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プロローグ 双子の始まり

思い付いたが吉日。いつも通りのんびり書いていこうと思います。

「止め!」


 主審の指示に従い元の位置に戻りる。相手も同様に戻るとその中心で主審がこちらに向かい斜め上に手を上げる。


 この瞬間、空手の全国大会決勝戦が終わり、如月きさらぎクライン煌雅こうがの中学、高校6年連続優勝が決まった。


 ミドルネームのクラインはロシア人の母エレナの姓であり、煌雅はロシア人の母と日本人の父雅紀との間に産まれたハーフの双子(・・)の兄である。

 身長173cm、体重74kg、髪は母親譲りの銀髪、目は父親譲りの切れ長に母の蒼眼であり、肌は父同様に標準な日本人の肌。体格は端から見ると細く見え、顔がなまじ整っている為髪が少し長いと女子と間違えてナンパされる事もしばしば、声も男にしては高い為更に拍車を掛けている。男にしては低身長、高声であることにコンプレックスがあり髪は極力伸ばさず服装も男っぽい物を着る事が多い。


 そんな特徴的な彼がインタビューやら取材やらを適当に流しても中々話題は尽きない。それにはもう一人の人物も関わっている。

 煌雅の双子の()如月・クラインしずくだ。

 身長168cm、体重は・・kg(乙女の秘密)、髪は父譲りの濡れ烏の青みを帯びた黒色を背中まで伸ばし、母親譲りのパッチリとした目に蒼い瞳、同じ母親譲りの白い肌に出るところは出て引っ込んでるところは引っ込んでるメリハリのある抜群なスタイル。顔の形は二卵性双生児であっても煌雅と似ており、街を歩けばナンパとスカウトされるのは当たり前うっかり視界に入れてしまったカップルの男は見惚れて隣の彼女に平手打ちを受け破局の危機になることもあると言う正に傾国美女。但し家族と一部の者しか知らない腐った一面があり、それが表に出ると周りから引かれることもある。


 そんな雫が所属する弓道部は毎年全国大会に出場する強豪校で今年で団体戦3年連続優勝を果たした。優勝に貢献したのは一年から大将を任された雫であり、個人戦も3年連続優勝を果たした。


 双子の成績は無論才能だけではない。如月家は日本屈指の武術家であり優秀な警察官、自衛隊、ボディーガード等を代々輩出した一家であり、そこで産まれた双子もまた武術に関する教育は幼少から受けている。練習環境に事欠かず部活も一時間程度参加したら家で稽古してたくらいだ。夏休みとかの長期の休みには合宿に如月家を利用することもあったりする。


 特徴的すぎる双子をメディアが放っておく訳もなく『美男美女の双子の強さの秘密』等と根も葉もない記事があったりするが比較的早く収束する。と言うのも父雅紀が警察官の武術顧問をしていることもあり情報封鎖は御手の物である。


 双子は校内で常に上位3つに収まる学力もあり大会の成績が悪い方向に行く訳もなく二人共早々に近く有名大学の推薦が決まった。


「退屈だ~。」

 部活の引き継ぎも終わり月日が経ち推薦も決まってやることがなく中学の時代からの友人に愚痴を溢す煌雅。だが、このセリフを吐くのは今に始まった事ではない。


「お前が求めるようなものは現実ではほとんど起こらないから諦めろ。やりたければVRMMOでやれ。今度発売するVRMMOゲームはお薦めだぞ。俺がβテストでやったから感覚は保障する。お前がやれば間違いなく嵌まる。」


 そこまで念押しして薦めるVRゲーム『World・Guardian・Stories』今までのVRMMOは現実とゲームの感覚にズレが見られどうしても行動に遅れが出るといったことがあったがこのゲームでは解消されているらしい。


コウ(煌雅)にこれやるよ。いつも勉強では世話になってるからな。雫ちゃんと一緒にやってみてくれ。」


 親友氷室悠真は煌雅にゲームの優先権チケットを二枚渡す。


「ここでならお前の求めるギリギリの戦いを見付けられると思うぞ。それじゃあ俺は部活にちょっと顔出してくるからまた明日な。」

颯爽と駆けていく親友を後目にチケットを眺める。


「発売日今週じゃねえか。もう3年は自由登校だけどこれから試験の奴は大変だな。」


 剣道の全国2位である氷室悠真が薦めるくらいだ。運動能力では煌雅に劣るものの身長194cm、体重85kgと高身長で室内競技だというのに肌は浅黒く、爽やかな雰囲気と悪くない顔立ちで校内の女子からの人気も高い。ではなく煌雅程ではないが運動力のある悠真が薦めるゲームなのだ。煌雅も興味が湧く。


 それなのにこれから試験がある者達は試験が終わるまでこのゲームを断念せざる負えないことに煌雅は同情したのだった。


「あら、兄さんも今から帰りですか?」

 教室を出ると隣の教室からこっちに向かって来る雫を見る。

「ああ、家帰ったらどうする?」

 隣に並んで歩きながら雫が答える。

「いつも通り稽古付けて貰ってお風呂入って夕飯を食べて少し勉強して寝るくらいですね。」

「要は暇なんだな。」

「ええ、暇ですね。」

「今日の予定はどうでもいいんだ。」

「と言いますと?」

「今週の金曜日の予定を空けといてくれ。悠真から面白そうな物貰ったから朝一で買いに行く。」

 煌雅はそう言うと懐からチケットをちらつかせた。

「クラスの女子でもやってみた子がいましたけど随分凄いゲームらしいですね。ネットでの評判も右肩上がりのようですよ。」

「そこまでとなると普通にやっていても面白味に欠けるか?」

「それよりもゲームの情報を調べるべきではありませんか?」

「それもそうだな。」

と他愛ない話をしながら家に帰っていった。


 発売日当日。宣言通り朝一で近くの大型ゲームセンターに買いに向かうのだが。

「なぁ、雫。オレこの格好じゃなくても良くないか?」

「いえいえ、兄さんの髪の色は目立つのでとことん変えましょう。」

「変装なら未だしも女装する必要はないと思うんだが。」

「その場の流れです。準備も出来ましたし早速行きましょう。」

「はぁ」

 煌雅の溜め息を最後に家を離れる。煌雅は既に女装に対して諦めが入っている。これはたまのアルバイトと言う名のお手伝いで護衛の依頼があったりして意識誘導や男性恐怖症等を理由に女装をする事がある。残念であるがそれが功を奏する事が多く、ハッキリと言ってしまえば慣れてしまっていた。

 その上今年は最後と言うこともあり高校の文化祭の変わり種、男子が女装を、女子が男装をして誰が一番美しいかを決める逆ミスコンなどというものに参加したら満場一致で優勝してしまったと言う黒歴史を持っている。ノリと勢いに乗ったとはいえ煌雅本人は結構気にしているし、意外と気に入ってたりもする。


 いざゲームセンターの前まで来ると行列が既に出来ていた。

「ゲームの為にこんなに並ぶとは酔狂なのか暇なのか。」

「私達もその内に入ってますよ姉さん(・・・)。」

「はぁ、今は許す。この列二つあるけどどう違うんだ?」

「店の人に聞いてみます?」

「その必要はなさそうだ。」

 煌雅がそう言うとスタッフが大声をあげながらこちらに向かっている。

「優先権チケットをお持ちのお客様は向かって左側の列にお並びください。」

「だってさ。オ、ワタシ達は向こうのようね。行きましょう。」

 雫の手を引いて向かう。

(昔と変わらないなぁ兄さん。)

と思いながら雫は素直に手を引かれて向かう。


 開店まであと一時間以上あるのに一般と違って優先権チケットの列は少ないがそれでも50人近くが既に並んでいた。

憂鬱な気分で一緒に並ぶと後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

「あれ?雫ちゃん?」

「悠真君?」

「って事は?」

「何も言うな悠真。」

「ああ、うん何も言わないでおくよ。だから写真を一枚撮られてくれ。」

「断る!」

 悠真の登場のお陰で開店まで退屈はしなかった。


 開店してから購入まではスムーズに進んだ。流石優先権チケットと言ったところだ。

「悠真のお陰で労せず買えて助かったよ。今度なんか奢るよ。」

「それはありがたい。ところでキャラクター作成の目処は立っているのか?」

「ああ、時間は有ったからな。雫と一緒に色々考えてみた。」

「そうか。俺の予想では幾つかのアップデートでクランが実装されると思うからその時はコウのクランに入れてくれ。」

「そこまで嵌まるか分からないぞ。」

「この前も言ったようにそれについては保証するよ。絶体に面白いから。」

「分かったよ。でも顔が判らないんじゃどうしようもないだろうから最初だけ待ち合わせるか?」

「確かにそうだな。インしてから正面にある店の所でいいか?一応キャラクターネームを言っておくとクラウスだ。」

「場所に関してはそれでいいがなんの捻りもないキャラクターネームだな。」

「それでいいんだよ。じゃあまた後で。」

 悠真と別れると煌雅と雫も家に向かった。



 家に着くと早速2台のパソコンを起動しそれぞれソフトを入れてVRゲーム用のヘッドギアを着ける。

「それじゃあやってみるか」

「はい、兄さん」


「「World・Guardian・Stories起動!」」



 キャラクター作成を終えた煌雅は街に降り立つ。

「確かに正面に店があるな」

 悠真の所に向かいたいところだが、雫がまだ終わっていないようだ。だがすぐに来たようだ。


 雫の姿見は現実と変わらない。ただ違うのは髪の色が薄い金色で耳が長く尖っていると言うところを除けばである。ファンタジーでお馴染みのエルフと呼ばれる種族である。頭の上にはルイ・スメラギとプレイヤーネームが付いている。そして腕に大きな卵を抱えている。

「ルイ、それがテイマーの最初に貰える卵か?」

ゲーム内でリアルネームを呼ぶのはマナー違反だと言うことでキャラクターネームで呼ぶ。

「そうですよ、ミヤビ。それにしてもそれで良いのですか?」

「ああ、アイツの反応も面白そうだからな。じゃあ行くか。」


 正面の店に向かう。周り視線がこちらを見ているが分かるが気にせず進む。店の前には確かにクラウスと表示されてるプレイヤーがいる。現実全く変わらない体格で。違うのは髪が金髪なのと瞳が赤色な事くらいだ。これがこの世界における人族なのだろう。

「お待たせクラウス君。」

「大丈夫だ雫ちゃん。そんなに待ってない。それよりコウは……」

どこにいる?と続きたかったのだろうが言葉が途中で止まる。

「よぉ、クラウス待たせたな!」

 そしてクラウスは自分の頭に手を当てる。

「どうしてそうなった?」

 呆れ混じりに聞くと

「面白いキャラだろう?」

と当然の如く返る答え。クラウスの眼にはいつもの親友の顔に、頭の上に髪の色同様の銀色の獣の耳が付いて見える。獣人族の特徴の一つであり、後ろを向けば同じ獣の尻尾も付いているのが見える。耳と尻尾から獣人族の中の狼人族のようだが問題は髪の長さにあった。いつもの短髪ではなく腰よりも下の位置まで伸びて軽くウェーブが掛かった髪で親友のクラウスにして一瞬美少女に見えてしまったのだ。

「どうよクラウス。オレの新しいスタイル、男の娘スタイルは!」

「ノーコメントで。」

「素直じゃねえな。まぁいい、早速外でバトってみるか。」

「まぁ、それでいいか。」

「「じゃあチュートリアルよろしくな(ね)!」」

 溜め息を溢したクラウスの後を付いていく双子であった。





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