~月の影達~【人々の足掻き編】
「ここ・・・何処だよ・・」
[ヨウコソ、ナナミさん。サッソクゲームのセツメイヲサセテイタダキマス。]
「ここ何処なんだよ?」
[マズメノマエノヘヤニハイッテイタダキマス。ソコで_____]
「あらかじめ録音されてた声か。声を加工してるだけかと思ってた。」
[continueハサンカイマデトサセテイタダキマス。モシサンカイマデでカテナカッタバアイアナタハシニマス。ソレデハマエヘオススミクダサイ。]
いつの間にかあったドアの上にあった赤いランプが緑色に光る。
ルールは3つ
・部屋から出ないこと
・リタイアしないこと
・continueは三回まで
ルールを守らないと・・・
後は中に入らないと分からない。
美桜達もここに居るんだろうか?
もし居るならうまくやってくれているといいけど。
扉を開ける。
何としてでも勝たなきゃ駄目だ。
「奈々見達、上手くやってるかな。こっちは本当に驚いてるよ。」
中に入って見ると、私瓜二つの人間が立っていた。
ひとつ伸びをすると、溜め息をついた。
「来るの遅かったねー。ちゃんと説明書き難し過ぎて棒立ちしてた?それともこの事実に衝撃過ぎて?」
「どっちでもない。貴方誰?」
「私は貴方。貴方は私。そう言えば、いいのかなー。」
そう言って、一寸笑みを見せる。
まぁ作り笑いに決まってるけど。
「で、私は何をすればいい?何をすればここから出してもらえるの?」
「一寸、質問攻めはよしてよー。いっぺんに答えるのには無理があるってばー。」
そう言って、手を横に振る。
その顔は余裕そうな笑みが浮かんでいた。
「1つ目の質問はバトルロイヤル。只し、飛び道具は無しのね。二つ目は、自分の武器で相手を殺せばいい。武器は、君が腕につけてる電子端末で選択。即座に変換して君の武器になるよ。でも、1ゲーム変換は一回まで。ルールはOK?それじゃあ、」
これがしたから聞こえ、即座に後ろに避ける。
首に少しかすり傷がつく。
「あー、何で動いたの?!折角、死を意識しないように殺してあげようと思ったのに。」
「そんなに簡単に死んでたまるか。」
「そう・・・残念。じゃあ、精々苦しみながら死になよ。」
「死ぬのはお前だ。」
「さぁ、始めよっか。」
今自分の前には、テーブルに置かれた一つの黒く鈍く光る回転式拳銃と2つの弾薬。
このゲームのルールはこうだ。
お互い後ろを向いて二つの弾薬を6つの弾倉の何処かに詰める。
それを相手に渡し、1ターンずつ頭に向け引き金を引いていく。
撃たれた方の負け。
何かの工作をしたり詰めている間に人の詰めている場所を確認したりすれば、不戦勝。
ゲームオーバーになるらしい。
前の私はニヤニヤと私を見下すように笑っていた。
後ろで打ってた美桜の場所から大きな物音がして、振り向いたら、ここにいた。
何がどうなってるか分からないが、これを断れば死ぬらしいから後戻りは出来ない。
真弥華はまだいたから大丈夫だろうけど、奈々見の姿が見当たらなかった。
取りあえず、後ろを向いて何処に詰めるか考えないと。
下手な真似はしてこないだろうけど・・・
いまいち信用できない。
取りあえず上から数えて2番目と5番目にするか。
「準備、出来た?」
「出来た。」
「私も。じゃあお互い前向いて渡そうか。」
「分かった。」
とは、言ってみたが嫌な予感がする。
横目で確認すると、もう相手は私の方を向いていた。
私も前を向いて、拳銃を渡した。
「ほら、やるよ。」
「・・・」
なに考えてるか分からない。
微笑んだ相手を睨んだ。
名目はかくれんぼ。
このシックな部屋の中に隠れる
子供でも知ってる子供遊びだ。
しかし本題はこの後だった。
隠れてると思わしき場所に自分の武器で攻撃していく。
それで攻撃されて死んだものの負け。
とても平和的なゲームからとても残酷で非道なゲームと早変りした瞬間だ。
ここがどこだか分からない。
美桜、綾野の姿が忽然と消え、皆呆然となった後、急いで自分達の部室に奈々見が心配になり駆け込んだ。
木製の引戸を開けて、気がついたら・・・
なにも整理がついてない中、こんな非道なゲームをしろというのか。
「なに考えてんの?」
「何でもない。」
「ふーん、そう。じゃあ、さっさと始めよ。君が先攻。私が後攻。それでいい?」
「いいよ。」
「じゃあ、どうぞ。」
相手の数える声が聞こえる。
因みに制限時間は30秒。
生きるか、死ぬか。
それは始まってみないと分からないようだ。
「いらっしゃい。来ると思ってたよ。」
そう言って、カップに入ったお茶を啜った。
香り的に紅茶だろう。
「どうしたの、座らないの?」
「いいえ、座りますよ。」
目の前にいる自分。
゛ドッペルゲンガー゛
三日以内に死ぬといい、どうもその都市伝説と酷似しているような気がしてならなかった。
汚れひとつない白いテーブル、横幅は人が両手を伸ばしたぐらい。
其処にカードが伏せてトランプが置かれていた。
お洒落な白い椅子に座り、相手に問うた。
「ここは何処です?」
「そうだねー。ここは君達の世界、嫌、次元とは、違う世界。まあ、簡単に言うと異世界。そんなとこかな。」
「OK。で、ゲーム内容は?」
「リバーサルポーカー。日本語訳では【逆転ポーカー】やり方は普通のポーカーと変わらないよ。だけどね、一つだけ違う点がある。」
そう言って四つのjokerを私の前に滑らせた。
「本当はロイヤルストレートフラッシュが最強なんだけど、一つだけそいつに勝つ手だてがある。それがこれ、《ディスラクティブ トランプ》通称:破壊の切り札。joker4つとスペードAの組み合わせ。これは相手がロイヤルストレートフラッシュを出さないと自分は敗北。そこで終了。まあ、当たり前よね。」
「ツーペア扱いにはならないわけね」
「そうだよ。元々愚者、jokerは人間以下の扱いをされながらも貴族に買われ、社会に縛られずに一定の影響力を持ちえた「宮廷道化師」が元だと言われてるのよ?そんなjokerは王様の前でしか力を発揮できない、そう言うわけ。」
「へぇ、そうなの。」
「敬語、無くなったね。」
「あんたに使わなくてもいいって判断したので。」
「怖い顔。まぁ、それもそれでいいのだけどね。」
配られた手札をじっと見つめる。
なにか不吉な予感がしなくもなかった。
「うっ・・・・」
「あれぇ?さっきまでの威勢はどこ行ったのかな!」
金属が混じり会う音が響いた。
冷や汗をかいて所々傷がある美桜に対し、涼しい顔で剣を振るっていく瓜二つの相手。
勝敗は目に見えていた。
美桜は守るのに必死だった。
何せ今まで剣は愚か人を傷つけるもの一つ持ったことないのだ。
一方、相手は剣などを振るったことがあるのだろう。
的確に急所を付いてこようとしている。
美桜はそれを防ぐのに必死だった。
「焦った姿、それも一興。本当、人間って何もかもコロコロ変わるから面白いよねー。」
口を動かしながら手も動かす。
本当この時ぐらい手を止めてくれたっていいのに。
「本当、嫌な人。」
「へぇ、私、人間だって思われてんだ。そっかー、君にはそう見えてるんだね。」
「え。」
その時、少しだけ隙が出来た。
それを狙ってたのか、そこを相手は付いてきた。
剣が肉を貫通する音と感覚が伝わってきた。
視界が幕を閉じていく。
暗くなる視界の中、相手はニヤリと笑っていた。
「・・・はぁ。」
リボルバーを回して引き金を引き、安堵の息をつく。
その繰り返しだ。
今は二回目。
残りは後四回。
引き金を引くときに一層心臓が五月蝿くなる。
こんなゲーム今すぐ逃げ出したいけど、止めて待っているのは真っ暗闇。
まだこの首の皮1枚辛うじて繋がっているゲームをしている方がまだ生きている感じがしてまだましだと思ってしまう私はすでに狂いかけている。
引き金を引く度、重くなる。
撃鉄と言われる所を引き起こす。
後は引き金を引くだけ。
震えてる手を押さえて徐々に引いていく。
ああ、この瞬間が一番嫌い。
どんどん死期に近づいている感じがする。
後もう少し、後もう少し。
そのとき、拳銃の弾丸が発射される音が。
「貴方の負けね。__________」
最後はよく聞こえなかった。
何が言いたかったのか。分からない。
思考が停止したのは倒れた直前だった。
《ツギハアナタノバンデス。》
無機質な機械音が部屋に響く。
五月蝿い。
自分が何故こんなことに巻き込まれたのか。
その答えにはまだたどり着いてない。
と言うか、もう半分諦めてしまっている。
どうせ、その事を考えたって今の現実には関係ない。
でしょ?
ロッカーに弾丸を一発放つ。
私の武器はスナイパーライフルM82A1M
上半身なら弾丸一発で吹っ飛んでしまうほどの代物らしい。
ロッカーに風穴一つ空いただけで何もない。
外した。
「ここだよ。」
人なんて軽く入ってしまいそうなぬいぐるみの頭を持ち上げて言った。
打とうとしたがすでにロックがかかっていた。
「私を打とうとしたんでしょ?無理だよ。ターンが終われば自動でロックが掛かるようになってるから。」
冷静に人を分析した後、微笑んだ。
その笑みがひどく私を苛つかせた。
あ、また笑った。
「ひどく滑稽だったから、面白くって。」
「っ!」
《ツギハアイテノバンデス》
無機質な機械音。
ああ、苛つく。
この機械音も、馬鹿にしたような笑みも、この部屋も。
全部、全部全部全部全部!
「ほら早く隠れないと。」
「分かってるよ。」
とりあえず、隠れる場所を探す。
相手に見つからない場所。
・・・みーつけた。
「・・・29、30。もういいかい」
「ヒッ!」
「やっぱり其処だったんだ。」
もう1㎝ずれてたらレイピアの刃が右腕を貫通していた。
何でこんな早くに!
「苛々してる人程、手の中で操りやすい。」
「何で、ここが!」
「教えるわけないでしょ?じゃあ、後二回、頑張ってね。」
「・・・うぁっ。」
何で勝てないんだよ。
「貴女、中々強いんだね。影で見てきたけどそうでもないかと思ってた。」
「成績だけで上下判断してると足元救われるよ。」
こいつの思考が読めない。
ただ余裕そうにカードを中心に出す。
一戦目はツーペアとワンペアで私の勝ち
二戦目はフルハウスとフォアカードで私の負け。
三戦目はフラッシュとストレートで私の勝ち。
今のペアはjoker二つとスペードのAと10と9
10と9をドローして来たのは幸か不幸かjoker二枚。
晴れてディスラクティブ トランプの完成だ
最弱で最強のカード。
一か八か。
相手は何かを企んでるのは分かるんだけど。
何を企んでるんだ?
さっぱりだ。
でも私にもやってみたいことが出来たかもしれない。
「何をしてるの?」
「一寸試したいことがある。」
「何?」
「いや、まだ確信が持ててない。だから貴女にもまだ言わないよ。さぁ、ゲーム再開しよ。」
「何か仕掛けをしたからには楽しませてくれるのよね?」
「うん。成功したら飛びっきりのサプライズ、用意してあげる。」
「楽しみにしてる。カード早く出してくれない?」
「ああ、そうだったね。はい。」
《ソレデハカードヲテイジシテクダサイ。
》
四戦目
役なしとディスラクティブ トランプ
《アナタノマケデス。2タイ2で引き分けですが、ディスラクティブ トランプを出したため貴方の敗けです》
「驚かないようだけど予想してたの?」
「いや、現実について行けないだけ。」
「そう、じゃあ、」
下に穴がぽっかりと空いて重力に逆らえず落ちた。
それから少し間が空き、服を割く音と視界に赤黒く光る棘が本来体のあるところからはえていた。
目が覚めると黒い部屋にいた。
【continueしますか?後2回】
目の前にその画面が浮かんでいた。
どっからどうやったらこんな大掛かりな芸当を出来るのか正直気になった。
その下に【YES NO】の選択肢が続いていた。
・・・諦めてもいいかな。
あの痛さはもう経験したくなかった。
NOの方に手を伸ばす。
【それでいいの?】
押した途端に写し出され少し戸惑った。
ここで脱落すれば現実世界では死んだことになる。
じゃあ、あの子達は?
もう会えなくなる?
もしかしたら、ここにいるかも。
でも、ここで脱落すれば今居るかもしれないメンバーを見捨てることになる。
多分。
今、連絡できる手段があれば何かわかるかもしれない。
一度cancelを押し、最初の画面に戻る。
右上に何かあった。
すかさずクリックすると
【一度だけ連絡を取ることが出来ます。】
もし、もしも居るとしたら頑張ることができるかもしれない。
何か情報が掴めるかも。
迷わず【YES】を押す。
三回コール音が響いた後、聞き馴染んだ声が聞こえてきた。
『いきなりでびっくりしたぁー。でも、良かった。あんたが生きてて。さぁ、攻略会議でもやるか。』
不思議とあの子の微笑んだ顔が見えた。
ああ、さっき諦めてかけてたって言ったら何て言われるんだろうな。
怒られるかな。
でも、怒られてもいいや。
また、あの子等と会えるんだったら。
「ありがとう」
『何言ってんのさ、いきなり。ほらやるよ。今度は私達が勝つ!』
「うん。」