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プロローグ




 俺は21歳の大学生。名前は、桐谷きりや 明人あきと趣味はドライブ。大学生といっても真面目に学業に取り組むでもなく、部活で汗を流すでもなく、アルバイトばかりしていた。バイトというのは、レンタカーの回送業務だ。その日に送られてくるスケジュール通りに営業所から別の営業所まで車を運転して運ぶ仕事だ。頭を使わず、ただ無心に運転するこの仕事が気に入っていた。

 しかし、ある日、目の前を走っていた車が事故った。回避できるタイミングではなかった。一瞬景色がスローになり、思考が停止していた。そこからの記憶は無い。そして今に至る。


 真っ暗な世界。何も見えず、天地の感覚がなくなっている。宇宙の果てのような場所だ。光源が無いはずなのに自分の肉体だけはくっきりと見える。音も無く、あまりにも非現実的な状況に、必死で記憶を遡りここに至る経緯を考えたが、事故の時点から今までがすっぽり抜けている。


「誰か状況教えてくれよ。」


「はいはーい」


 不安を紛らわそうと少し大きな声でボヤいてみると、突然応答があった。驚いて体がビクッとなった。しかし、声の主はそんな俺の事を意に介さず独り言の返答を続ける。



「え~っとですね、ここは死後の世界だと思ってください、しかし貴方はここで死ぬはずではありませんでした。こういったケースはすごく、もの凄く稀なんです!貴方は神界史上稀にみるイレギュラーさんです。地球もそろそろ終わるんですかね?・・・それは置いといて、このまま貴方を輪廻の輪に戻すと地球のバランスが崩れてしまいますので、遠い別の世界に行っていただきまーす!」


「ちょ、ちょっと待って、処理しきれない!ここでハイそうですかってなる奴いないから!まずは整理させてね!」


「仕方ないですね。忙しいんで少しだけですよ。・・・あ!質問は3つ受け付けるんで慎重にね。」



 姿の見えない声の主相手に、どこを向いて話していいか分からず、とりあえず若干上を向いて声を張った。頭をフル回転させて状況を理解する。俺はとりあえず死んだ。これは分かった。事故の記憶から死を覚悟したのは覚えてる。これは無理やり飲み込もう。そして、俺の死は想定外の事で・・・・・・無理。もう理解すんの面倒だ。

 半ば諦めのような、ヤケクソのような気持ちで気持ちをリセットする。


「はい、じゃあ質問いいですか?」


「お、早いですね~、どうぞ!」


「貴方は誰?」


「貴方の世界の言葉を借りるなら神です。正確には、地球の管理者ですけど。」


 どうやら神様らしい。何で姿が見えないのかはどうでもよくなった。神様だからかと飲み込むことにした。


「次、俺がこれから行く世界はどんなところ?」


「それは追い追い説明しますけど、ま~、地球出身の方もチラホラいるんで安心してください」


 また質問が増えそうな答えだな。人間ここまで理不尽で理解不能な事に遭うと妙にどっしりするもんだな。など少し呑気な事を思ってしまった。


「ささ、最後の質問ですよ!張り切ってどうぞ!」


「・・・・・・僕が向こうの世界ですべき事とかあります?」


「特にないでーす!強いて言うなら早々と死なないでくださいね!」


 どうやら俺の異世界転生は勇者として魔王を倒すストーリーではないようだ。こういう本をたまに読むが絶対何かしら目的があるのに、まったく酷い扱いだ。



「っと、時間が押してますね。じゃあここからは質問厳禁で!今後の説明をしますね。貴方が行く世界は、まー少し変わった世界ですね。魔法やスキルという概念があります。」


 お、異世界っぽい!などと思っている自分はきっと異常なのだろう。話がすごい速度で進みすぎて若い人の話を聞かされてる爺さんにでもなった気分だ。


「貴方の好きだった車もありますね~。」


 異世界っぽくない・・・。


「国は大きく三つあります。王国、帝国、魔の国です。人間、エルフ、ドワーフ、獣人辺りが住むのが王国と帝国です。魔の国は魔人がいます。王国と帝国は最近仲が良くないですね。魔の国が魔王不在だとこういう事になるんですよね~。後はご自身で調べてください!あ、もちろん全ての言葉や文字も母国語のように理解できますからね。王国も帝国も首都から離れると治安悪いです。まー町によりますけどね。」


「さて、いよいよ異世界に送るんですが何か希望はありますか?」


 希望と言われても。所により治安が悪いそうなので自衛の手段は必須だな、あと通貨かな。これでいっか!今は考えるの面倒!というかいい加減この異常空間に酔ってきた。


「まず自衛の手段!応用が利く使いやすいやつ下さい、あとお金!多ければ助かります。あ、それと物を持ち運べる感じの何かください。」


「自衛の手段が大雑把ですね。日本から飛ばされる方は皆具体的で無茶苦茶な能力欲しがるんですが。」


「僕も強い方がいいです。」


「・・・面倒なので適当にやりますね。お金は一番普及していて価値が安定している王国の通貨で適当に、持ち運ぶためにアイテムボックスあげますね、使い方は自然と分かります。

 最後に、どこに着地するか知らないので、即死だけはしないように!」


 最後まで適当だな!!そう言おうと息を吸い込むと、乾燥した熱い空気が喉を焼いた。咳き込むと同時に、真っ暗な空間から地面に両足で立っている事に気づく。一瞬で五感に刺激が戻り、光に目が慣れるのを待つことにした。


 目が慣れてきて見えたのは、だだっ広い砂漠、そして多少荒れてはいるが見慣れたアスファルトの道路。いったいどこに繋がっているのか、砂漠を切り裂くように伸びる道路は、終わりが見えず、やたらと広く見える空が心に波を立てる。先行きの見えない不安を振り払うように首を振り足元に視線を落とすと、小さなポーチが転がっていた。

 拾い上げて中を確認すると、さっきまで自分がいたような真っ暗な空間が広がっている。手を入れるとなぜか中に何が入っているか理解できた。ポーチの中身は、(手紙、アイテムボックスの説明書、お金10万円)


 手紙を取り出したいと頭で思うと、手に紙の感触を感じた。早速取り出して書いてある分を読むと、どうやら俺をココに飛ばした張本人からのようだ。


【どうも、元地球の管理者です。元というのは君の監視役に任命されたので元です。私の事ははリリィと呼んでくれていいですよ。もちろん貴方のサポートも仕事です。お陰様で楽な役職に就けました。ラッキーです。

 さて、アキト君。君の能力値を分かりやすく説明しますね。まずスキル、正体不明の物が一つ。ちなみにコレは何故か君がこの世界に着た瞬間に身に付けていたスキルです。何故かは知りません。で、私があげたスキルが、超再生です。疲れとか怪我とかすぐ治ります。応用利くでしょ?・・・あ、そうそうお金なんだけど10ゴールド入れといたから、1ゴールドは10シルバー、1シルバーは1000ブロンズね、まー10万円くらい持ってるって思ってね。帝国では金貨銀貨銅貨ね、価値は同じくらいかな。では、よい旅を。】


 気が利くのか否か分からないサポート役がついたもんだ。次にアイテムボックスの説明書を読むが、収納する時は収納したい物に触れ、収納したいと念じてアイテムボックスの付与された容器を開ける事で収納できるそうだ。このポーチは持ち主にしか扱えず、破損した際には、代わりの容器やバッグを長時間持ち歩くと勝手にアイテムボックス化するらしい。ちなみに同時にもてるのは一つだそうだ。



 さて、それではスキルを試そう!ワクワクを押し込めて冷静に能力の発動を目指してポーズをとったり、声をあげたりしたが無反応だった。これは追々探っていこう。まずは人間、というか知的生命体に会いたい。

 町が見えるまで距離がありそうだが、我慢して歩くことににしよう。そう思い、いつもより重い足取りでアスファルトらしき道路を歩く。

お読みいただきありがとうございます。


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