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カイキ症候群  作者: 夢喰 雪
1/3

~月の影達~【全ての入口編】

皆さん、"怪奇"と言うモノを信じていらっしゃるでしょうか?

信じてない方にはとても信じれない話なのですよね。

けれども、怪奇と言うものは知れば知るほど面白いものなのですよ。

さぁ、踏み出して。

どうぞこの世界に飲み込まれてください。

怖がる必要はございません。

決して貴方には害をなさないことをお約束いたしますから。

【報告書】

___この事件は人為的ではない可能性が高い。本署はコレを【一種の怪異】として処理する___






この時代。

怪異があると科学的に証明されてから、゛オカルト゛と呼ばれるものに一層熱が入るこの時代。

その時代に起こった皆既月食が日本を混乱へと恐怖の底に陥れることはまだ、誰も知らない。




--また、起こったらしいよ。 --

--うそ、また?!これで何件目?--

--さぁ・・・でも気味悪いよね。だって被害者全員に変な痣、着いてたんでしょ?--

--そうそう。なんか゛黒丸を右下だけ三日月形に切り取ったような痣゛だったらしいよ。--




最近、殺人事件の話で持ちきりだ。

なんだって、変な痣がある変死体が最近見つかってるらしい。

そんなこと興味もないが。

まあ、幽霊やら怪奇現象には興味はある。

勿論、不気味なものも例外ではない。

しかし、それが人間となっては話は別。

人が遠からず死んでるのにそれを面白がって、話すのはどうかと思う。


「おはよ。」


ふと考えるのを辞め、焦点を遠くの時計から目の前の人物に合わせる。

この子は私の幼馴染み、東川 美桜、だ。

美桜は何かを察したのか、あの事件の事?と聞いていた。


「うん。最近殺人事件の話が持ちきりでさ。もう少し明るい話題がないものかねー。と呆れてたとこ。」

「あれは不可解なことばっかだからねー。しょうがないよ。」

「真弥華、おはよ。」

「テンション低くない?いつもの元気はどうしたよ?」

「そんなもの遥か遠くのお空に置いてきた。」

「言っとる意味がさっぱりわからん。」

「じゃあいい。」

「おはよ。」

「綾野、おはよ。」

「綾野おはよー。」


そう言いながら、結った髪をいじろうとする真弥華の手を軽く払うと「奈々見いつもの元気はどうしたん?」と聞いていた。


「以下略。」

「さっぱり分からん。」

「遥か遠くのお空に置いてきた。んだって。」

「そういうこと。」

「あ、そういえばさ_____」


そう話し込んでるうちに、SHR時間が近付く。

チャイムがなる。



「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


代わりに悲鳴が辺りに響き渡った。

その声で私は現実の残酷さを知った。












一番奥側の席で立ち竦む女子が一人。

回りを血走った眼で回りを取り囲む生徒。

隙間から見える横たわったシルエット。

あるはずのない赤い水溜り

私は直感的に分かってしまった。

嫌、もしかしたら回りから聞こえた声を勝手に自分の思考として見ているのかもしれない。

でも、今はどちらでも良かった。

嫌、語弊があったな。

゛そんなことを考えている場合じゃない゛


「人が死んだ。」


無意識に漏れ出たその声はただ騒然とした雰囲気に殺された。












その後、先生達が駆け付け、警察、救急隊と次々に人が入り、挙げ句の果てには、教室にいた生徒は全員閉め出されてしまった。

その後、一人一人聴取に応じた後、帰宅となった。


「やばかったね。」


真弥華が呟くと、連鎖的に声が紡がれる。

それは教室であった事から世間話になり、いつしか笑い声がたた聞こえる楽しい話で分かれた。

手を振りあって、笑顔でまたね。と言える。


もしかしたら今まで日常だと思っていたことは非日常なのかもしれないと振った手を下ろしたときにふと思った。


見上げると、星は変わらず暗闇に点々と小さくけれど、何処か自分の居場所を主張しているように光輝いていた。












「姉ちゃん、上がった。」

「はいはい。」


ぶっきらぼうな弟がタオルで自分の頭を乱暴に拭きながら私に声をかけてきた。

今度中学校へ上がる弟は私と同じくらいの身長だ。

もうすぐで抜かされるだろうと母は笑いながら言うが、そんなことはさせない。

させてたまるか。

弟に身長抜かされました。

何て大声で言えるわけない。

そんな何処かモヤモヤした気持ちを押さえながら、脱衣場に向かう。

Tシャツを一枚脱いだ時、違和感がして自分の体を見渡す。

見た感じ分からなかったので、隣の鏡を見る。

そこに映るのは何も異変のない私の姿。

ホッとした反面、なんか納得が行かない。


さっき抱いた違和感は何だ?












やる気とは気紛れなものでやる気が出るときは、よしやってやる!と意気込めるものだが、やる気が出ないときは、早く終わらないかと、首を伸ばしてただ時間を潰している。

今は後者だ。

やる気が出ない。

今は部室のなかだ。

立とうと試みる。

首から下が重石みたいに動かない。

駄目だと諦めてボーッとする。

さっきからその繰り返しだ。

本当無限ループって怖いよね。


「いい加減出て来てよ。」


美桜はそう言いながら肩を持って引っ張りあげた。

半分自力で上がったけど。

やればできるんだ、私。


「さっさと来てよ。後、15分で部活終わるから。」

「はーい。」


木製の引き戸がしまった後溜め息を着いた。

そっと首筋辺りに手を当てた。

痛い。












無事部活が終わり、いつものメンバーで夜道を帰っていた。

住宅地の横の道を通っているため、いい匂いがしていた。


「お腹すいたね。」

「本当お腹すいた。」

「矢11本しか打ってないくせに。」

「腹は空くの。真弥華だってそう言うことあるだろ?やる気でないなーって。」

「奈々見よりかはまし。」

「正論。」

「だね。」

「えーん。皆して私を虐めるー。」

「嘘泣きばれっばれだよ。いつもだけど」

「自覚してる。」

「してんだ。」

「うん。」

「奈々見って嘘しかついてないよね。」

「本当それ。」

「奈々見って本当の事言ったことある?」


皆してひどいよね。

私だって本当のこと言ったことあるよ?

1、2、3・・・

うん、10っこもあるよ。奈々見ちゃんエラーイ。


・・・偉くないな、うん。

あー月が綺麗だなー、眩しいよ、うん。


そんな無意味な現実逃避を繰り広げていると、横を走ってた真弥華が目を丸くした。

なにか言いたそうに私を指差し、口をパクパクさせていた。

それを辿っていくとどうやら首筋辺りを指差しているようだった。


「奈・・・奈々見。それ!」


振りだした声は大声で後の二人も私に視線を移し、真弥華と同じ反応を示した。

慌てて美桜が手鏡で首筋辺りが見えるように置いた。


そこには"黒丸を右下だけ三日月形に切り取ったような痣"が出来ていた。












「う・・・そでしょ。」

「それって今噂の痣でしょ。」

「と言う事は、奈々見は」

「私は」

『三日以内に死ぬ』


声は静かにだけど重く辺りに響く。

昨日までこんな痣なかったぞ、おい。

でも、もしかしたら昨日あった違和感は・・・

そう考えると、背中が冷たく感じた。

ただ一人悲しく思ってると、三人は目を伏せた。

嗚呼、信じられないか。

と一時的に納得したものの何か可笑しいことに気づいた。

美桜は左手首、真弥華は右肩、綾野は踝の少し上をじっと見ていた。


「ねえ、もしかしてさ。三人にもあるわけ、痣。」

『えっ?』


綺麗にハモった。

同時に三人はお互いの顔を見合わせた。

やっぱり?

そんなことを言いたいんだろうな。

と大体想像がついてしまった。

三人とも視線を移していた所が見えるように捲る。


「皆お揃いだね。」

「お揃いならせめて害のない物が良かったな。」

「全くだよ。」

「はぁ、もっと思いっきりやっとけば良かった。」


四人は軽く笑う。

それしか言葉がでないから。

90歳超えたおばあちゃんになって後悔なく逝けると思ったら、後三日。

やりたいこと一杯ありすぎてうまく纏まらない。

さてどうしようかと普段は働かせない頭を回転させる。

無理、何も打開策が思い付かない。


「取り敢えずさ、後一日一寸普通に過ごそ。波風たてずにただ平然とさ。」

「名案だわ。」

「流石元選抜。」

「やりたいこと今更慌ててやったって全部出来る訳でもなし。諦めるのも時には重要か。」


綾野の意見に皆満場一致で夜道をまた歩きだした。

皆平然とするとは言ったものの、足取りは重く、少し悲しそうだった。












ぼんやりしながら鏡の前で髪を乾かしていた。

いつもはさっと乾かして、すぐ上がってしまうのだが、今日はそんな気になれずちんたら髪を乾かしていた。


明日が命日。


そんな思いが頭をよぎってすぐ消えた。

色々後悔が浮かんだり消えたり、じれったい。

何で私達なんだろ。

ニュースでは打開策は何も見つかってない。ってことだし。

何も出来ないか。


「奈々見、早く寝なさい!」

「はーい。・・・っ?!」


さっき鏡に何か居た!

咄嗟に振り向くが誰も居ない。

見間違いじゃない。

根拠やら理論とかはないけど直感的にそんな気がした。












「ふぁーぁ。眠っ・・・」

「どうしたの寝れてない?」

「美桜。うんそうだよ。眠たくて眠たくて仕方ない。寝てい?気分悪いし。」

「部活中だよ?・・・まぁいいよ。だって」

「はいストップ。それ以上言わなくてよろしい。さっさと行っておいで。先輩には体調悪いから休むって言っといて。」

「・・・分かった。言っとくね。」


さっき美桜が言いかけた言葉の続きは大体分かった 。

だから止めたし、あの子も二つの意味で゛分かった゛って言ったんだと思う。

言いかけた言葉はあの子の口から言わせたくなかったし、聞きたくなかった。


「もう終わりなんてね。」

《そうだね。》


壁の方から声がしてすぐさま振り返った。

そこには壁はなく、代わりに白い部屋が嘲笑うように建っていた。

カイキ症候群を見てくださり誠にありがとうございます。

初めまして、夢喰 雪と申します。

この作品に足先から頭まで沈んでいただけましたか?

まだ、そんなに展開がないし面白くない?

まあまあ、そんなに焦らないでください。

今はまだまだ入口に入ってもいませんから。

これからですよ、こ・れ・か・ら!

次回もこの世界を案内させていただきます。

この作品を楽しんで頂けますこと心よりお祈り申し上げます。

それでは、これからもカイキ症候群をよろしくお願いします!

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