パラレル
ケンタの時間。
みさの時間。
そして私の時間。
彼の時間。
パラレルに進む時間が、どこかで交差する。なぜそうなったのか、誰にも分からない。
膨らんだ実は弾け誰にも止められなかった。
私たちはその時間を生き、15年後今目の前にいる彼が、あの時間を掠るように過ぎる事ができたなら、今と同じ姿はないのかもしれなのだと思わずにいられない。
私たちは1度だけの人生を、少なくとも1度きりの時間の中を歩かなければならない。
その日、駆け寄った私の前に立ち塞がったのはケンタだった。
どこにケンタがいたのかも気が付かなかった。彼と、彼に走り寄る私の間に現れたケンタ。
「小倉に帰れ」
ケンタの存在に私が驚く間もなく、ケンタの口から激しい口調の言葉が漏れた。
その激しさに驚いた。
みさはいない。
私が答える暇もなく、ケンタに腕を掴まれた。
万華鏡のように変わってゆく景色を見ていた。だからどうのというのではなく。見える景色が万華鏡のように変わるのを見ていた。何かの力によって。神様の運命とか、定めとか、そんなものではなく、人の意思に依って変わってゆくのもだ。力とは、人の意思だ。もしもその時、私にそれ以上の力があったなら、その景色は変わる事はなかったのではないだろうか。
つまるところ、ケンタの声と。私の腕を掴んだケンタの手の力は私の皮膚を傷つける程激しものではなく、でも多分、解く事は出来ない、強さがあった。
彼を見ていた私の視線は、幼い頃から見てきたケンタとの世界に戻ってゆく。とても自然に。