第24話 一方その頃
ミヤビ達と別れたクラウス達は先ずは宿屋を探しに向かった。マリーの予定ではミヤビの防具は明日には完成するようだが中途半端な時間になるだろうと今日と明日の二日泊まる予定である。
「残念だがうちの宿は従魔の出入りは禁止しているんだ。悪いんだが他をあたってくれ。」
最初から出鼻を挫かれたがおじさんの発言からすると無い訳ではないようだ。
「すみません、こちらでは従魔の宿への出入りはご遠慮させてもらっています。」
「ごめんねぇ、うちの宿従魔の出入りを禁止してるの。」
「あぁ、悪いねこの宿も従魔の出入りは駄目なんだ。」
だが、訪れた宿は何処も従魔の出入りを断られてしまった。
「だだ、ここの一つ隣の通りに従魔も泊まれる宿屋があるよ。貴族様も使う宿だから値段は大分張るが良い宿だよ。」
続けて言われた若い宿の従業員の言葉にルイが質問を投げ掛ける。
「その宿の料金はどれ程ですか?」
「安くて1万Gから高いところだと10万Gはするって聞いたな。まぁ、お前さんらはそれなりの冒険者みたいだしもしかしたら大した額じゃないかもしれないがな。」
マリーとレオン以外は資金に余裕がある。クラウス、カリン、スイで200万G、消耗品の矢を使うルイでも150万G程あるので宿に数日泊まる分には資金に余裕がある。だが消耗品の補充や装備の購入、食事代を考えるとあまり余裕はないとも言える。現在の装備が合計200万G程掛かっているので特に装備の購入を考えるとそう考えざるを得ない。
「いえ、貴重な情報ありがとうございます。」
お礼を言ってから宿を出る。
「それでどうするルイちゃん?」
「愚問ですね。10万程なら泊まりますよ。何日も泊まる訳ではありませんし。」
「でも倹約は必要。当分今の装備を変える必要がないとはいえそこまで余裕がある訳でもないよ。」
「特にルイは矢筒の大量購入でアタシ達より余裕はないんだからね。アタシはポーションいっぱい使うし、スイもMPポーションをよく使うけど。」
「小分けで買っていたとはいえ100本は買い過ぎたんじゃないかな?」
「……そんなに?……」
ルイが買った矢筒は安物であるが一つで矢が50本入る大きい物である。鉄製の矢は一本50Gで矢筒と合わせて3000Gの物を50本、鋼鉄製の矢は一本80Gで矢筒と合わせて4500Gの物を30本、赤桃山で採掘した火属性の魔力が含まれた火炎鉱石から作った矢は一本150Gで矢筒と合わせて8000Gの物を20本。合計5000本の矢を44万5千Gで買ったのだ。
「一月の長旅ですから備えあれば憂いなしと言うものです。行く先々で買う必要も無くなりますし無駄ではないでしょう。私も無駄使いする訳ではありませんから宿泊代ぐらいは抑えます。」
結果、紹介された宿で風呂付きの大部屋2つを借り出費を10万Gで抑えた。レベルアップと伴に成長してきたルナも寛げてルイも満足気な表情をしていた。
次に向かったのはそれぞれの職業ギルドである。街から出て達成した依頼の提出とまだ受けていない依頼の受領をする為だ。職業ギルドの依頼は職業レベルの経験値になるだけでなく報酬に金銭や装備、素材以外に技の伝授などもあるので基本的に皆が依頼を受ける。
ミヤビの職業、道士は例外で職業ギルドがない。大元の仙人が修業の為に俗世から離れて山中に住むことから俗世に繋がるギルドとは無縁であることを示す為であろう。ゲームでそんな変な拘りを見せているのでミヤビは普段は錬金術ギルドの依頼を受けている。
全員の依頼報酬で宿代で消費した10万Gが戻り、職業レベルも一つ上がった。
元々の目的である情報収集の為にギルドの総括である冒険者ギルドに向かう。職業ギルドでも情報は得られるが職業ギルド故にそれぞれの職業の偏った情報が多い。なので必然的に情報収集は冒険者ギルドに向かわないといけないのだ。
「ミヤビはともかくマリーは職業ギルドに行ってないと思うけど大丈夫?」
「……姉さんは作業に入ると他のこと一切気にしないと思うから大丈夫。」
「なら後は冒険者ギルドで情報収集と王都に行くまでの依頼を見繕うだけだね。」
「その前にそろそろ昼だし昼食でも摂りますか?」
「そうね。」
「でも食べるにしても美味しい所がいいですね。」
「宿代は抑えたし食事ぐらいは少し奮発しましょう!」
そして女性陣の食への拘りもありクラウス達は良い食事処を探すのに時間を労した。
昼食後冒険者ギルドを訪れると疎に現地人の冒険者がいるだけの閑散とした様子であった。
「やはりあまり人は居ませんね。」
「仕方ないよ。普通の冒険者は活動時間だもの。現地人でも守人でも変わらない。」
「まぁ情報が欲しいなら受付で聞けばいいだろう。ってことですみません!王都までの情報を知りたいんですが!」
クラウスが受付をしている女性に伺いに向かった。
クラウスが受付で聞いたことによると通常の道のりはダンブルを南下した先にある山脈を東に大きく迂回して港町アンデルに向かい更に迂回して四つの町を経由して王都に行くようだ。ただしこのルートは商人の安全性を考慮したルートで大体二十日くらい掛かるとのこと。山脈がそれだけ大きく魔物も多く巣くっているとも言える。
だが冒険者にはもう一つのルートがある。山脈を突き進み山脈内にある遺跡に通じる洞窟を通って山脈を抜けるルートである。魔物が巣くっている山脈を抜けるので危険ではあるが早ければ十二日で王都に着くと言うことで冒険者は大概このルートを通っているようである。
もう一週間が経ち時間もあまりないのでこのルートを通るのは間違いないだろう。
山脈に生息する魔物の種類も聞いたが注意するのは人の下半身に蛇の体が付いた亜人種のナーガとワイバーンと呼ばれる飛行する亜竜のようだ。どちらも単体でも強く毒を使った攻撃をしてくるようであるが洞窟に入る前に遭遇することはほとんど無いそうだ。ただ、ナーガは遺跡内で発見されることもあるので特に注意すべきだろう。
聞きたい事も聞けたので依頼を見繕っていると外から喧騒な音が近付いているのが聞こえてくる。
「急に外が騒がしくなってないか?」
「そうね、何かあったのかな?」
「こっちに近付いて来るわね。」
カリンが言うが早いか冒険者ギルドの扉が乱暴に開けられる。
「緊急事態だ!!至急ギルド長に面会を頼む!!」
入ってくるなりいきなり受付嬢に迫って要求する現地人の男。
「お客様落ち着いてください。お急ぎなのは分かりましたから。ご用件はきちんと聞きますので事情をしっかり説明してください。」
受付嬢も困っているが冷静に対応しようとしている。男も少し落ち着いたのか小さく息を吐くと受付嬢に耳打ちする。
受付嬢の目が見開かれ、身体を硬直させた。
「分かりました、至急ギルド長に連絡します。」
厳しい表情を見せすぐに上の階に上がっていく。
「お待たせしました。ギルド長がお待ちです。」
数分もしない内に受付嬢が戻ってくると現地人の男を案内する。
「受付嬢が行ってしまったけど大丈夫かしら?」
「大丈夫でしょう。他にも受付嬢はいるだろうし。すぐに代わりが入ると思うよ。」
言ってる側から新しい受付嬢が入っていくのを見て依頼が貼られてる掲示板を眺める。
「護衛系と採取系は無理だが納品だけなら今ある材料から作れる物ならいけるか。討伐系は大体いけるな。」
護衛系は依頼主の行動に縛られ、採取系は受けたギルドに納品しないと依頼完了にならない。必然的に討伐系が受けたほとんどの依頼になった。
「それじゃあ後はミヤビと麗華さんが来るのを待つだけか。」
集合場所を冒険者ギルドにしていたが正確な時間を決めていた訳ではないのでチャットで聞いてみると『マリーを置いてきたから錬金術ギルド寄ってから行くわ。』と返信が来た。
ミヤビ達が来るまで暇なので酒場も併設しているギルドの丸テーブルの周りの椅子に座って雑談しながら待つことにしたのだが。
バンッ
数十分後、勢いよく開けられた入口の扉からは眉間に皺を寄せて不機嫌な表情でミヤビが入ってきた。




