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解放と激励と



 仲間探しをしていたはずが、なぜかギルドを襲撃する事になったのだが、ギルドの中にも兵隊がウロウロしていた。全員銃で武装し、その銃から放たれる弾丸は掠るだけで全身が麻痺し、死に至る毒が付加されているようだ。敵のうち、誰かのスキルによるものだろ。


 しかし、敵の本拠地でボスを守りながら、しかも敵は殺さずっていうのは厄介、だと思ったのだが。アリアの規格外とも言える戦闘能力のおかげで、そこまで不都合はなかった。向かう先で敵が潜んでいそうな場所を俺の能力で偵察して、敵の場所を探る。それをアリアに伝える。アリアが先に乗り込み全員反撃する間もなく沈黙。そんな感じでギルドマスターがいる場所まで難なくたどり着いた。


「よくここまで来れたな。ただの馬鹿ではないようだ」


 でっぷりと太り、宝石を身に纏った男は、癪に障る笑みをこちらに向けた。何でこんな奴に付き従う部下がいるのかさっぱり分からない。そんな奇特な部下がボスを護るように部屋に密集して、こちらに銃を向けている。しかし、見当ちがいな台詞を吐いてる。アリアは馬鹿だがここまでたどり着けているのだから!


 男の問いかけに答えるでもなく、一服しだすボス。静まり返った部屋に高級ライターの開閉音が響く。細く煙を吐き出し、ボスが口を開いた。


「お前を護ってるそいつら、部下でも何でもなさそうだが?」


「ふははは!何を言うのかと思えば・・・・・そうだ、こいつらは俺の“奴隷”だ!・・・ところで、貴様の連れているその女、なかなか綺麗ではないか。お前らを殺した後で俺の奴隷にするとしよう。」



 ジロジロといやらしい視線をアリアの全身に這わせる男に、当事者でも何でもない俺でも鳥肌が立つほど気持ち悪いんだ、本人は吐き気を催す可能性が高いな。

 ふとアリアを見ると、いつでもこちらに銃を向けている奴らを斬れるように集中していた。アリアのこういうところは見習わなくてはならないな。という事で、いつでもデブに弾丸が叩き込めるようスキルを発動しておく。


「アキト、デブをやれ」


「了解」


 返事と同時に引き金を引く。まったく銃を触らずに、空間操作のみで射出された弾丸は誰も防げず、散々威張っていた男が文字通り脂肪の塊に変わった。ギルドマスターをやられた報復からこちらに発砲してきたのは、たったの一名。無論弾丸は全てアリアが叩き落し、あっという間に意識を刈り取った。

 しかし、他の連中は何をしている?マスターに対して良い印象が無かっただろうが、眉一つ動かさない。まるでマネキンだ。


「やはりな。」


 ボスは苦い顔をし、先ほどまで生きていたギルドマスターのところへ歩み寄った。何かを探しているような目線の動きだ。しばらくして、脂肪の塊から宝石を一つ手に取り、アリアに向かい軽く投げた。


「アリア、砕いてくれ」


 放物線を描きながらキラキラとしたルビーのような宝石は、アリアの握力で粉砕した。この場合アリアが凄いのか宝石が脆いのか分からないな。

 アリアが宝石を砕いた瞬間、マネキンのように固まっていた連中がピクりと動いた。すると次第に瞳に光が宿り、それぞれ動きだした。

 多くの者がこの状況に戸惑っていた。俺も戸惑っている。そんな様子を見てボスが状況を説明してくれた。

 

 どうやら目の前の奴らは眷族化の呪いをかける宝石の力で操られていたらしい。宝石の名はヴァンパイアの目。吸血鬼を殺して目を加工する事で作れるらしい。眷族にされると主人の命令には背けず絶対服従してしまうのだとか。解呪方法は、その宝石を砕き、主人を殺す事だ。

 どうやら操られていた男たちは、元々砂漠に出る魔獣を討伐するのに長けたギルドだったそうだが、いきなりやってきた男にギルドを乗っ取られたそうだ。

 その際、ギルドマスターは眷族化に若干の抵抗をしたため、危険分子とみなし、剣闘士として売り払われてしまったのだとか。


「本当に感謝します!我々は長らく悪夢を見ていた気分です。この男が来てからというもの、依頼をいっさい受けず、奴隷狩りをさせられたりと散々でした。」


「気を落とすな、今からお前らのボスに会わせてやる。ついてこい!」


 ボスがそう言うと今までの重い空気が一転、明るい表情を見せる男たち。そう言えばボスが殺すなよと言った意味がやっと分かった。しかし、何故ボスはこのことが分かったのかという謎が増えたため、スッキリはしないが・・・・・・。



 ギルドを後にし、徐行するファミリーの車を徒歩で追う元リヴァイアサンのメンバー達。その後向かったのは、不思議な剣舞を披露した剣闘士の牢の前だった。そう、この男こそ本当のギルドマスターだったのだ。

 久しぶりの部下との対面に、目を大きく見開き、涙を流して喜んでいた。


「なんか、こう、偏屈そうな、頑固そうな奴がこういう泣き方すると貰泣きしそうだよな?」


 アリアに話を振ると「今の一言で私の涙が引っ込んだ」と苦情を頂いてしまった。


「なぁマスターさんよ。俺はお前に結構な額を賭けてる。部下の前で死ぬなんてマネするなよ?」


「手の込んだ激励だな。だが、俺の家族を救ってくれた事、感謝する!」

 

 そう言って深々と頭を下げる。


「よしてくれ、ただギャンブルで金をすっちまうのが嫌なだけだ」


 そう言って早々に立ち去っるボスはきっと少し照れてたのだろう。

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