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第7話 アウルベア狩り

 先頭を走っていた麗華が急に足を止めた。だが、麗華の動きを注視して模倣していたミヤビも全く同じ様に足を止めようとした。そう、全く同じ(・・・・)様にだ。何かを見ているのか麗華は足を止めた場所から動いていない。追い掛けるのに必死で模倣していたミヤビは足を止める動きまで模倣したのだが着地地点にはその場で足を止めた麗華がいる。

「ちょっ!師匠!」

「ん?」

 振り返る時麗華が足を半歩こちらに向けてしまった。それはミヤビの着地地点を半歩内側に入った事に他ならず衝突は避けられない。

 ミヤビは前傾姿勢から身体を仰け反らせ勢いを削ぎ、身体を捻って手持ちの斧を近くの木に切りつけた反動で着地地点を麗華の横にずらし着地する。

「急に立ち止まったりしてどうしたんだ師匠。」

「お主の相手によさそうな獲物を見付けたんでの、その周囲の様子を見ておったんじゃ。にしてもお主は出鱈目な反応速度じゃのう。普通あの状態になったら仰け反らせるので手一杯じゃろうに。」

「そもそも師匠が場所を譲ればそんな手間を掛けずに済んだものを……。」

「まっ、これも修業の内じゃて、それよりもホレっあれが今日の肉じゃ。」

 麗華が指差す方を見ると熊が一頭果実を食べていた。只良く見ると体格は確かに熊なのだが顔が熊ではなく梟のような顔をしている。

「何ですかあの熊?」

「アウルベアじゃ。飛べない梟じゃな。」

「いやいや、どう見ても梟の顔した熊だろ。」

「どっちでも良いわ。それより早く狩ってこんかい。一頭でいるのは珍しいんじゃ。」

「猿の次が熊っていきなりハードル高くないか?」

「仕方なかろう。ここら辺の魔物じゃあ今のお主では強さも武器も防具も心もとないからの。気は常時送っとくから思う存分にやるのじゃ。」

 ミヤビが【纏魔】の使い方に気が付いてから麗華はミヤビがMP切れを起こす前に度々気を送って回復させていた。

 つまりMPを気にせずて【纏魔】を使い続けられるから練習に丁度いい相手となる訳だが同時に【纏魔】を使い続けないと今のレベルでは簡単に死ぬと言うことでもある。そこまで考えてミヤビは麗華に告げる。

「死なないように行ってきます。」



 ミヤビは木々に隠れて気配を消してアウルベアの背後から近付き木の上から見下ろす。

「まだ食事中か。」

ミヤビは呟くと木を登り【纏魔】でアウルベアの真上に落ちるように跳ぶ。落下の勢いを乗せて手斧をアウルベアに投げる。頭目掛けて投げたが外れて肩に当たる。少し食い込んだ程度で致命傷には程遠い。突然の攻撃に流石のアウルベアも臨戦態勢をとるがすぐに頭上からのミヤビの【纏魔】付きの踵落しで地面に叩き付けられる。

「まぁこれで終わる訳ねえよな。」

 適性レベルが5というのは恐らく山の中腹までの事だろう。βテストでは中腹から頂は実装されていなかったとクラウスから聞いている。


 アウルベアはすぐに起き上がりミヤビを睨み、ミヤビも【纏魔】を掛けて構える。


アウルベア

性別─雄

状態-裂傷(小)

LV 9

HP 118/139

MP 42/46

筋力 86

体力 76

知力 27

精神力 25

敏捷 45

器用さ 24


 鑑定をするとレベルに2倍以上の差があり、明らかな脳筋タイプの魔物だった。

(顔が梟ならもうちょっと知力があっても良いんじゃないか?)

 ミヤビはそう思いながらも襲い掛かってくるアウルベアの爪を躱していく。敏捷がミヤビより高いので躱すのも結構ギリギリである。

 だが、ミヤビはアウルベアの爪を躱すと更に懐に入り込み【纏魔】を込めた掌底を腹に打ち込む。

アウルベア

性別─雄

状態-裂傷(小)

LV 9

HP 111/139


 たった7しかダメージを与えられていない。それとも2倍のレベル差があって7も与えたと言うべきか。だが、ミヤビは笑みを浮かべると続いて迫るアウルベアの爪を躱し、再び掌底を叩き込んでいく。ミヤビにとっては後者だったようだ。

 時間が経つに連れてミヤビの動きから無駄が無くなっていき足で攻撃する余裕まで出てきた。そうすると爪を躱すと同時に足に蹴手繰りを放ち態勢を崩して降りてきた顔面に回し蹴りを叩き込むと爪を躱す。

 ミヤビの奇襲から三分でアウルベアは地面に沈んだ。


『戦闘経験によりレベルが上がりました。』


名前─ミヤビ・スメラギ

性別─男

職業─道士LV2

種族─狼人

LV 5(↑UP)

HP 73/88(↑10)

MP 66/66(↑11)

筋力 57(↑5)(↑1)  

体力 24(↑3)   

知力 40(↑5)

精神力 26(↑4)   

敏捷 40(↑4)(↑1)

器用さ 30(↑3)(↑3)   


スキル

方術LV3(↑UP)

錬金術LV1

格闘術LV3(↑UP)

斧術LV2

鑑定LV2

夜目LV2

危機感知LV2(↑UP)

制空権LV2(↑UP)

魔力制御LV1(NEW)


ステータスポイント0

スキルポイント10


 レベルアップのインフォメーションが出たのでミヤビはステータスを振りスキルを見ると新しく魔力制御が増えて他のスキルもレベルアップしていた。スキルポイントを使わずスキルを次々に会得していくのだが良いのだろうか、と思うがそう言う仕様と思ってアウルベアのドロップ品を見るとアウルベアの毛皮だった。


「師匠ハズレだ。次の獲物を頼んだ。」

「これでもダメとはのう。」

「いやいや、気の供給があるから傷を負わなかっただけでMP切れしたらやられるから。良い練習相手だったぜ。」

「はぁ、数を増やすかのう。肉も獲れなかったようじゃしのう。」

 麗華は次の獲物を探して走り出しミヤビも手斧を拾って麗華を追い掛けた。


 アウルベアを見付けるのは難しくなかったが少なくても五頭以上の群れで行動していた為数を搾るのが難しかった。それでも二頭、三頭と討伐数を増やしていった。最初は攻撃を掠める事もあったが馴れると同士討ちを狙ったりして討伐時間を短縮させられた。格上の魔物が相手だったのでレベルも早く上がっていると思う。

 アウルベアを17頭倒した所で種族レベルが上がり、その後19頭倒した所で職業レベルと途中でスキルレベルが上がった。3時間で合計36頭を倒しても1レベルしか上がらないのは早いのかどうか分からないのだ。


名前─ミヤビ・スメラギ

性別─男

職業─道士LV3(↑UP)

種族─狼人

LV 6(↑UP)

HP 42/117(↑12)(↑17)

MP 91/91(↑10)(↑15)

筋力 70(↑4)(↑3)(↑6)

体力 30(↑2)    (↑4)

知力 50(↑4)    (↑6)

精神力 34(↑3)   (↑5)

敏捷 50(↑4)(↑1)(↑5)

器用さ 37(↑2)(↑1)(↑4)   


スキル

方術LV4(↑UP)

錬金術LV1

格闘術LV4(↑UP)

斧術LV3(↑UP)

鑑定LV3(↑UP)

夜目LV2

危機感知LV3(↑UP)

制空権LV3(↑UP)

魔力制御LV3(↑UP)


EXエクストラスキル

消費魔力軽減LV1(NEW)


ステータスポイント0

スキルポイント15


 良く見ると新しくEXスキルがある。名前からして通常のスキルとは違うのだろうが会得条件が分からない。


「もうそろそろよいかのう。肉もそれなりに手に入ったじゃろうし、良い修業になったじゃろう。では戻るぞ。」

「おう!」

 ミヤビの顔はホクホクである。勿論アウルベアの素材を手に入れられたからだ。肉が13、皮が21、爪が10と一頭から複数の素材を手に入れる事もあったので売値が楽しみなのである。


 登りの行きと違い、戻りは下りなので早く戻れた。麗華は家に着くと直ぐに台所に向かい袋から米を取り出し竃鍋に入れて研いでいく。かまどに魔法で火を付けてセットすると木箱から野菜を取り出して包丁でざっくりと切っていく。中華鍋に油を引いて熊肉を一口大に切ったら中華鍋に放り焼いていく。酒を入れて臭みを取ると切った野菜を入れて一緒に炒めて、予め用意していたであろうタレを加える。

 ミヤビも手持無沙汰だったので鍋に残った野菜を切って入れて味噌と熊肉を使って煮込み汁にしてみた。


「お主料理も出来たのか?」

「出来ないと言った覚えはないが。」

「いやいや、手間が省けて良いことじゃ。後は米が出来るのを待つだけじゃな。朝食の後は一旦街に降りるぞ。野菜を買っておかねばならんからの。お主も用があるじゃろうから済ませてきて構わんぞ。」

「それはありがたい。急なレベルアップで装備と差が出てるから買うか作って貰うかしたかったんだ。」

「ふむ、そうじゃな、なら装備が出来るまで街で依頼でも受けてみるか?」

「仙人のギルドはないって聞いたが?」

「ギルドはないが依頼は受けられるぞ。儂達が受けるのは主に錬金術を使った薬の製作じゃな。お主もここに来る前にやっとったポーション作りなんかじゃな。仙人はこれを使って修業することもあるのじゃぞ。」

「近いうちに薬も使った修業が必要になるって事か?」

「今のペースならの。じゃから装備の新調と一緒に錬金術の技術も上げる必要がある。下山次いでに丁度いいじゃろう。しっかりと教えてやるからの。」

「了解。そろそろ飯が出来るかな?」

「そうじゃの、飯にするかの。」

 そして麗華は皿を取り出し出来た料理を盛っていく。ミヤビはそんな後ろ姿を見て頬を緩める。

(美人が料理を作っる光景はいつ見ても良いものだ。)

「儂特製の肉と野菜の炒め物じゃ。」

「楽しみだよ。」

「儂もお主の熊肉の煮込み汁楽しみじゃぞ。」

 ミヤビが自分で作った料理は勿論、麗華の料理も美味かった。





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