美女と地獄の訓練
大きなギルドと期待して入ったのに弱小ギルドだったと知ったアキト。どうやらあと一人仲間がいるらしい。セミオンが言うには凄いらしい。何が凄いかは教えてくれなかった。そのうち分かるそうだ。
「それよりアキト、お前あの窮地どうやって抜けたんだ?」
「あれは俺のスキルなんだけど。物体を別の場所へ瞬間移動させる能力なんだ。」
「仲間なんだ、詳しく話せ」
いつになく真剣なセミオンに、こっちも真剣に話した。事細かに自分が模索した範囲や、能力のレベルを知るためにやった手法なんかも話した。
「まさかお前がマルチホルダーだったとはな。マルチホルダーってのはスキルを2つ持っている奴の事だ。残念だな、これなら大きなギルドにも入れたのにな。」
それはまた、悲しいお知らせだった。しかもセミオンに能力を聞いたら、教えてもらえなかった。お前がお前の能力を100%熟知して、それを俺に見せられたら教えてやる。だそうだ。一生教えてもらえない気がしたが、そのうちお目にかかれるだろう。そんなことを思っていたら、ドアがノックされた。
「失礼します」
「入れ」
セミオンの許可を得て入室したのは、金髪でポニーテールの美人だった。歳は同じくらいかな。たぶん。剣を持っているので少し怖い。
「紹介する。こいつはアリア、凄いやつだ。こいつはアキト例の運転手だ。」
「よろしく、アキト。ボスの窮地を救ってくれた事、心より感謝する。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
なんだか礼儀正しいし、しっかりしてて頼りになりそうだな。美人だし。すごいってこういう事か。
「早速で悪いんだがアリア、コイツを鍛えてやってくれ。例の訓練所を使え。」
「了解しました。ボス」
「アキト、このファミリーで戦闘能力は必要だ。アリアに鍛えてもらえ。」
「わ、分かった。」
そんなこんなで、町から徒歩10分のところにある訓練所なる施設に連れてこられた。小さな小屋かと思ったら巨大な地下訓練施設だった。金の無さそうな弱小ギルドがいったいこんなのどうやって作ったんだ。殺傷能力の無い武器が大量に置いてあったり、トレーニング施設があったり、シャワー室もある。すげー!
「じゃ、よろしくな。俺は少し野暮用があるんでな。」
そう言い残すとセミオンはどこかに行ってしまった。どうせ飲みにでも行ったのだろう。
「ではアキト、訓練用のスーツに着替えてください。」
「分かった」
そういわれ着替えると、確かに訓練用とだけあって重い。武器として、ハンドガンを選んだ。弾はゴム弾らしく、安全そうだが、当たったら痛いだけでは済まないらしい。
着替え終わり、訓練所に行くと、アリアが待っていた。
「さて、始めましょうか!私に一発でも攻撃が当てるか、2歩以上動かせれば勝ちです。基本間合いに入った際しか攻撃しません。では開始です。どこからでもどうぞ」
「分かった」
どこからでも来いと言う割には、あまり集中してなさそうだ。俺の武器が銃なのにどういうわけだ?恐らくスキルか何かの防御手段があると見ていいだろう。
様子見程度に、一発撃ってみる。銃声とともにゴム弾が高速で射出された。・・・・・・はずなのだがキンという音がしたが当たらない。おかしいな。もう一度トリガーを引く。同じく音だけで当たらない。
次は少し近づいて撃つ。しかし、同じく。おかしい!そう思い、足元を狙って撃つ。するとトリックが分かった。・・・・・・やばい。この人弾丸を斬ってる。しかも剣筋見えなかった。
「どうしました?私は弾丸なら背後から撃たれてもまず当たりませんよ。」
「本当かよ」
あり得る!この人ならあり得るよ!成程これはスキルを使った戦い方の練習か。ならば、瞬間移動で背後に回り込み、ゼロ距離で打つ!痛いだろうけど、済まないアリアさん!
そう思い、背後に瞬間移動し、銃を撃とうとトリガーにかかった指を引こうとした瞬間、ドゴッという音が体に響き、10メートル程吹き飛ばされてしまった。確実にあばら骨3本はいってるだろう。息ができない。しかもこの闘技場地面が砂漠のようになっているため、口とかに砂が入ってもう最悪だ。
しばらく蹲っていると、超回復が効いてきた。
「流石はボスが見込んだ男、タフですね!」
「いやいや、死ぬかと思ったけど」
「ハッハご謙遜を」
やばい、これは最悪死ぬかもしれない。そらそうだ、弾丸を斬れる人なんだ、俺にとっての一瞬は彼女にとっては欠伸が出るような間なんだ。間合いに入っては勝ち目がない。
しばらく、連続で瞬間移動をしながら、連射したり、空中から撃ったりしたが当たる気配なし。恥を忍んでスカートを覗くかのごとく真下から撃ったが効果なし。しかもスーツだから何の得もなく、強めに吹き飛ばされただけだった。
「まだやりますか?」
「お願いします」
考えろ。考えるんだ。予想外の場所から撃ってもだめ、なぜだ?まさか気配が分かるのか?剣士の感覚てきな。
試すか。訓練施設にあった銃をもう一丁持ってくる。
「二丁拳銃ですか。」
「行きますよ。」
まずはアリアの背後に銃のみを瞬間移動させる。この間アリアをもう一丁で打ち続ける。これは運転しながら瞬間移動できた事から出来ると踏んでだ。まー視点は瞬間移動先だから勘撃ちだが。
そしてアリアに見えないように弾丸を指ではじく音も銃声で聞こえてないはず!弾いた弾丸はアリアの背後に転移させておいた銃のトリガーを押す。転移する物体は、転移した後でもその速度を維持している。これも車を転移させた後、スピードが変わらなかったため知っていた。
見事銃から弾丸が射出された。しかし普通に斬られた。
ダメだ、もっと避けるのを不可能にしなければ。こうなったら飛ぶ弾丸を転移させよう!しかし失敗。しばらく試行錯誤して考えたのがゲートだ。ワープゲートを作れないかという事だ。車のような重い物を移動させる際に現れる黒い壁、あれはきっとワープゲートだ。恐らく仕組みは、一度別の異空間へ物を送り、異空間から取り出す。これはアイテムボックスに似ている。
つまり、異空間さえ作れれば!確か車を飛ばした時やったな。大切なのは飛ばす対象に集中する事。集中し、弾丸をスキャンしたような感覚になった。形や今ある場所がわかる。
そして移動先を決めておく、そして撃つそんで能力発動!・・・すると、アリアの背後に真っ黒な霧が立ち込めるような小さな穴が開き、黒い霧とともに弾丸が出てきた。すると気配に気づいたのか一瞬動いたが、反応できず、肩に直撃した。成功だ!!!
でも痛いだろうな。ごめん、こんなか弱・・・くはないけど、綺麗な女性に痛みを。と罪悪感に苛まれていると。
「さすがボスが見込んだ男です!いやー、直接体内に打ち込まれでもしない限り避ける自信あったんですが、こんな方法があったとは、一瞬気配がしただけでした。」
痛くないみたいだ。本当に凄い人だった。しかし、本当に凄いのはココからだった。今度は何でもありのタイマン組手。これはヤバい、超回復がなければ何度死んだことか。しかも寝ているといきなり攻撃される。気配を感じる練習だそうだ。
やばい、クリアできる気がしない。
お読み頂きありがとうございます。
説明わかりにくいと思いますが、どうか流してください。努力します。申し訳ありません。