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カイキ症候群  作者: 夢喰 雪
3/3

~月の影達~【試練編】

「あれ、来たんだ。てっきりこれっきりかと思ったのに、しぶといねーあんた」

「そりゃ、どうも。」

「じゃあ、第2ラウンド、行っちゃう?」

「言われなくても、やるつもりだけど?」

「そう来なくっちゃな!」


黒い剣を振りかざしてくるのを下に避け、相手の懐に潜り込み、突き刺した。


「遅い」

「・・・っ!」


後ろに回られ、挙げ句に首に剣の刃が食い込む。

刃先から垂れたモノが白い床を赤く汚す。

無理か、無理なのか。

考えろ。


「おぅぅらぁ!」


考えている間にも攻撃される。

さっきの攻撃を避けた後、テーブルの影に隠れる。

もう端末は使えない。

さあどうする。

死にたくなくば動け。働け。

テーブルが倒される音が聞こえる。

何かが空を舞った。

スローで捉えたそのモノは撹乱させるのには十分ものだった。


「おわっ!」

「っとった!」


剣先が相手を掠める。

相手が一瞬怯んだ後、空に舞ったそれをとる。

取った後、着地した足を軸にして遠心力を使ってそれを投げた。

見事にそれは命中した。


「っあ。」

「どう、花の入った水の味は?」

「最悪だよ、あーあ、びしょ濡れじゃんか。どうしてくれんの。」

「どうもしなーぁい!」

「おっと。丸腰の相手に普通攻撃するか?」


私の手の中には剣が二本ある。

対して相手は丸腰。

今が絶頂の好機!

今決めないと、こっちがやられる。

攻撃をしていくがひらひらと避けていく。

当たらない。

焦るな。落ち着け。


「今はあんたが有利なのに追い詰められた顔してんな?」

「あんたは余裕なのね。」

「こんな攻撃、当たるわけがない。」

「うわっ、むかつく。」

「そりゃ、どーも。」

「っ!」

「あれ、当たらないんじゃなかったの?」

「__、______」

「何て、言ったの?」

「いいや、何でもねぇよ。」

「あっそ。」


これじゃあ終わる気がしない。

どうしようか。

攻めるのを止め、相手と距離をとる。

剣を持っていない以上、近距離戦は逆に危ない。

後ろをとられたり、物理攻撃に出られて剣を取られたら、圧倒的不利になる。

今のうちに計画を立てないと、やられる!


「あら、もうおしまいか?」

「いいや、おしまいじゃないよ。」

「へぇ、そうかよ!」

「ぁっぶな!」

「その手は放さないのか。」

「誰が放すもんですか!」

「まぁまぁ、そう向きになるなよな。」


ニヤニヤしてこっちに挑発的な目を向けてくる。

多分顔に書いてある通りだろう。


「やるっきゃないな。」

「お、何かいい案思い付いたのか?」

「うん、後は実行するのみ。」

「そうか、そりゃあ楽しめそうだ。」

「でしょ?」


もう死なない。

あの痛み。

音。

死んだときに感じた猛烈な痛み。

もう味わうのは、御免だ。












「会うのは二度目かな?」


満更でもない笑みで迎えてくる。

真っ暗の空間であの子と作戦会議をした。

多分大丈夫だと思う。


「どうしたの、思い詰めた顔をして?」


どうしたもこうしたも、一回負けてんだし気が乗らないのは当たり前。

まあ、勝った本人は嬉しいことこの上ないだろうけど。

端末をそっと撫でる。

さっきから体内の音が鮮明に聞こえる。


「さぁ、始めようか」


さっきの定位置に着く。

銃は何も変わってない。

机には弾丸が2つ綺麗に置かれていた。

それを手に取り、後ろを向く。

拳銃に玉を込め、渡す。

さっきと何ら変わらない。

けど、何か少し、ほんの少しだけ違和感がある。

違和感を見失わないように観察する。


「何じろじろと見てんの?」

「気のせいじゃない?」

「ふーん。」


こめかみに当てて引き金を引く。

発射音は聞こえない。

あっちも同じにみたいだ。

二回目が終わったとき、相手に声を掛けられた。


「ねぇ、こんなつまんないゲーム止めない?」

「えっ?」

「だって、"玉、入れてないんでしょ?"」

「っ!」

「だって銃がさっきよりも軽いんだもん。すぐ気づいた。安心して、こっちも玉なんて入れてないから。」

「何で?」

「何でってこんなすぐ終わるようなゲームを長く続けるにはこの方法しか思い浮かばないんだよ。それとも、貴女にはこの方法以外に、これを続ける方法があって言うの?」

「私は早く終わらせたい。」

「私は違うんだよねー。このゲーム案外楽しいからさ。長く続けていたいんだよね。」


このゲームが楽しい?

訳が分からない。


「訳分かんないって顔してるね。まぁ、あんたには分からないことだよ。さぁ、続けよ?楽しい楽しい殺戮ゲームを!」


あっちは楽しいのか、そうかそうか。

じゃあ、私はこのゲームを速効で終わらせてやる。

ニターン目になって玉を込めた。

さぁ、勝負だ。もう一人の私。












「また来たの、懲りないね?」

「今回はあんたに勝ちに来た。」

「そう、頑張ってね。」


そう言って端末をさっきのライフルに変換させる。

隠れる時間は30秒

あの子は着信の最後こう言った。


『焦ったらその時点で負けるよ。』


っと。


どうしようか、右から左へ思考が流れていく。

あれも違う。

これも違う。

あ、待って。ここかもしれない。

ライフルを握る手が一つ一つ強くなる。

安全装置がなかったらもう床に向け打ってるだろう。


《アナタノバンデス。コウゲキをカイシシテクダサイ。》


爪が歯と擦れ、ギリッと音をたてる。

何処だ・・・。

もういいや、何処にでも当たってしまえ!

さっき隠れてた大型のぬいぐるみの左胸部分を打つ。

ボスッと音をたてたが当たった感触はない。

外した。


「外れたね。」


ロッカーを勢いよく蹴り開ける。

其処に居たのね。


「あんたって本当分かりやすいよね。」

「そうか?」


怒りを押さえ込み、冷静に振る舞う。

もう、仕掛けるか。

ふと、相手がいきなり横に立つ。


「ねぇ、隠れなよ。早くさ?」

「そうだね、隠れようかな。」

「行ってらっしゃい、精々頑張ってね。」

「うん、そうする。」


手札は揃った。

さぁ、分かるかな、このトリックが。












「楽しませてくれるん、だったっけ?」

「そうだねー。その前に少し仕込みをさせてくれないかな?後ろに向いてくれない?」

「喜んで。」


そう言って屈託のない笑顔を浮かべて後ろを向く。

椅子の下にあるものを持ってくる。

スマホに巻き付けていたモノを確認する。

予想以上。

元に戻すと声をかける。


「早かったね。」

「さぁ、始めようか。」


機械が六つのカードを配り終える。

チラッとカードを確認する。

それを即座に伏せた。


「何もしないの?」

「うん、何もしない、ホールドで。」

「んーじゃあ二枚ドローかな?」


二枚を機械にセットすると違う二枚を机の上に滑らせた。

二枚を取ると上々、と声を漏らした。


《ソレデハカードをカイジシテクダサイ》


一戦目

ワンペアとフルハウス


「勝った。」

「あーあ、負けちゃった。じゃあ、次行こうか」

「何であんたはそんなに余裕な訳?」

「さぁ、何ででしょうね?それよりも今を楽しみましょう、ね?」












「本当この時間が終わるとなると悲しいね。」

「だね。」


後一発私達が死んでないって事は弾丸は一発しか込めてなかった。

そう言うことになる。

実際のところ私も一発しか込めて無い。


これで全てが終わる。


「はあぁ、終わりならさ、こんな地味なゲーム、ぱあって派手にやらない?」

「どういう事?」

「一緒に相手の頭をぶち抜くの、楽しいでしょ?」

「それって、裏切れば。」

「まあ、どっちかが生き残るよね?」


一歩ずつ近付き、蟀谷に銃身を置く。

私の蟀谷にも同じ様にかかっていた。


「最後に言い残すことは?」

「ない」

「私はあるよ。今まで有り難う、楽しかったよ?」


お互いに引き金を引く。

二つの銃声が鳴り響く。


「私の勝ちだったようね?」

「・・・かはっ。」


私が立っていた。

何故かあの子は銃身を打つ直後に数㎝銃口をずらした。

それを見逃すわけもなく、打った。

赤く染まった水溜まりは広がり、侵食し、私の靴の一部も赤く染め上げてしまった。

でも私はこの子がずらした理由が分かってしまった。

でも、その理由はなんとも歯がゆく、結局手の平で転がされていたのかと悔しく思った。


どうするんだろうと少し部屋を徘徊していやっぱりやるんじゃなかった。

人を間接的にも殺めてしまった感は拭えない。


「っあ!」


突然視界が反転する。

どうやら、落ちていた銃を踏んでしまったようだ。

バランスがとれずそのまま壁に激突する。



「えっ、あっ。」


真っ逆さまに暗闇に吸い込まれていった。












「うぐっ・・・」

「さっきまでの威勢はどうしたんだよ。後、これは返して貰うよ。」


壁に叩きつけられて持っていた剣が手から離れた。

手が痺れているので暫くは使い物にならなそうだ。

取り合えず距離を取ろうと壁沿いに走ると何かに脚を引っ掻け転んだ。

仰向けになったところで首擦れ擦れに剣を突き立てられた。

腹部に足が置かれているので動こうにも動けなかった。


「楽しかった、もうこれで終わりになるなんてな。」

「・・・」

「黙りか。それとも最期は格好良く逝きたいのか?」

「あはは・・・私諦めたなんて一言も言ってないけど?」

「この状況で、か?」


相手の顔に三日月が浮かぶ。

目は星よりも眩く光っていた。

何かをしてくる。

そんな確信があるように。

その願い、叶えてあげようじゃない。


"パァン"


一発の銃声が鳴り響く。

時間差で相手の顔に赤く鋭い線を描いた。


「銃は此処では禁止じゃあ無いのか?」

「そうなの、そんなの知らなかったよ。」

「たっく、審判役は何やってんだよ。」


一台の機械に目を向けた。

しかし、それは壊れたように同じ言葉を何度も繰り返していた。


《理解不能、理解不能・・・》


その四文字が。


「私が入って来た時にはもうこうなってた。と言うことは、こう言うことは初めてなんじゃない?」

「・・・ふふふ、あはっ。全くだ、こんな事は初めてだよ。人間はすぐ仲間を犠牲にしてまで自分を助けようとする。真逆、人を助けようとするなんてな、あはは・・・」

「っで、どうする?このまま打たれる?それとも私達を纏めて相手する?二つに一つ。どっちか選んで?」

「まだ、お前は自分達が優勢だと思ってんのか?」

「どういう事?」

「こう言うことだ。」

「っ!」

「綾野!」


相手は素早く綾野の後ろに回り右手を後ろに回し、締め上げた。

力一杯に持っていた拳銃は音をたて、落ちた。


「・・・いっつ。」

「さあ、どうする?尻尾を巻いて逃げ出すか、私ごと刺すか、二つに一つ、なんだろ?」

「美桜、逃げて、早く!」


どうする、友達を守る手立ては無いのか?

このまま急所刺せば相手は事切れるがそれは綾野も同じ。

だけど、このまま見逃して私だけ逃げれば今後綾野達に顔向けできない。

距離を取りながら相手の様子を伺う。

近くに落ちてあった剣に手を滑らせた。

途中、何かに当たった感覚がした。。

相手に行動を悟られないように横目でそれを見る。

砂嵐が混じった選択画面だ。

幸いにも相手は見えてない様だった。

ゆっくりとスクロールするふと目には言った。

それは今の状況を打破するのには完璧な物だった。

それを押すが変化はない。

バグだったか?

それとも。

まあ試してみるしかない。

持ち手を取り、相手に構える。


「私とこの子を手にかけることに決めたのか?いいよ、殺れよ。」


そいつは微動だにしない。

剣をもって徐々に駆け出す。

綾野と擦れ会う時、一言呟いた。


「目と耳塞いで。」


思いっきり剣を降り下ろす。

途端、とてつもなく高い音と光が当たりを包む。

相手の手が緩んだとき、綾野の手を掴み、物陰に隠れた。


「綾野、その銃貸して。」

「いいよ。」


すんなり貸してくれたその銃をなぞる。

が、変化はなかった。

腕を見るが端末はない。


「ねえ、端末は?」

「ああ、弾丸に使った、けどどうしたの?」


急いで弾丸を取り出した。

探っているといきなり横の綾野が押した。

倒れ混むと、間にはあの剣が。


「さっきはよくもやってくれたなあ。何か隠してると思ってたが・・・あんな芸当どうしたんだ?」

「あんたに教えるものじゃない。」

「そんなナイフを突き出してどう戦うんだ?うおっ」

「綾野!」

「今のうちに、ね?」

「有り難う。」


そして、それを心臓に突き立てた。


「本当、お前らにはつくづく・・・」


最後の言葉を言わずに、倒れた。

赤黒い物が広がる光景を見て蒸せ返った。

綾野はそれには目もくれず、壁を探っていた。

それにならって私も壁を探る。


「うわっ、何これ!」


一部だけ手が飲み込まれる所があった。

急いで綾野を呼ぶ。

綾野によればこの部屋には一部だけ他の場所に行けるところがあるらしい。

ここに来たのも偶然そこを見つけて落ちたらここにいた。

そう言うことらしい。

手を繋いで足を踏み込んで一気に飛ぶ。

下は真っ黒。

少し怖いが下に進むしか打開策はないようだ。。












《ツギハアナタノバンです。》


落ち着いて辺りを見回す。

やっとここまで来た。

長いようで短い10ゲーム目。

此所で何とか終わらせたいな、何て思っている。

まあ、どうでもいいか。

いや、どうでも良くはないんだけど。

多分、このゲームで勝てる。

何故ならこれはここまで持ち込むのが最低条件だったから。

ゲージが貯まると大技出せて一発逆転。

そういう展開が私にもあっていいと思うんだけど、神様は許してくれるだろうか?

いや、神様じゃなく実力で行く。

見えない存在を信じるのは私の体じゃない。

やるっきゃない。


手の中の銃が砂になって落ちる。

それを掬い上げるとそれがスイッチに変化する。

これで、


「終わりだ。」


映画さながらの爆発音が鳴り響いた。

耳を塞いでいないと鼓膜がやられそうだった。

頬が何故か火照っていた。

部屋の家具が一つずつ煙を上げていく。

それを見届けながら、ニヤリと笑う。

次々と上がっていく火の手に思わず声を漏らした。


「勝った」

「何が?」


さっき声が。

嘘だ、こんな爆発の中生き残っているはずが。

後頭部がやけに冷たい。

銃口が突き付けられている所が特に。

声の出し方を忘れたのか中々声が出てこない。


「あ・・・ぁ、」

「驚いてくれた?とっても嬉しいよ。まさかこんなにも喜んでくれるなんて。」

「っ、あ・・・な、」


ゆっくりと。

嬲るように、


"カチッ"


ああ、やばい、これはやばい。


"カタン"


これは、勝てないや。


"パァン"


これは、死んだな。


瞬間的に目を固く閉じた。

もう勝ち目はない。

なら、傷みやなんやらかんやらはもう目を閉じることでシャットアウトしよう。

それが正解かわからないけど。

ああ、負けちゃったのか、もう。


「諦めよう何て思ってないよね、真弥華?」


わたし、しんでない。

何が何だか分からないままゆっくりと後ろを向く。

そこには、手を上に掲げて止まっている相手、その手首をがっちり掴む綾野、その首元に刃先を向ける美桜が。


「な・・・え?」

「混乱してる、って顔だね。まあ、私の隣の子も同じ見たいだけど。」

「わたしの計算は・・・間違ってなか・・・」

「間に合って良かった。さあて、お相手さん?3対1ととっても不利な状況になってるけどどうする?まだ足掻きたい?それとも、」


刃先を食い込ませる。

プツッと音がして赤いラインを引いていく。


「・・・・・・・・な」

「ん?」

「調子に、乗るなぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァ!」

「あっちゃー壊れたな、これ。うおっ!」


一心不乱に相手は挑発相手の美桜に向かって剣を振る。

何故か美桜には当たっておらず、余裕そうだった。

それを何が起こっているか分かっているようで分かってないどこか纏まっていないそんな地に足つかない状態でいると、耳から声が流れてきた。

まだ思考がまとまってない状態の脳が突然はっきりする。

その突拍子のない意見に思考は一瞬考えることを忘れた。


「凄いぶっ飛んだ意見だよね。分かるよ。でも文句はその発案者に言って。

でも、これが最善策なんだ。誰も居なくならない戦いかた。」

「そんなこと出来るって言うの?」

「やってみたら分かるよ。」


言われた通り指でスイッチをなぞる。

すると、スイッチの上に【push】と言う文字盤がうっすら出ていた。

その通りにして見る。

あれ、以外と出来た。

スクロールしてその一つを選択する。


「で、これをどうするの?」

「投げる。」

「分かった。」

「美桜そっち行くよ。」


それを見て動き出したと同時に相手に投げる。

当たった瞬間、それが爆発した。


「本当に出来た。」

「ほら、次行くよ。」

「次って?」

「何言ってんの?奈々見助けに行くよ。」

「へ?」


そんなこと出来んの?












「ねえ、これってわたしの独り言なんだけど、『最後にディスラクティブ トランプが私に回るようにしてんのかなー』なんて」

「どうして、そう思ったの?」

「んー、勘?」

「何よそれ。」

「あはは、御免ね。でも一つだけ確信してることがあるんだ。」

「何かな?」

「だって"この世界って機械で支配されてるんでしょ?"」


カードを出す手が一瞬だけ止まる。

ビンゴだったようだ。


「何を言ってるの?」

「前さ私確かめたいことがあるって言ったよね?」

「確かに言った。けどそれがどうしたの?」


そう言いながら全てセットする。

五枚カードが滑って戻ってきた。

そのカードを確認。

またカードを伏せて頰杖をつく。


「ねえ、間違え捜ししてみてよ。」

「・・・時計がない。さっきから気づいてたよ。どうせ、何かの細工に使ったのかなってスルーしてたけど。」

「この端末に数字が書いてあるんだよね。そっちにある、右上端なんだけど。」

「いいえ、ないけど。」

「そっか、だからわからなかったんだ。この数字、死んだ数なの。」

「ふぅん、でもそれを伝えたところで今のゲームに関係無いんじゃない?そろそろオープンしない?」

「そうだね。」


《ソレデハカードヲカイジシテクダサイ。》


四戦目

ワンペアとロイヤルフラッシュ


「・・・な!」

「人の話は最後まで聞いておくべきだよー。」

「何をした‼」

「そう声を荒らげないで。今から説明するから。さっき数字が死んだ数ってことは言ったよね?後、機械で支配されてる世界だって事も。だから確認したいことがあった。それが成功したわけだ。」

「は?」

「この端末、人の体温と心拍数で生きてるかそうでないかを判断してるんじゃないかって思ってね。ちょうどそういうツールもあったし。だからさスマホにこの端末を巻き付けてあのターンわざと負けるように仕向けた。」

「あれは私の策略で勝ったの。本当負け犬の遠吠えって奴かな?」

「だから最後まで聞きなって。でね此処からが本題。心拍数と体温で判断してたこの端末、心拍数の動画を流し尚且それをループ再生で流していたら、さてどうなると思う?」


その瞬間、相手から笑みがスッと消えた。

その次現れたのは恨みやらそう言う負の感情を表した顔だった。

私は端末を見えるように見せる。

その数字は【0】


「つまり私は死んでないことになってんだよねー。」

「そんなこと、あり得る訳・・・」

「普通はね?でもこの世界は特殊だ。機械で支配されてるから当然バグも生じるわけ、それでさ此処であなたに問題なんだけど、"ひとつエラーが出るとその回線はどうなると思う?"」

「その回線全ての・・機械が、正常に機能できなくなる。」


辿々しく認めたくないと言うか思いを噛み締めながら吐いた言葉に口角を上げる。


「だいせーかーい。だからさあり得ないことも起こっちゃうんだよね?」

「ふざけるな!いいよ、この機械ができないなら私がやってやる!此処でお前は死ぬ。」


私に向けて銃を向ける。カタカタと震えているが、まあ、仕方がないんだろうな。

そう思って紅茶を一啜りする。

待ちくたびれたよ、本当。


「だぁかぁらぁ、話聞けっての。これ、何回目?」

「いつのまに?」

「あり得ないことも起こっちゃうって言ったでしょ?」


後ろにあの三人が控えていた。

ネタを詳らかに話している途中に壁からぬるっと出てきたのは凄くビックリした。

けど同時に無事で良かったと言う安堵が心の中で沸き起こった。

相手は震えているが全てを終わらしてあげようか。


「じゃあ、ばいばい。」


そう言って、引き金を引いた。











「んぅ・・・ここは。」

「大丈夫ですか、先生呼んできますね‼」


そう言って、揺らいだ意識のなか人が駆け出す音が聞こえた。

白い天井。

白いカーテン。


ここは、


「保健室?」

「大丈夫だった?いきなり倒れるから驚いたよ。立てる?」

「は・・・い。」


横を見るとさっきまで使われた痕跡があった。


「誰か、居たんですか?」

「あぁ、うん。君が倒れた後、三人バタバタと倒れたんだよね。今から一時間前、だったかな?」


あれ、もうちょっとかかってるかと思った。



今日は帰りなさいと促された。

どう帰ったかは覚えてない。

でも、夢のはずなのにあの光景を鮮明に覚えていた。












今日二度目の夢を見た。

真っ黒い空間に私が佇んでいる。

寝間着は夏の制服に変わっていた。

どこに向かおうにも今何処に居るかも分からない。

でもただ一つ直感的に『なにかが起こる』

それだけは分かった。

闇雲に歩いても埒が明かない。

座ろうかと腰を下ろそうとした時危機感を感じて其処から立ち退く。


「無駄だよ。」

「・・・っ!」


が、既に腕を捕まれ、首に回されたもう一つの手の中にはナイフが握られそれを当てられていた。


「本当やってくれたね。何もかも真逆"誰も殺さずに"出るなんてね、驚いたよ。それを指示したのは君なのかな?」

「嫌、私は何も指示してないよ。皆の意見だ。」

「いつから殺さなくても出れるって気がついたの?」

「ルールを見て。皆それに気づいてた、私だけじゃない。」


そう、このゲームで誰も殺してない。

ここには幾つかのバグがあった。

一つは殺さなくても出られること。

一つは機械が支配している世界であるが故に、心拍数が停止及び血液だと思われる物が致死量以上流れている、相手が動いてない状態でゲームクリアとなる。

だから長時間気絶させてるように仕組んだと同時に血糊が出る仕組みにすれば簡単に騙せてしまう。

綾野は体に麻酔銃を、美桜は麻酔針が内蔵されたビックリナイフ、真弥華は強力な閃光と死なない程度の爆発がする爆弾、後でこうさくしたけど・・・

後一つ、それは



「ゲームオーバーになった際、連絡は一回だけだが人数は問わないこと、じゃない?」

「やっぱり気付いたんだ。同時に複数人からかかってきた場合それは『一回』だと見なされてしまう。機械だけに頼ると碌な事無いよ?今度から気を付けた方がいいんじゃない?」

「そんなの知ったこっちゃない。私は唯あそこに呼ばれてゲームしろって言われただけ。生き残ったら私の願いを叶えてくれるって言われただけ。」

「えっ・・・じゃあ、貴方達が主催じゃなかった訳?!」

「私は『ドッペンゲンガー』今はその功績も忘れ去られたただの影。皆既月食のあったあの日、誰かに言われたの【貴方の願い叶えてあげる】ってね。」

「そいつは何者?」

「分からない、姿は見えなかったから。・・・だけど、こ」

《お喋りは其処までよ。役立たずのドッペンゲンガー?》


突然聞こえたその声に彼奴の声は制止された。

訳も分からず辺りを見回していると後ろから強い力で押される。

転ける寸前で踏みとどまり振り向いた。

見ると、彼奴の足首に黒いものが巻き付いて地面に引き摺りこもうとしている最中らしく踝位まで埋まっていた。


「何やって」

「走れ!」


今まで冷静だった彼奴の喉から焦りと恐怖に染まった声が出た。

彼奴はズブズブと地面に吸い込まれていく。


「君達と会えて良かったよ。貴方達見たいな変で突拍子もない行動する奴初めてだったからね。本当他人のために自分犠牲にするってどんなけお人好しで馬鹿なんだよ」


あはは、と力なく笑う。

もう体は半分埋まっていた。

はぁーお人好しで馬鹿って言ってくれるじゃん。

その言葉を聞いてからだが動くのにそう時間はかからなかった。


「何してんだよ!君も飲み込まれるのに早く逃げろよ!」

「あんたが言ったんだろ、『馬鹿でお人好し』って。あんたが巻いた種だきっちり回収してもらうよ!」


私を引き摺りこんでいい対象と見たのか一気に重力がかかる感覚がして勢いよく沈んでいく。

離せだなんだと吠えているが私には何の効果もない。

聞こえてないし。

一刻一刻と時間が迫る。

さてと、どうしようか。

ポケットの中身を漁るとダイヤ型のペンダントが出てきた。

一か八か、か。

それに息を吹き掛けると体にかかった重力が一気に抜け水っぽいどろどろとした感触はなくなった。

手を掴んでいる腕にそのペンダントを巻き付けた。

すると、彼奴の体が浮かび上がってきた。

急いで引っ張り上げると、対象を探すように灰色の手がうようよと空をかき混ぜていた。


「助かったのか?」

「だから言ったでしょ。回収してもらうよ、って。これあげるから走って。さっさとここ出るよ、えっと・・・カイ」

「え、どう、はっ?」

「だからあんたの名前。自分の名前連呼するの恥ずかしいし、簡易的な名前。まあ、いいよね。多分ここ出たらバラバラになるんだし。」


そう言って走った。

何か混乱してるカイ(仮)は引いている引き摺られそうになりながらも着いてきていた。

やっぱり手は追ってくる。

壁づたいに走り回りながら出口を手探りで探す。

途中柔らかい所があったので其処で立ち止まる。

手はすぐそこまで迫っていた。


「飛ぶよ。」

「嫌、私は此処で」

「何言ってんの?!さっさと行くよ、せいの!」


飛び降りた後、眩しくて目が開けられなかった。












「おはよー。」

「おはー。」

「おはよう。」

「おは。」


四人はいつも通り学校に来ていた。

朝になると痣も彼奴も消えていた。

あの人物の謎とペンダントは残ったままだ。


「それにしても大変だったね。この三日間。」

「本当お疲れ、よく頑張ったよ自分。」

「昨日何かドンパチした子とあった。」

「私も!それで助けたら消えてた。」

「変だったよね。」


やっぱり皆その夢を見ていたらしく、シナリオも私と大差なかった。

本当何だったんだろな。

そう思考を働かせてるうちに部活が終わって家に着いていた。


「はぁ、疲れた‼」


部屋に入るとさっき黒いものが横切ったような気がして目が一瞬にして覚める。

警戒しながら入ると、扉が独りでに閉まった。

おいおい、またなんかいんのかよ!

回りを確認して何もいないとベットの上に座った。


「わぁ!」

「うわぁ!」


途端に後ろから大声を出され即座に立ち上がった。

振り返ると、あのドッペルの姿があった。


「何であんたが此処に居る!」

「はぁ、やだなー、君がやったんじゃん。」

「は?」

「え、君マニアックな知識知ってる癖にこう言うことは知らないの?あのね、人外に物と名前あげたら契約って言うものが成立しちゃって君から離れられなくなるの。」

「何、その厨二拗らした内容は。と言うかそれ本当だったの?てっきりアニメの事だと思ってた。」

「残念ながら現実だよー。アニメだって言うけどあれほとんど現実にあるもの使ってるからねー。アニメだからって馬鹿にしちゃダメだよ。と言うことで、君達にはまたお世話になるね。よろしく、奈々見。」

「え、待って君達って・・・」

「あのお三人さんもほぼ同じことしてるから漏れなく厨二の仲間入りだねー。おめでとー!ふふふ、皆同じ反応するねー面白いや。」

「え、ちょい待て、皆の反応見えてんの?」


そう言うと、何当然言ってんだこいつ見たいな顔された。

嫌、こっちの台詞だよ、本当。


私の日常は途端に非日常に変わり果ててしまった。

困り果てていると、突然携帯に着信が入る。

友達からで、着信ボタンをスライドさせ耳に当てる。


「はい、な」

「タスケテ」


その言葉を残してプツリと切れた。

最後までこの作品を見てくださり有り難うございます。

需要と気力があればまた書こうかなと思うので次回がある予定にしています。一応。

そろそろ私はこれで失礼させて頂きます。

それではまた何処かで。


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