第20話 マジックトレント討伐
「グルウゥウウッ!」
ルナが前足を振るうとミヤビ、クラウスに次ぐ筋力でトレントが薙ぎ払われる。薙ぎ払われたトレントに後続のトレント達が巻き添えをくらう。
「ルナ!」
ルイが声を掛けるとルナは他のトレントを薙ぎ倒してすぐにその場を離れる。
「【ファイアボール】!」
倒されてまとまっているトレント達に6個のサッカーボール大の火球が放たれる。直撃してまだトレント達のHPは4分の1程残っている。
「やっぱり私では決定力に欠けますね。でも私の役目はパーティのサポート。だからお願いねルナ。【アタックライズ】。」
赤い光の玉が現れルナの体に当たると一瞬赤く淡い光を纏う。とルナはトレント達に向かって駆け出す。
再び前足を振るうと先程より勢い良くトレントが吹っ飛んでいく。
【アタックライズ】は攻撃力を一時的に上げるバフ効果のある魔法だが光の玉を当てないと効果が発揮されない。敵味方動き回る戦闘で当たれば敵でも強化してしまうと言う欠点があるがそれこそ腕の見せ所である。
バフ、デバフ効果のある補助魔法を扱うバッファー、デバッファーは回復役のヒーラーに次いでパーティ戦で戦闘を有利に進めるのに重要な役割である。
【アタックライズ】を受けたルナの攻撃で薙ぎ払われたトレント達に〈乱れ射ち〉を使ってルイがHPを削りきる。
「カリンさんがいるから向こうは大丈夫でしょうし、こちらも問題なさそうですが物理一辺倒のクラウス君にこの相手は大変そうですね。」
ルイはそう言いながらも次の敵に向かって魔法を放ち始める。
「ハァッ!」
クラウスが鋭く剣を振るう。無数に斬り刻まれた傷跡を残してトレント達が次々に倒れていくが倒れた傍からすぐに別のトレントがクラウスに襲い掛かる。
「魔法を使えない俺にコイツらの相手は骨が折れるよ!ホント!」
時折蹴り飛ばして動ける空間を保ちながらトレント達の攻撃を柳の如くゆらゆらと風に揺られる様に全て躱していく。躱し様に一太刀入れているのだが思ったよりHPの減りが少ない。
弱点の火属性だけでも使えれば戦闘は楽になるのだろうが魔法を使えないクラウスに属性付与が出来る訳もなく属性付与されている武器も持っていないので仕方のないことではあるのだが。
倒すのに時間は掛かっているが戦闘自体は時々来る根っこの攻撃にさえ注意すれば問題はない。
「俺でこれくらいなら他は大丈夫だな。」
現在進行形でトレント達の攻撃を躱しながら独り呟いているとミヤビの方からドーンと重量物が落ちた様な音が聞こえた。
「アイツは派手にやっているな。」
クラウスの声はすぐに中央の戦闘音で掻き消されたのだった。
地面から襲い掛かる根っこと岩に上から落ちてくる木の実、本体の腕と自在に伸ばしてくる枝を対処しているが如何せん一人で捌くには数が多い。
現在ミヤビはほとんど防戦して攻撃に回れていない。最初の方は問題なかったがHPが半分を切ると枝の攻撃と木の実を落とし始めたのだ。
枝の攻撃は単純に手数が増えた程度で対処が容易だったが落ちてくる木の実が厄介だった。
一見普通の木の実に見えるのだが落ちた瞬間色々な反応があるのだ。ミヤビが分析した所種類は5つ。
落ちた瞬間に爆発するもの、酸を撒き散らすもの、爆風を起こすもの、地面が陥没するくらい重く硬いものと普通の美味しい木の実の5種類であり、それぞれの木の実に火・水・風・土・無属性の魔力が蓄えられ違う効果を及ぼしている。これはミヤビの精霊の魔眼で見た色で判断した事である。
特に気を付けなくてはいけないのが火と水属性の木の実だ。土と無属性の木の実はただ落ちてくるだけだが他は落ちる最中に物に触れるとその場で効果が発動する。武器で払い退けるものなら武器と共に爆発に巻き込まれるか、武器が溶けるか、爆風で飛ばされるかする。
だがミヤビはそんな事をした訳ではないのにどうやって知ったのか。
「たかが木の分際で余計な知恵を使いやがって!」
ミヤビが避けた木の実に向かって枝が伸びていく。マジックトレント自ら落ちる木の実に攻撃して攻撃に巻き込んでくるのである。
回避、攻撃のタイミングをずらされ防戦状態のミヤビは言葉が荒くなるくらいにイラついている。
それでも対応してミヤビがすぐに地面を踏みつけると目の前にに高さ2m程の小さな土の壁が現れる。
土魔法【土壁】。名前通り土壁を生み出す魔法である。
バスケットボールのロールターンの要領で土壁を躱し壁を背に走ると後ろで木の実に伸びた枝が当たり爆発する。壁は爆発で壊れ、爆風がミヤビの背を押すと同時に重力魔法【レビテト】を使い自身の重力を軽くする。
爆風の勢いに乗せて【纏魔】を使い地面を蹴る。加速に加えて斧を短く持ち回転させ遠心力も付けて距離を詰める。
「さっきまでの鬱憤は晴らさせて貰う。」
ミヤビは大詰めとばかりに自身も跳んで縦回転し柄を長く持ち直す。
「【アドグラビティ】&〈兜割り〉!」
重力が一気に重くなるが今ミヤビがいるのは空中。落下速度が上がるが同時に斧の振り下ろす速度と威力も増す。正中線を沿う様に真っ直ぐ、両手で持った斧が炭化した部分に当たる。筋に沿っていることもあり抵抗が少なく斧の刃の半分くらいが斬り込み、重力に従ってそのまま振り下ろされた。
「ギィイイィイィィィ~!」
身体的ダメージの大きさに悲痛な声を出しているマジックトレントであるがHPは2割程残っている。
「いつまで喚いている。この程度で俺の気が晴れる訳ないだろ。〈硬気功〉。」
ミヤビが冷めた目をマジックトレントに向けの冷えきった声を掛けると斧を仕舞い強化した拳で炭化した部分を殴り始める。
感触は硬いが芯にダメージが響いているのが拳の感触から分かる。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!もう距離を空けると思うなよ!」
ス○ンドではないが殴り続け、枝の攻撃は手刀、腕の攻撃は蹴りで打ち落とし、根っこと土魔法は一度躱してから蹴りでへし折り、落ちてくる木の実は土属性を除いて【火散】と【火球】でまとめて対処する。
敵が動かない限りほとんど動かないので攻撃は一方的であり対処も下手に回避するよりも楽であった。
「これで終わりだ!」
HPをギリギリまで削り止めに格闘技の〈転身脚〉、空手の後ろ回し蹴り、プロレスのスピンキックと呼ばれる技を使うと直径3mある幹がバキッバキッと音を立ててミヤビの方に倒れていく。
「これ喰らったら洒落にならねぇな!」
ミヤビは急いで倒れてくる直線上から退避する。派手な音を立ててきっちり倒れた巨木を見てミヤビは思う。
(残ってくれないんだよな。)
消滅のエフェクトと共に巨木は綺麗さっぱり消えてしまう。後に残るのはドロップアイテムに種族と職業、スキルのレベルアップと《狂化》のスキル取得の知らせだった。
「お疲れ様ミヤビ。」
マジックトレントが倒されるとすぐにクラウスが声を掛ける。
「そう思うんなら援護してくれても良かったんじゃないか。」
「そうしたかったんだが遠距離攻撃のない俺ではあの木の実に対処出来ないから近寄れなかったんだよ。」
「言っただけだから気にするな。」
「分かってるよ。」
「と言うことでルイ、スイ途中からだが木の実の処理ありがとな。カリンもスイの守りお疲れさん。」
手伝ってくれた二人と処理の間スイを守っていたカリンに労いの言葉を贈る。
「いえ、こちらの方が早く片付いたので。」
「出来る事をしただけ。それに私達がやらなくても結果は変わらなかったと思う。」
「アタシも守るくらいしか出来なかったからね。」
「漸く休めそうじゃな。」
「ただ見てただけの奴が言うな。」
「これも修行じゃ。」
ジト目で麗華を見て文句を言うミヤビだがあっさり流される。
「まぁ、これだけドンパチやれば暫く魔物も寄って来ないだろう。」
と言うことで暫く休憩してから1日掛けてトレントの森を抜けていった。




