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第15話 進行中

「それでパーティとはどういうものなんじゃ?」

 街を出て街道を歩いていくと麗華が今更な質問をしてきた。

 パーティは守人、プレイヤー間で出来るシステムで個人それぞれで魔物と戦うと止めを刺した者に経験値、ドロップアイテムが手に入る。クエスト等も一人一人で受けて個人で達成させないといけないがパーティを組むとクエストは全員で共通化され、経験値は分配、ドロップアイテムは全員が手に入る可能性もあるのでソロでない限り損はほとんどしないのである。NPCでもギルドで手続きすれば同様の効果を得られるのでパーティを組んで冒険者をやっている者もいる。

 だが、麗華は一人で山に籠りっきりだからなのかパーティを組むと言うのは知っていてもその内容は知らなかったらしい。


 人数が多すぎると効率が悪くなる事は考えればすぐに分かる事なので説明を省いたが粗方説明すると麗華は満足げに頷く。麗華はミヤビ達のお守りと言うことで威圧して魔物を寄せ付けないなんて事を今回はやっていない。魔物に遭遇しても後ろから見守り危険な時だけ助けに入るようにミヤビに言われたのだ。


「それでお前達はいつ装備を変えたんだ?」

「私は昨日ですね。今日赤桃山に行くにあたって防御性能を考えて装備を新調しました。」

「俺も昨日だな。理由もルイちゃんと同じ。」

 ルイとクラウスに聞くと二人共同じ答えが返ってきた。ルイはスイと逆の白いローブに革のブーツと革小手、黒っぽい色の弓を装備し、クラウスは鉄製の胸当てと足甲冑に、刀身が90cmくらいの直剣を腰に着けている。二人の装備も既製品らしいがルイの弓は作って貰ったそうだ。

「そう言うお前はいつ変えたんだ?」

逆にクラウスに聞かれたミヤビは軽く答える。

「オレは今日だ。二日前に頼んで今日受け取りに来たんだ。赤桃山中腹にいるアウルベアの素材を使って作って貰った。斧は既製品だが良い出来の物だと思うぞ。」


「中腹ってβテストではなかったな。アウルベアってどれくらいなんだ?」

「大体12前後だな。一番弱かったので9レベルだったからな。基本2体以上で行動してるから狩るのが少し面倒だったな。」

「明らかに格上だよな。で当時のレベルは?」

「4だな。師匠のお陰で1体だけ相手したけど手斧の奇襲から素手で倒したぞ。熊だけあって動きは分かりやすかったし攻撃は躱せたんだがダメージはほとんど通らなかったな。」

 ここまで話すとスイとカリンは驚愕の表情をしていた。

「倍以上のレベル差があって挑むのが間違ってるのだがお前は倒せちまうから何も言わないよ。」

「そうですね。」

 クラウスとルイは慣れているのであっさりとした対応である。

「それで今のレベルは?」

「昨日で種族レベルが7、職業レベルが4に上がった。」

「うん?格上相手に狩りをしてたにしては種族レベルの上がりが遅くないか?」

「そうなのか?」

「俺もルイちゃんも種族レベルは6だし職業レベルは2だが……」

 ミヤビがレベルが倍以上の格上相手にしてレベル7なのに対してクラウス達は同レベルの魔物を相手にしてレベル6。

「確かに不自然だな。理由は知らんが。」

 心当たりがないので考えても仕方ないのだが、

「それは儂の性じゃな。」

 麗華が普段通りの口調で会話に入る。

「どういう事だ?」

ミヤビとしても当然の疑問だ。

「修業の一環で薬を使っておるからの。」

「今まで使ってた薬にそんな効果はなかったと思うが?」

「そうじゃ。一つではそんな効果ありゃせんが複数使う事で副次的に効果が出るのじゃよ。」

「それで経験値が下がる以外にどんな効果があるんだ?」

「秘密じゃ、と言いたいとこじゃが誰かにスキルを見せれば解るじゃろ。」

「要は比べれば良いんだろ。」

「それじゃあミヤビのスキルを見せてくれ。」

「あいよ。」


方術LV5

錬金術LV3

格闘術LV5

斧術LV4

鑑定LV3

夜目LV3

危機感知LV3

制空権LV3

魔力制御LV4

気配感知LV2


EX〈エクストラ〉スキル

消費魔力軽減LV1


スキルポイント15


「はぁ~。これはどちらを言うべきか。」

 ミヤビのスキルを見てクラウスは歩きながら首を捻って考え込む。

「一人納得してないで説明しろ。」

 ミヤビが空かさず説明を促す。

「そうだな。じゃあまず皆に俺のスキルを見せるよ。」


スキル

剣術LV2

槍術LV2

盾術LV1

鑑定LV2

気配感知LV2


スキルポイント20


 クラウスのスキルはレベルを除けば最初に見たのと変わらない。

「私もこんなものですね。」

「まぁ、このくらいですよね。」

「最初ですし大差ないですよね。」

「…………」

 三人の反応は似たり寄ったりだがミヤビだけは無反応を決め込んだ。クラウスのスキルを一目見て麗華の言った副次的効果が分かったからだ。そしてその効果がどれ程有益なのかも。

「見せるか?」

 クラウスもそれが分かっているからこそ親友としてミヤビに確認している。

「まっ、他に口外しなければ良いんじゃないか。」

 だがミヤビは軽い口調で他のメンバーにスキルを見せていく。三人とも驚いていたがルイはミヤビが想定の上を行くことに慣れているので納得していた。

「それでどうしてスキルがこうなった?」

「夜目と気配感知はポイントで取ったが他は修業の成果だ。いや、制空権と危機感知は麗華に夜襲われた時にいつの間にか取得してたな。」

「「「えっ!?」」」

「お主!その言い方は語弊があるじゃろ!」

 ミヤビがわざと誤解されるように言ったので当然である。ルイは昼食の時に一度聞いて、クラウスはルイからその事を聞いていたのでミヤビの悪戯に呆れていたがスイとカリンは足を止める程の衝撃を受けていた。

「麗華さんは百合なのですか?」

カリンが恐る恐る聞くと、

「誰が百合じゃ!猿共を追っ払うのに巻き込んだだけじゃ。それにあれは入門試験じゃ!人聞きの悪いこと言うな!」

「はっはっはっ、冗談だ冗談。」

 ミヤビは笑って流すがルイが話題転換ともに要望を口にする。

「それが冗談なのは良いんですけど年齢詐称は解いてほしいです。私もクラウス君もミヤビ程図太い神経してないのでちょっと心苦しいです。」

「だな。」

 クラウスも相槌を打つとスイとカリン、麗華が首を傾げる。ルイが言葉を続ける。

「すいません、スイさん、カリンさん。ミヤビの悪戯に付き合わせてしまって。」

「は、はぁ……」

 状況が飲み込めず曖昧な返事しか返せないカリンに代わってスイが会話を続ける。

「ミヤビさんの年齢の詐称、私達が聞いた今年大学卒業ではないと言う事ですか?」

「ミヤビ、後の説明はお願いします。」

「もうちょっと引っ張るつもりだったがお前らがそう言うなら仕方ないな。」

 ミヤビがスイとカリンに会った時は今年卒業・・・・としか言ってなかったが二人が就職の話をしたのでミヤビは勘違いに気付き、嘘ではないが真実ではない話を続けた事を説明した。

「つまり、私達の勘違いしていただけなんですね。」

「そう。オレ達は今年高校卒業で大学に就職もとい進学するって事で、年はスイとカリンより一つ年下だな。」

 説明を終え、くっくっくっと笑っているミヤビに、ルイとクラウスは漸く肩の荷が降りたとでも言うような顔をしていた。

 状況を理解したスイは表情が余り変わってないが少し眉を顰め、カリンは明らかにに落ち込んでいる。

「ミヤビ姐さんじゃなくてミヤビ姐ちゃんだったなんて………」

 姐は外さないのかと皆が思ったがミヤビが更に爆弾を落とす。

「次いでにちゃんじゃなくて君だからな。」

「「えっ!?」」

 爆弾発言に反応したのはカリンとクラウス。カリンは単純に性別の違いに驚き、クラウスは性別に関してはまだ引っ張るものと考えていたのであっさりばらしたので驚いたのだ。

「流石に風呂は男女で時間をずらさないといけないからな。いくらオレの見た目が誰もが見惚れる美女と言っても男が女と一緒に風呂に入る訳にはいかないだろ。このままじゃ風呂まで一緒に入る勢いだしな。」

 ルイ、スイ、カリンの美人三人の入浴光景はさぞ眼福ものだろうが変態の汚名を付けられるのは勘弁したいとミヤビは思う。

「それにデカイ風呂に一人で入るのは寂しいだろう?」

「別に寂しくない。」

 からかわれているのは分かっているので毅然とした態度で答えるクラウスにミヤビは脇腹をつつく。そんな様子をうっとりとした表情で見ているルイ。彼女にとって妄想を掻き立てる程良い光景だったようである。

 驚き過ぎてまったく反応していないカリンの背中を押して歩くスイ。彼女も驚いているがどこか納得した様子でもあるがそれとは別に気付いた事があった。

「でも今の時期、受験生は大変だと思うけど授業に出なくていいの?」

 誤解が解けたスイは少しくだけた口調でミヤビでなくルイとクラウスに聞く。

「俺達も進学先は決まったので大丈夫です。」

「クラウスなんてこれをやりたいが為に推薦をもぎ取ったようなものだからな。オレとルイで勉強を見てやった甲斐がある。」

「いつもちゃんと感謝してるぞ。」

「私も兄さんも分かってますよ。」

「皆優秀だねぇ。同じ大学?」

 漸く復帰したカリンが口を挟む。

「そうですね。家から近くて偏差値が高い所を選びましたから。」

「車で三十分、スポーツ科学部で偏差値60くらいだったか?スポーツ推薦の割りに学力が必要だったからクラウスは本当に大変だったな。」

 スポーツ推薦は大体全国大会に出場してないと受けられないがそれに加えて学力も必要だ。

「皆スポーツ推薦?何をやってたの?」

 スイが続いて質問すると、

「空手。」

「私は弓道です。」

「俺は剣道です」

と三人とも簡潔に答えた。

「じゃあ皆武術仲間なんだね。アタシは空手でスイは薙刀だから。」

「あぁ、だから槍なのか。」

 カリンの言葉にスイが槍を背負ってる理由を知り、ミヤビは手をポンッと叩いた。槍と薙刀では扱い方は違うが形状が近いからだろうと予測したがカリンの背負う二つの盾の意味が分からない。

 クラウスとルイも同じらしくカリンに視線を向ける。視線に気付いたスイが説明する。

「カリンは最初、剣と盾を使ってたの。」

 しかし、空手の間合いに慣れているので剣の間合いがやりずらかったそうだ。何回か魔物と戦うと間合いが素手に近いからか剣よりも盾を振るう事が多くなり、蹴りも使うようになり、最終的に剣を仕舞って攻撃を盾で防ぎ、盾と素手で殴る形になった。だが重量のバランスが悪く攻撃のタイミングがずれる事もあり両手に盾を持つようにしたらしい。スイがアタッカー、カリンがタンクの役割でやっているので防御力アップに丁度良かったようだ。盾を持つ分若干攻撃速度が遅くなったが問題ないそうだ。


「お主等の話もよいが魔物も近付いておるから気を付けよ。」

 麗華が言うとミヤビとクラウスの気配感知が反応し始める。

「魔物が近付いてるけどどう戦うか?と言ってもルイとスイ以外前衛だけど。」

「そうですね。このパーティでは矢を消耗する必要はなさそうですし私もルナと一緒に前で戦いましょう。」

「私は魔術士らしく後ろから魔法を使ってる。」

「アタシは前で守るのが役目ですから!」

「俺も前で斬るしかないからな。」

「それじゃあオレは新装備の具合を確かめるとするか。」

 そして近付いてくる魔物の方に目を向ける。

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