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第10話 錬金術と氷狼ガルム

「思ったよりも遅かったの。」

 錬金術ギルドに入ったミヤビに対する麗華の第一声だ。

「途中でナンパから人助けするのに決闘をしてたし、場所知らなかったからな。」

 ミヤビは麗華に事情を説明すると。

「まっ、良いじゃろう。それよりも先ずはポーション製作じゃ。山の麓で見た時は作り方がなっておらんかったからな。しっかりと教えてやるぞ。」

 そして麗華の錬金術講座が始まった。

「とまぁ、やり方さえ分かってしまえば難しい物ではない。」

 ミヤビの目の前には自分で作ったポーションがある。基本的なやり方は間違ってなかったがやはり細かい所がダメだったようだ。麗華に教わり手順とタイミングを説明通りにやったら問題なく出来た。買ったレシピに自分で細かい説明を加える。


(やはり重要なのは優秀な師だな。)

 ポーションに限らず解毒薬、気付け薬、兵糧丸など錬金術で作る物は痒いところに手が届く感じで分からない所をしっかり教えてくれるので覚えるのは容易い。

 昼食を挟みながらそんな物を大量に作っていたので錬金術のレベルも軽く2レベル上がった。

 ギルドで受けたクエストもポーション30本の納品、解毒薬の20本の納品、気付け薬20本の納品と麗華に教わった物なので納めてクエストクリア。報酬で2500Gを手に入れたので悪くはない。ミヤビの所持金はこれで6440Gだが装備一式と籠手の加工代にはまだ足りない気がした。

(討伐クエストで荒稼ぎするか。)

「儂は先に戻っとるから夜までに帰ってくれば構わんぞ。最後の修業だけは外さんからな。」

「あぁ、待ってくれ。赤桃山で出来る討伐と素材納品クエストを幾つか受けてくるから。」

「ほう、修業も出来て一石二鳥と言う訳だな。」

 ミヤビは錬金術ギルドでクエストを受けてから麗華と一緒に街を出た。


 帰りも麗華の魔力供給付きで走って帰った。山の登りが大変だったのは言うまでもない。

 麗華は家に着くと野菜を置きに台所に向かい、ミヤビはそのまま更に山を登り始める。麗華の魔力供給がないのでMPを無駄遣いしないよう地力で登るしかない。骨は折れるが問題なく登れる。

「そう言えばどうやって魔物探すか。」

 ミヤビは危機感知のスキルは持っているが気配感知は持っていない。

「まぁ、あって困ることはないし取るか。」

 スキルポイントを5消費して気配感知スキルを取得して残りのスキルポイントが10になる。

 現実リアルでも人混みでなければ何となく生物の気配は感じるミヤビであったが気配感知でもう少しハッキリと感じるようになった。

 生物の気配のする方に黙々と進むと視界にアウルベアよりも一回り大きい猪がいた。


ワイルドボア

性別─雄

状態-健康

LV 13

HP 197/197

MP 47/47

筋力 106

体力 94

知力 30

精神力 32

敏捷 65

器用さ 33


 最初に会ったアウルベアよりもレベルが4高く、名前に負けず野生溢れる体格でミヤビの姿が完全に隠れる大きさだ。口元から太い牙を二本生やしておりこれを使って敵を突き上げるのだろう。

 ミヤビは気配を殺して近場の木を登っていく。狩りの基本は奇襲である。遠距離攻撃がないので今出来る最も効率の良い一撃を叩き出す為に視界に入らず斧の重さを利用出来る高所から襲撃がベストである。

「〈スマッシュ〉」

 ミヤビは飛び上がると背中から斧の柄を長く持ち大きく振りかぶる。重力にしたがってワイルドボアの真上に落ちていく。初めて〈武技〉を使ってタイミングを計り首の辺りを斧で垂直に振り下ろす。

「ブギュイイイイ!」

 不意打ちに苦悶の叫びを上げた猪が暴れる。武技発動の硬直で反応が遅れる。コンマ02秒ではあるがワイルドボアの牙に対する回避が間に合わず咄嗟に斧を盾にして自ら後ろに跳ぶ。

「おわっ!」

 結構盛大に吹っ飛ばされたミヤビだが呑気に構える間もなくワイルドボアが方向を変えミヤビに突っ込んでくる。

 流石、猪突猛進。真っ直ぐ突っ込む速さはステータス以上のものを感じる。ギリギリまで惹き付け【纏魔】を使ってその場から横に避ける。

 その際斧の状態を確認するも掠り傷一つしかない。

(結構強い力だったからもっと傷付いたかと思ったが流石が親方の力作だ。)

 だがもう受けるつもりは無い。ミヤビはすぐに方向を変えたワイルドボアを更に回り込むように

素早く移動して最初とは反対側に斬りかかる。斧の力もあってかアウルベア相手に初級装備の手斧で斬ってた時よりも簡単に皮を切り裂ける。

 ミヤビは一太刀浴びせるとすぐにその場を離れ、また首を狙って斬りかかるヒット&アウェイを繰り返している。

 昨日と今朝の狩りでミヤビが思ったのは倒し方によってドロップする素材の数や種類が変わっているのではないかと言うことだ。傷が少ない方が勿論数を多く落とすし、もしかしたら一定の倒し方でないと落とさない素材もあると考えている。

 なので今回は頭と胴を分ける戦い方をしている。ミヤビが動き回っているため狙いが定まらず立ち往生していたワイルドボアは数分後に素材を残して消えていった。

 今回ドロップした素材はワイルドボアの皮2枚と肉3つ、頭1つ。そして種族レベルは上がらなかったが斧術のスキルレベルが上がった。

 

 気配を探って山を登る。まだ馴れないが獲物との距離が確実に近付いているのが分かる。そして見付けたのはワイルドボアだった。

(またお前か。)

 さっきと同じ様に奇襲から始めたが今度の奇襲は脳天目掛けて斧を振り下ろした。ミヤビに気付いたがそれよりも速くミヤビの斧がワイルドボアの脳天を捉える。

「ウラァアアア!」

 武技を使わず気合で斧を振り切る。派手に血飛沫を上げて暴れだす。ミヤビはすぐに距離を取って様子見をする。

 ワイルドボアは少し暴れるとミヤビに向かって突進して来るがさらりと躱されそのまま木に激突する。

 明らかに傷を抉る行為であるが脳天を斬られその判断も出来ない状態なのだろう。暫くミヤビを見付けては突進して木に激突していたがそのうちに力尽きて倒れた。

 今度は皮2枚と牙2つをドロップした。


 再び山を登り始めたて暫くするとミヤビは不意に足を止めた。気配はこの先を示しているがそれ以上に危機感知のスキルが警鐘を鳴らしているのだ。ワイルドボアなんかでも一応鳴っていた危機感知ではあったがここから先は比較にならない程危険なようだ。

(始めたばかりで死ぬ気はないから引き返すか。)

 何も気配を感じるのはここだけではない。とミヤビは即座に引き返すと急遽危機感知が警鐘を鳴らす。

(はっ?何で?)

とミヤビは思うもすぐにその場を離れる。するとミヤビのいた場所にもの凄い勢いで何かが墜ちてきた。派手な音と共にの突風が吹き荒れミヤビは斧を地面に叩き付けて固定し、伏せて斧と腕で目を庇うが力が強く斧が引き摺られていく。それと一緒に周りの魔物の気配が一斉に遠ざかる。


 突風が止み立ち上がったミヤビが見たのは出来たクレーターの真ん中に大きな爪が地面に突き刺さっている光景だった。

(よく無事でいられたものだ。)

 周りにあった木が倒れているのにミヤビは下敷きにされなかったのだ。

 墜ちてきた爪が何なのか分からないので鑑定したのだがレベルが足りなくて鑑定出来ないと表示された。

 【纏魔】で爪を見ると大きい魔力が爪に宿っていた。触ってみると氷のように冷たかったがアイテムボックスに入れるだけだったので一瞬で済んだ。アイテムボックス内ならと思ったが???の爪で表示された。

 何なのか分からないミヤビであったが気配感知が一切反応しない事からここにいてももう意味がないと判断して麗華の家に引き返すのだった。


「ただいま師匠。」

「おお、帰って来たか!少し上の方でいきなり魔物の気配が遠ざかったのじゃが何があったか知っとるか?」

 家に帰ると麗華が質問を投げ掛ける。

「全部を知ってる訳じゃないが魔物が遠ざかった原因はこれだな。」

 テーブルの上にゴトッと鈍い音を起てて置かれた大きな爪を見て麗華は声を荒らげた。

「ガルムの爪じゃと!」

「強そうな名前の魔物だな。」

「そりゃそうじゃ。氷狼ガルムはSランク指定の魔物じゃからな!その素材ともなればかなりの値が張るぞ!」

 麗華の目は欲にまみれているのでミヤビはすぐにアイテムボックスに仕舞った。

「ああぁ……」

 落ち込んだ様子を見せる麗華。

(麗華にはもう見せないでおこう。)

 仙女と言えど俗世とは離れられないようでミヤビは心の中で誓った。


「まぁ、原因は分かった。じゃがどうしてこの山にガルム何ぞ来たのかの?この山は活火山じゃから頂の方は熱くてガルムの生息出来る所じゃないはずなんじゃがの?じゃがまぁ生きてる事はないかの。」

「何でだ?」

「この山の頂にもSランク指定の魔物が居るからな。」

 高位の魔物は多少環境が変わったくらいでは魔法の影響がないが活火山のように火属性の魔力が満ちている場所で反属性の水、氷の魔法が力を発揮できる筈もなく、火属性の魔法は威力を増す。


 そう言う訳で魔物同士の縄張り争いの末ガルムは敗れただろうと言うことらしい。

「で、その一部がこうして飛んできたと?」

「恐らくの?まぁ何にせよ運の良い奴じゃ。じゃが決して表に出すでないぞ。」

「分かってるよ。それにこんな上物、武器に使う方が良いに決まっている。Sランク素材を扱えるまでに成長してから使うさ。」

「分かってるなら何も言わん。それじゃ夕飯の準備をするかの。」

 ミヤビは麗華と夕食を摂ると修業を始めるのだった。





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