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訓練終了



地下というのは時間の感覚がおかしくなる。ただでさえ日の傾きが分からないのに、ここは時計すらない。加えて今は戦闘訓練中だ。普段では考えられないくらいに集中する。時間どころか曜日の感覚までとっくに消えてしまった。あーあ、最初は美人と訓練って喜んでたのに。今じゃ戦闘ロボットと訓練してる気分だよ。


 ここのところ俺とアリアで交わした会話なんて、死にましたか?生きてます。くらいのものだ。最近は、ちょっとノイローゼ気味だ。

 ま、それも今日で終わりだろう。俺は密かに自分のスキルについて必死で研究をした。そこで編み出した技がある。その全てを今日ぶつける!


 「おはよう、アキト。今日も張り切っていきましょう!」


 「はいはい、お手柔らかに。」


 眩しい笑顔だ。だが俺は騙されないぞ。目の前にいるのは殺人ロボットだ。きっとそうに違いない。


「では、行きますよ!」


 掛け声をかけ、アリアは地面を吹き飛ばすように加速する。砂漠みたいな足場でなければもっと早いのだろう。普段はここで普通にテレポートし続けて躱すのだが、今日は一味違う。直線的な動きで向かってくるアリアに、ハンドガンで応戦。しかし、最小の動きで躱され、一太刀入れる寸前!ここで簡易テレポート。これは正に瞬間移動と言っていい。着地地点が視認できない代わりに、最速でテレポートできる。

 これを使いアリアの背後に瞬間移動する。流石の凄腕剣士も、突然敵が消えたように見えるだろう。すかさず射撃。しかし、高速の剣捌きで弾丸を弾く。追撃のタイミングを僅かに遅らせた。そこで俺の新攻撃手段、衝撃波!見えない衝撃がアリアの持つ剣の柄頭ポンメルを打つ。片手で持っていた事もあり剣はアリアの手を離れる。アリアは即座に反応して、弾かれた剣を掴もうと手を伸ばす。

 人間の反応速度じゃないよね、それ。でも、その反応も織り込み済みだ。剣を素早く転移させても僅かに間に合わない。なので剣の向きを上下反転させる。訓練用の剣で、刃の部分を握ってもケガはしない、しかしアリアのような研鑽を積んだ剣士は、一瞬掴むのをためらう。その武装解除した一瞬で俺はゲートを作り、弾丸をアリアの背中に送る。

 勿論、痛いだけなのだが、俺の勝ちだ。長い訓練に幕を下ろし、はしゃぎたい心を我慢。そして勝利の決め台詞!


「チェックメイッ!!!・・・」


 恐ろしい衝撃が顔を襲った。完全に油断していたため、その痛みは凄まじい。かっこつけに失敗した恥ずかしさも相まってちょっと涙が出た。


「あぁっ!!済まないアキト!つい!」


「うぅ・・・。つい、つい何だ!!俺じゃなけりゃつい殺してしまってたところだ!!」


「ハッハッ流石だ!アキトはタフだな!!今回は私の負けだ!」


 そう、最近アリアの本性が分かった。こいつは凄腕でも、凄い美人でもあるが、凄いバカだ。手加減もできなければ、先程のように意味不明なタイミングで攻撃をしてくる。銃を触ってみたいと言われ渡すと、暴発させ俺の眉間を撃ち抜いたり。剣を使ってはどうだと持ち掛けたと思ったら。既に俺にパスしていた剣が宙を舞い、俺の脳天に直撃させたり。仲間になりたくないタイプだ。

 まぁ、日常的に瀕死になったり即死級のダメージを負って、超回復し続けたおかげでかなり頑丈になったが、目の前で訓練用だが過激なダメージを与える弾丸を背中に受けて、笑っているバカが目の前にいると、自分の丈夫さは常識の範囲内なのだろう。


「さぁ!アキト!最終段階だ!!」


 やばい、吐きそう。これ以上の訓練って何?いつ俺を殺してもおかしくないロボットとの戦闘を終えて、その先に何がある!きっと俺は殺されるのだろう。


「最終段階は・・・そうだ、射撃訓練だ!」


「・・・・・・いや、それ普通第一段階だろ!!!」


「おぉ!順番を間違えていた!ハッハッハ済まない!一応やっておこう。」


 頭にきたのでアリアに一発撃っといた。ま、弾かれたがな。


「違う違う、的はコレだ!アキトはせっかちだな!」


 そう言って取り出したのは、ドローンのような飛行物体に的が付いている物だった。完全に意味ないよこの訓練。俺はもっと早く動くアリアに確実に弾丸をブチ込めるようになったのだぞ。でなけりゃけん制できないから。

 渋々訓練を始めると、ボスが帰ってきたようだ。


「おー、訓練やってんな!・・・って第一段階かよ。少なくとも第二くらいはクリアしたか、途中だと思ったんだが。」


「おかえりなさいボス!」


「・・・・・・ま、見てなよ。」


 もう俺は疲れた。さっさと終わらせよう、この茶番。そう思い、そこら中を飛び回るドローンだが、もはや音でだいたいの位置が分かる。空間把握は俺の専売特許だ!有効範囲あるけど・・・。

 そんな余計なことをを考えながらでも勿論全弾命中だ。


「欠伸が出る最終段階だな?アリア殿?」


「ハッハッハ!流石アキトだな!」


 皮肉だよ馬鹿!と心の中で悪態をつく。


「おいおい、これは第一段階だろ?」


 ボスがおかしな状況である事に薄々勘づいたようだ。そりゃそうだろ。ここ最近で一体何千発撃ったと思ってる。


「ボス、報告します。アキト、全訓練段階をクリアしました。」


「はいはい、お世話になりました。アリア殿」


「照れるじゃないか!私も良い訓練相手ができてうれしいぞ!」


 ん?新手の死刑宣告かな?いや、もっとたち悪い気がするよ?


「・・・・・・まさか、お前、本気のアリアに一発入れたのか?」


 驚愕したような顔のセミオン。今のささくれ立った俺の心は、そんな褒め方じゃ癒せないからな。


「勿論でごぜぇますです、ボス!」


「おいおい、よく生きてるなお前!そうか!良い誤算だぞアキト!!」


 その後ご機嫌のボスとアリアも入れた三人でバーに飲みに行った。そこでこれからの事を話された。アリアは酔いつぶれて寝ているがバカなので聞かなくても同じだろう。


「さて、今後の話だ。我々ビスミルティファミリーの派手な旗揚げには少々寂しい人数だ。そのため、この地を離れ仲間を探しに行く!」


「おーけーボス。そんで?当てはあんの?」


「当たり前だ」


 そう言いながら煙草に火を付ける。着火した高級ライターの火に照らされるボスの顔は機嫌が良さそうだ。俺が予想以上に訓練を頑張ったからだと思いたいが、恐らく酒のせいだろ。


「次に向かうのは、灼熱の町だ!」









 今後の目標が発表され、行先が告げられたところで解散となった。俺は、アリアを部屋まで送り、帰りに灼熱の国バサについて情報収集などを行った。そこは、オアシスと言われ歓楽街がある場所だそうだ。貴族が多く集まるため、娯楽施設が多くある。中でも最高の娯楽とされるのは、バサのコロシアムだ。剣闘士達を殺し合わせ、どっちが勝つか賭けるのが人気なんだそうだ。集まった情報は以上。

 急に異世界チックな溶岩と火炎地獄でなくて良かったと胸をなで下ろし、自室に帰った。



 翌朝、スーツに着替えバーの二階へ行くと既にアリアが部屋にいた。


「おはよう!アキト!良い朝だな!」


「あ~、おはよ。」


「元気が無いじゃないか!今日からバサへ向かうと言うのに、ボスから伝言だ!」


 朝から元気な奴だ。最初は美人だと思ったが、すっかり見慣れてしまった。今では動く兵器か何かに見える。ボスからの伝言は、メモによるものだった。

【おはよう諸君!灼熱の都バサへは車で向かう!運転手のアキト!車はバーの裏手にある!アリアとそれに乗り迎えに来い!俺は、この町で一番高い宿屋にいる。て事でよろしく!】

 

「なるほど。さて、社長を迎えに行くぞ、アリア」


「了解だ!」


 言われた通りバーの裏手に車があった。この間ハチの巣にされた車には見えない程ピカピカだ。運転席に乗り込み、アリアが助手席に乗る。そういえば助手席に女性を乗せるのは初めてだな。そう思い隣を見ると。


「ん?どうした?アキト!さぁ行こう!」


 この調子だ。あーあ、どうせなら会ったばかりの時に助手席に乗せたかったな。そうすりゃ少しは幸せな気分になれたのに。

 車を発進させ、この町で一番高い宿屋に向かう。車で1分くらいだ。アリアは車が運転できないらしく、後で教えてくれだとか、誰に習ったのだ?とか煩かった。この世界で車を運転できる者は少ないらしい。技能的にではなく、金銭的に。アリアが言っている事なので本当かどうか知らないが。

 宿屋の前につけて待っていると、やたらと視線を感じたため、車が珍しいのは本当なのだろう。事実この町でこの車以外の車をみていない。


 しばらくして、ボスが出てきた。この車は自動でドアが開く。観音開きのドアは地球のアノ車を連想する。この世界にも似たようなのがあるのだろうか。


「おはようございます!ボス」

「おはよう、ボス」


「あぁ、おはよう!」


 ボスは朝に弱いらしい。車に乗り込んで早々に、たばこに火をつけ、欠伸をしている。格好いい登場なのに締まらない。そんな事を思っていると、宿屋のスタッフ総出でお見送りされてしまった。余程の大貴族とでも思われてしまったようだ。

 車を発進させると、人が好き勝手横断していた車通りの少ない道路に、人は一人もおらず、自分たちの車の邪魔をしないよう端に寄っていた。きっとこの世界の貴族は傍若無人な奴が多く、怖がられているのだろう。


 

「ところでボス、この車って地球の?」


「んぁ?・・・そうだ、見たことあんだろ。ロールスロイス・ファントムだ。」


「ライターもか」


「よく気が付いたな。コイツはST・デュポンのライターだ。俺がこの世界に来た時に持っててな。管理者にこの世界仕様に変えてもらった物だ。世界で俺だけしか持ってねーんだぞ!」


「よくわからないが、流石は我々のボスだ!」


 よくわからないのに褒めるあたり、いい加減な奴だ。そんな愉快な会話をしながら新たな仲間探しに、灼熱の都バサへと向かう。



お読み頂きありがとうございます。

ボスのハードボイルドなシーンを早く作りたいのですが、ハードボイルドに表現できなさそうです。でも頑張ります。はい

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