぽく笑った。

「後で、ゆっくり話を聞かせてね、パーシャ」

「いいですよ」

パーシャは、真樹には、にっこりと屈託のない笑顔を見せた。

「それは良いとして」

と、オイゲンは、オホンと咳ばらいを混じえながら言った。

「闘技が再開されるから、パーシャ、キミは退出してあげないと」

「真樹さん、ミキちゃん、頑張って下さいね」

パーシャと、真樹、ミキミキは、手を触り合って別れた。

ジャッキーは、パーシャの後に続いて、退場した。

負傷箇所は、完全に治癒できている様子だった。

「『封印』の使い手か……」

今度は、オイゲンの方が深いため息をもらした。

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