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勇者と魔法都市  作者: 昆布太郎
序章:まずは準備しようか
2/2

ミリアと一狩り!

15ページ分前後書くからとか言っておきながら今回早速短い……すみません!

 異世界召喚から二日目の朝、窓から差し込む光で目を覚ました。 そんな新生活の朝に重要な事に気づき、俺は崩れ落ちることになる。


「あ、おにいちゃんおはよ」


 食堂に向かうと深刻そうな顔をしたミリアが椅子から立ち上がって、俺のもとへ走ってくる。


「おなかすいたよぉ」


「あ、そうか……昨日な疲れてすぐ寝たから気にしてなかったけど飯食べてなかったな。 いま何か作るからな。」


 俺は食堂に向かおうとすると、ミリアが俺の裾を掴んで頭を横に振る。


「材料もないの……」


「…………」


 一瞬の沈黙の後、魔法都市の作り出す建物のスペックを過信していたことに気づく。 色々と家具がそろった状態で作り出されたこの家を見て、食料事情まで確認するのを忘れていた。


「いや、まだ可能性はある! コアだ! コアなら!」


「そんな機能ない。 昨日言ったはず材料のために魔物を狩ろう」


 知らぬまにやって来たイヴが悲しい現実を俺に叩きつけてから椅子に座る。


「建物とか装備の材料だと思ったんだよ! まさかここまで揃ってて1日分の食料どころか菓子もないとは思ってもなかったわ!」


「今から狩りにいけば良い。 動物なら森に住んでる、ミリアもいるから簡単なはず」


「むぅ、ジキュウジソクかー」


 ミリアはすこし不満げにしているが、一応狩りのために召喚したのだから働いてもらうしかない。 小さな子に仕事を押し付けるのは気が引けるので俺も同行しようとは思うが。


「俺も着いていくからさ。 イヴはどうする?」


「私はコアから離れられないから行けない」


 まぁサポーターだからコアありきの存在なのだろう、なら仕方ない。


「じゃあおにいちゃん! 早くいこ!」


 不満げたったミリアも機嫌をなおしてくれたみたいなので、すぐに家を出ることにする。


 魔法都市のコアは周辺の地図としても役に立つ。 上から見上げるような形で、コアの適用範囲を見渡すことができるため、範囲よりもすこし離れている程度なら見ることができる。 もちろん地図というだけで、そこに生物がいたりするのがわかるといったカメラ的な効果はない。 コアの情報を元に、野性動物がいそうな森に向かう。


 森までの距離は大したことがなかった。 だが、ここに街を作るとなると野性動物や魔物が頻繁に出る森の真横というのは少々問題がある。 気が進まないがこの森をすこし伐採する必要性もあるかもしれない。


「うーん、すこし強いのがいるっぽいね。 少数だけど魔物の気配と一際つよい魔物の気配をひとつ感じる」


「そんなことがわかるのか?」


「えへへ、ボクいまよりもっと小さいときにグレイブフォレストっていう森に捨てられたことがあったんだよね。 その時必死になってたからまだ生きてるんだけど、その経験もあって大体の気配を察知できるようになったんだ」


 以外にもミリアが苦労していたことを知った俺はなんて声をかければいいか戸惑いながらも、なぜか咄嗟に頭をなでる。 するとミリアは、ジト目で俺を見る。


「それはボクを慰めてのよしよし?」


「いや、えーっと。 いままでよく頑張った!っていうよしよしかな?」


「なんで聞くのさ」


 ミリアは、ぷっと吹き出して笑いながら返すと、森のなかを進んでいく。 憐れに思われるのは嫌らしいので今度からは気を付けよう。


 そのまま森を進んでいるとミリアが突然俺の手を引いて近場の大きな木の裏に隠れる。


「どうしーー」


「しぃっ! 獲物が来るよ」


 ミリアがそういうと先程まで俺たちが居た場所にのそのそと見たこともない生き物が歩いてくる。 豚のようなでっぷりした体に犬の顔がついたようなソレは辺りの臭いを嗅ぎながら、回りを見回す。


「あれは?」


「ピードッグっていう魔物だよ、普段は無害だけど暴れたら猪なんかより凶暴なの」


 ピードッグは恐らく俺たちの臭いに気づいて警戒していたようだが、人が居ないことを確認すると、また歩きだす。


「よっし、いま!」


 ミリアはそういうと、物凄い早さでピードッグに迫る。 ピードッグはミリアの存在に気づいて逃げようとするが、その場でミリアに首を切り落とされる。 血が吹き出るピードッグの死体の前で、いままで持っていた大剣を下ろして手を合わせてから腰に着けていた短剣でピードックを解体していく。


「すごいな」


 集中しているミリアには聞こえていなかったようだが、隣で見ているとグロく感じるよりも、スムーズに解体されていくその光景に見とれてしまう。


「ふぅ、終わった~」


「お疲れさま」


「うん! でも、もう一体近くにいるみたい。 ピードックなんかじゃなくて大物かな」


 ミリアは気配を感じる方向を見ながら大剣を掴む。


「ピードックはストレージに保管しておいてね」


 ミリアに言われた通りストレージを使ってピードックを保管する。 寝る前にイヴに聞いて、つかえるように特訓してみたのだがこれがとても便利だ。 ストレージは開いたり閉じたりする時に魔力を消費するわけでなく、物を入れる時のみ消費する。 入れるもののサイズによって消費量が上がっていくのだが、ピードックはそんなに消費しないらしい。


「大物って?」


「来たよ、あれが大物」


 ミリアの視線の先には岩の山。 しかし、その山は徐々に大きくなっている気がする。 いや、おおきくなっているのではなく、こちらに近づいてきているのだ。


「な、なんだあれ」


「モスゴーレムだよ」


 モスゴーレムと呼ばれたその岩山のような魔物はその名の通り、身体中に苔がへばりついている。 しかし、ゲーム等でよく見る人の形をした巨像というわけではなく、歪なドーム状の塊。 そんな塊が徐々に加速しながら俺たちの方に向かってくる。 その姿は砲台の無い戦車のようで、あの突進に巻き込まれればただではすまないだろう。


「おにいちゃんは離れてて!」


 ミリアは大剣を持って、モスゴーレムに向かって走り出すと、手をモスゴーレムにつきだす。


「コクエンダン(黒炎弾)!」


 つきだされた手からテニスボール程度の大きさの黒く燃え盛る炎の玉がモスゴーレムに向かって放たれる。 黒炎弾がモスゴーレムが通ろうとしている地面に当たると、テニスボールの大きさからは想像できないほどの穴を開け、モスゴーレムは見事にその穴に落ちる。


「グガガガガガガガ!!!」


 モスゴーレムの鳴き声なのか分からないが、轟音が森に響き渡ると共に、戦車の姿だったモスゴーレムが人の形になって穴から這い上がる。


「変形ロボかよ……」


 目の前で変形するゴーレムに感動を覚えるも、モスゴーレムの赤く光るひとつ目が俺を認識した事に気づいて俺は慌てて走り出す。


「ボクが相手だー!」


 人の形になったモスゴーレムに大剣で斬りかかるミリア。 岩相手に斬りかかるなんて無茶だとおもったが、ミリアの大剣には黒炎が纏っている。


「カイエン(壞炎)の剣!」


 ミリアの剣がモスゴーレムの左足部分に当たると、その部分が抉れていき、最後にはバランスを崩してモスゴーレムは倒れ込む。


「これで最後! はあぁぁぁ!! デスフレアスラッシュ!!」


 もはや斬るではなく叩きつけるという表現のほうが正しく見える。 壞炎の剣のように黒炎を纏わせた剣で抉ることは変わらないが、黒炎の火力が比べ物にならない大きさになっている。 その黒炎がモスゴーレムを包むと、その一帯が抉れてモスゴーレムすらも消滅してしまっている。 なるほど、黒炎の凶戦士か……ヤバイ奴召喚しちまったなぁ。


「ふぅ、スッキリ!」


「お疲れさん、凄いな」


「へへへ、一応コクエンのキョウセンシだからね!」


 ん? まてよ、大物って本当にモスゴーレムなのか? いくらミリアが強いっていってもそのミリアが大物といったのだ。 この程度だとはおもえない。


「なぁ、本当にさっきのが大物なのか?」


「ん? 重なってて見えなかったんだね。 あれだよ」


 ミリアの指差す方向を見るとゴーレムよりも更に大きい魔物が居た。


「あ、あああ、アレって」


「フォレストドラゴンだねぇ」


「ドラゴンンン!? なんでヤバイ奴ばっかこっちくるんだよ!」


「ボクの気配で混乱しちゃってるのかな? ここフォレストドラゴンくらいしか強いのいないっぽいし。 とりあえずあのフォレストドラゴンは狩らずに戻ろっか、一応森のヌシみたいだし」


 ミリアは大剣を背負ってもと来た道を戻る。 もちろんフォレストドラゴンから逃げながらのため、俺はゼェゼェ息を荒げながらミリアを追いかけていた。 もう絶対にミリアと狩りは行かないと思った瞬間たった。 絶対に行かない!



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