第13話 アウル装備
滝行二日目。昨日の滝行の後の方術の修業でスキルと一緒に職業レベルが上がったが朝の狩りでは種族レベルは上がらなかった。
「今日は滝行の後昼食摂ったら街に降りるぞ。」
朝食中に麗華が今日の予定を告げる。
「今日は何故?」
「お主の修業に使う丸薬の材料の買い足しじゃ。それなりに貴重な材料じゃからまとめ買い出来る数もたかが知れてるのじゃ。」
一つ50万Gする材料も使っているらしい。修業の為に必要とはいえ、まとめ買い出来ると言う麗華の財力は相当のものだ。
(流石年の功だ。)
とミヤビが思っていると、
「お主、失礼な事考えておらぬか?」
麗華が鋭く眼光をミヤビに向けるが
「金は何処から出るのかと思っただけだ。」
本人はどこ吹く風と聞き流す。
「まぁ、良い。お主も装備の受け取りの予定であったろ。」
「覚えてたのか?」
「お主の修業にも関わるからの。」
そして朝食後、魔力供給で街まで走っていくのだった。
チャリンとドアベルと一緒に木製の扉が開く軋む音が店内に響く。
「いらっしゃい。あんたはミヤビって言ったっけ?」
ミレーはミヤビを覚えていたようだ。
「覚えていてくれたか。装備を受け取る前に聞きたいんだがここは素材は売れるか?」
「皮と糸、後鱗とかなら買い取ってるよ。」
「それなら先に色々と売りたいんだが大丈夫か?」
「問題ないよ。とにかく見せてみな。」
ミヤビがアイテムボックスからアウルベアの毛皮を27枚、ワイルドボアの皮を16枚、レッドボアの皮を4枚取り出して並べる。
「随分溜め込んだものだね。状態も悪くないし合計で21200Gって所だね。」
皮の状態を一つ一つ見てミレーが口を開く。
「装備代を差し引くとどれくらいだ?」
「各部位で1600Gで、服が上下一着1400Gで余った分はサービスで作っといたから差し引くと11800Gね。最後に細かい調整するから着替えてくれるかい?」
「そのつもりだ。」
「着替えは奥の部屋にあるからそこでしてくれ。」
「はいよ。」
ミヤビは奥の部屋に着替えに行く。
「調整の必要はないみたいだけどこの装備が似合う男って言うのも気持ち悪いわね。」
「それが客に言うセリフか?」
アウルベアの青い毛色を基調に太腿近くまで裾を伸ばした半袖の服と黒に染めたショートパンツ、肘まで覆う青色の革籠手、腰で締められた黒色の革ベルトとヒールのない膝まで覆う青い革のブーツ、首に巻かれている藍色のスカーフ。
見える肌は膝上から覗く太腿と二の腕のみ。だが、ミヤビの銀髪と相まってスラッとした長い足は誰もが思わず見入ってしまう程魅力的である。
「細長い足が羨ましいね。」
NPCであるミレーも口にしてしまう程に。
「ありがとよ。調整の必要がないならこのまま着て行っちまうが構わないか?」
「構わないさ。ほら、代金は受け取ってくれよ。」
ミレーから11800Gを受け取りミヤビは礼を言って鍛冶屋に向かった。
「頼もう!」
鍛冶屋の扉を勢いよく開ける。
「娘っ子がなんじゃあ!?」
「前に頼んだ格闘用の籠手を作ってくれ!」
「この間の娘っ子か!?下地は何れだ!?」
「これだ!!」
鉄を叩く音が止み親方が出てくる。ミヤビは着けてた革籠手を外して親方ダンブルに差し出す。だが、ミヤビから革籠手を受け取らずダンブルがまじまじとミヤビを見る。
「斧を見せてみろ。」
背負っていた斧を差し出すとじっくり見ていく。
「持て余してる訳じゃなさそうだな。随分激しい使い方してるな。両刃ともだいぶ数も斬って刃の切れ味が悪くなっているな。だが手入れはちゃんとしているようだな。油汚れはない。」
武器の磨耗具合から使用者の情報を得る、正しく職人の目なのだろう。
「それで籠手の事なんだが実を言うと仕立屋から予め下地の籠手を貰って既に加工済みなんだ。」
「それは初めて聞いたがそしたらこの籠手は何なんだ?」
ミヤビは自分で持っている籠手を見てそう思った。
「まぁ、とにかく持ってくるから待っていろ。」
ミヤビの斧を持ってダンブルは工房に行くと籠手を持って戻ってくる。
「俺の斧は?」
「今研いでるから待っていろ。それよりこいつだ。着けてみろ。」
ミヤビは持ってる籠手をアイテムボックスに仕舞うとダンブルから籠手を受け取りその場で着けてみる。
「へぇ、良いじゃねえか!」
動作を確認しながらミヤビは歓喜していた。
ダンブルから受け取ったのはガントレットのような構造で肘まで鋼鉄で保護された籠手だ。頼んでおいたアウルベアの爪の装着が見事であったのだ。手を握ると爪が引っ込み指を伸ばすと爪が出てくる。これなら握る時に掌に爪が当たることもなく斧を振る邪魔にならない。
「気に入ったようだな。此方としても良い出来で売るのが勿体ないと思っているがサイズが合わないから仕方なく売る。7200Gだ。」
文句などあろうはずもなくミヤビは金を差し出す。
「お前さんなら歓迎する。」
「あぁ、また来るぜ。」
そう言って研いで貰った斧を受け取りミヤビはダンブルと別れた。
アウルレザースカーフ(頭)
アウルベアの毛皮を藍色に染色して作ったスカーフ。防御性能はほとんどない。
防御力+2
アウルレザーチュニック(上)
アウルベアの毛皮をふんだんに使った青色のチュニック。見た目も着心地も布の感覚だが性能はお墨付き。
防御力+10
アウルスティールガントレット(腕)
アウルベアの毛皮を下地に使って鋼鉄で加工した籠手。指先にアウルベアの爪を付け貫手の威力を向上させている。
防御力+15
攻撃力+18
アウルレザーパンツ(下)
アウルベアの毛皮を黒色に染色して作ったショートパンツ。動きやすく、太腿から覗く足が長く魅力的に見える。
防御力+6
速力+3
アウルレザーベルト(腰)
アウルベアの毛皮を黒色に染色して作ったベルト。留め具には鋼鉄が使われている。
防御力+4
アウルレザーブーツ(足)
アウルベアの毛皮を使った青色の膝まで保護されたブーツ。足先と脛、膝当て部分に鋼鉄が仕込んであり武器としても使える。
防御力+10
攻撃力+10
鑑定して見ても序盤では十分な性能だろう。だがステータスの装備欄には追加で補正が掛かっていた。
アウルシリーズ装備
攻撃力+8
防御力+8
試しにスカーフを外したら効果が減少したので全て必要と言う訳ではないようだが、ミヤビとしては元々まとめて作った方が楽と言う考えで作って貰ったのでシリーズ装備によるステータス向上は思わぬ収穫であった。
「装備も揃った事だし師匠の所に行くか。」
そしてミヤビは意気揚々と街を歩いていく。
「そう言えば師匠と待ち合わせしてないが何処に行けば良いんだ?」と、
麗華を探すために街中を歩き回り服装と容姿からNPC、プレイヤー共に周囲から注目を受けていた。