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第4話 赤桃山の仙女

「ウッキィイイイー!」

「五月蝿い!」

飛び掛かってくるフォレストモンキーの首に正確に手斧を振るい、また一体を沈める。

「一体一体なら格闘術で確実に仕留めるんだがこうも数が多いと面倒だな。」

 今は確実に斧の方が攻撃力がある。小さいから纏めて倒せないのがもどかしいがこちらの方が早く倒せる。

 今ので12体目だが未だに数を減らすことなく追い掛けてきている。

「どっから湧いてくるんだか。」

 一人愚痴りながらも足場の悪い山を平然と登っていく。それから少しすると遠くで大きな音が聴こえた。音の方向は真っ直ぐ山を登った所からだ。

登っていくと広い建物が見えた。

 だがこのままではこの森猿どもも一緒に来てしまう。ここに仙女が住んでいるかも分からないのだ。一般のNPCが住んでいたらモンスタートレインになってしまう。自分勝手な迷惑は掛けられない。


「悪いがここでお前ら全員消えて貰う。」

 HPは少ないがミヤビはすぐに森猿どもに向き直り、【練気】を使ってから森猿どもを葬むっていった。

 だがミヤビの予想に反して森猿どもは早々に撤退し始めた。

「何だ?」

 ミヤビは疑問に思うも現実の持ち前の戦闘勘がミヤビの身体をすぐにその場から横に跳ばした。

跳んだ直後ミヤビの眼に写るのは水の形をした竜が木々を避けながらフォレストモンキー達を食い散らかす様だった。

「おや、猿の他にも獣がおったようじゃのう。きっちり始末着けねばな。」

 年寄りのような言葉使いだが若い女性の声にミヤビは反射的に振り返り同時に降り下ろされた棒状の物を視界の端に捉えると持った手斧を両手で持ちその場で身体を捻り名一杯横から手斧を振るい当てる。

「ラァアアァー!!」

 ミヤビの名一杯の抵抗が功を奏し女性が右手に持っていた棒状の物(正確には錫杖)を反らしミヤビの目先に降り下ろされた。

「ほう。獣の割に良く抗うのう。ホレ次じゃ。」

 女性が無造作に左手を伸ばす。その行為にミヤビの背筋がゾクリと震える。これは危険だと身体が理解し近くにあった右手がすぐに拳を握り女性の左手を腕ごと弾く。

 次の瞬間空気が震えた。そして女性の左手の先にあった木々がへし折れ倒れていく。

「こんなの喰らうとか洒落になんねぇぞ!」

「そんな事より次じゃ次!」

 嬉しそうな声で錫杖を離した右手が、左手が、両肘が間断なく迫ってくる。そのすべてをミヤビは受けることなく反らしていく。

(一つでも受ければ死ぬ。)

 鑑定をする暇はないがさっきの光景を見れば想像に難くない。

「良いぞ!良いぞ!」

女性は一人テンションが上がっているがこっちは捌くので手一杯だ。

 そして女性の攻撃の手は加速していく。次第にこちらの反応は遅れていき…

「しまった!」

 一つ攻撃を捌ききれず手がミヤビの身体に触れる。

(死んだ。)

 そう思ったがミヤビの身体から傷が疲れが消えていく。ステータスを見るとHPとMPは全回復し、格闘術のスキルレベルが上がり新しくスキルに危険察知と制空権、方術に【纏魔】の魔法が付いていた。


「ふむふむ、なかなか良かったぞ娘。」

「はっ?」

「鈍い娘っこじゃのう。お主何しにこの山に来たのじゃ?」

「この山にいるって噂の仙女に会いに来たが……まさか、あんたが?」

「そう言うことじゃ。お主の事はこの山に入った時から見ておったがそのレベルで一人で良くここまで来れたの。大半の者はあの猿どもの餌食になるのだがな。お主は危なげなくここまで来れた。最後にこの場所の配慮までしておったようじゃしのう。そして加減してたとはいえ儂の攻撃をあそこまで捌くその技量、言葉使いはあれじゃが儂はお主を気に入った。お主がそのつもりなら内弟子にしてやって良いぞ。どうするかのう?」

「さっきまでのが入門試験ってことで良いのか?」

「だからそう言ってるであろう。」

ミヤビの目的である入門が目の前にあるのだ。

(しかも聞き間違いじゃなければ今、内弟子・・・って言ったよな。)

 如月家では只の弟子では外から通うものだ。だが内弟子は効率の良い修業を積む為、如月家の母屋の一室を貸して住まわせている。

(詰り、タダで寝床をゲット出来る!そうと決まれば。)

「じゃあ頼む。」

 即決で弟子入りを志願した。

「それじゃあこれからお主は儂の弟子一号じゃ。お主、名は?」

「ミヤビ・スメラギだ。」

「儂の名は麗華じゃ。よろしく頼むぞミヤビ。」

「あぁ、よろしく頼むぜ麗華。」

「お主は師匠と呼ぶのじゃ!」

「イテッ!わーたよ。よろしくな師匠。」

 錫杖で軽く叩かれるが軽い調子で返すミヤビ。

「まぁ、良しとするか。優秀な弟子に為りそうじゃからな。それじゃあ付いて参れ。」

 ミヤビの言葉使いはすぐに諦めて今後の予定を考えながら歩き始める麗華の後をミヤビは嬉々として付いて行くのだった。



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