第6話 本格的修業開始
「それで兄さん、この後はどうしますか?」
「勿論、修業してくるよ。師匠から得られるものは多そうだからな。目指すは道士から仙人へ最短クラスアップだな。」
「そうなりますと暫くは別行動ですか。私も早くは卵を孵化させないといけませんね。獣魔の支援がテイマーの本業みたいですから。」
「雫、先戻ってて良いよ。片付けはオレやっとくから。」
「わかりました。先に戻ってますね。」
雫が居間を出ていくと煌雅は食器を洗っていく。二人分なので差ほど時間を掛けずに洗い終える。
「それじゃあオレも行きますか。」
煌雅も雫の後を追うようにエルヴィスに戻っていく。
目を開けると背中まで伸ばした藍色の髪に綺麗に整った顔、長い睫毛と翠色の瞳を携えた美女がこちらの顔を覗いている。
「オレの顔なんか見てどうかしたか麗華?」
「なっ!何でもないのじゃ。」
僅かに顔を紅くした麗華はすぐにミヤビの言葉に気付いて憤慨する。
「わっ、儂を呼ぶときは師匠じゃあ!」
「悪かったよ。やたら顔を見てたからからかっただけだ。おはよう師匠。」
「ふんっ!おはようじゃ。」
「それで朝食はどうしてるんだ?」
着替えを終えたミヤビが麗華に聞く。
「勿論、野菜類は買い置きしてあるぞ。」
「肉類は?」
そう聞くミヤビの顔を見てニヤリと小さい唇の両端を上げて、にこやかに告げる
「勿論、これから狩りに行くのじゃ。」
「この山の上の方か?」
「察しが良いの。お主の修業も兼ねているのじゃ。下の奴等じゃ相手になりそうにないからの、上に行くしかあるまい。大丈夫じゃ、いざとなったら手助けするからの。では行くぞ。」
山の中を麗華を先頭にミヤビが追い掛ける。勿論、襲ってくる魔物を散らしながらだ。
(無茶苦茶速いな!付いていくのでやっとだ!)
かれこれ30分近く8割の力で走っていたミヤビは声を掛ける余裕もなく、汗一つかかずゆったりとそれでいて物凄く速い麗華の動きを注視する。だがその途中麗華が少し振り返り、指を目に充て舌を出した。所謂あっかんべーって奴だ。
(この野郎!いつか絶対泣かす。)
そう思っても冷静な部分が麗華のメッセージをしっかり受け取っていた。
ミヤビはすぐに【纏魔】を使い目に気を集める。すると麗華の足と手に気が集中しているのが見えた。
やるべき事を理解したミヤビであるがいざやってみると地を蹴る毎に【纏魔】の効果が切れるので一歩一歩かけ直さないといけない。
(なるほど、動き回りながらも気の集中を乱す事なく適切な箇所に廻し続ける。言うのは簡単だがやるのは難しいなコレ!)
まだ道士として未熟なミヤビには麗華と同じ事は出来ないが近いもので対応するしかない。MPの消費が激しいがこの方法は近いうちに役に立つのが分かる。
(本当に優秀な弟子じゃ、ヒント一つで2つ、3つ先の事を身に付けようとしているのじゃからの。それに……)
麗華がミヤビの方を見るとさっきまで余裕のない表情が口角を上げて笑っている。
(ここで笑うか。強さに貪欲じゃのう。強くなる事、強くなれる事に喜んでおる。)
ミヤビの才能が妬ましく感じるがミヤビが成長する事を単に嬉しく感じている麗華もいる。
そんな考えをしているとミヤビに丁度よさそうな魔物の姿を見付ける。
(昨日の今日でどれ程出来るか見てみるかの。)