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仮面β  作者: 霧咲 ユウ
7/8

曖昧な思い出。

□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








…翌日、社は学校を休んだ。








『……離して……』








…昨日、保健室で見た彼女の顔が頭から離れない…。








「…カズ〜?」




「……………………」




「ねぇ、カズ‼︎」


「うわぁっ‼︎……」




…肩を叩かれてびっくりした。




「…なんだ…雫か。」


「なんだとは失礼だな!」


「ごめん。」


「…どうしたの?ボーっとしちゃって。」


「…うん…………」




…昨日の事…


…上手く説明出来なくて…


…言葉が詰まった。




…結局、言えてなくて…


…変な沈黙が流れた。




「それじゃあ、カズが喜ぶとっておきの物をあげよう♪」


雫は笑顔でカバンから何かを取り出した。


「……それは……?」


「ジジャーン!Jack-13 LIVE TOUR 20XX 〜SWEET SKULL BABY〜 …のチケットだぁ‼︎」


雫が勢いよく出したそのライブチケットは、一瞬で俺のモヤモヤを吹き飛ばした。


「…雫ちゃん‼︎……どっ…どうやってそれを⁉︎」




…俺が動揺するのも無理はない。




…数日前…


…このライブのチケットを求めて奔走したが、結局予約がいっぱいで泣く泣く諦めた。


…この話は雫も知っている。


…落ち込んで、散々愚痴を聞いて貰ったから。




「…インターネットでね、偶然見つけたの。当日、急用で行けなくなったので、定価の半額でお譲りします…って。」




…雫はそれを購入したと言った。




「…おおおおおっ‼︎すげーぞ雫‼︎ありがとー‼︎‼︎」


テンション上がって雫を抱き上げ、グルグル回った。


「きゃ〜カズ〜はしゃぎ過ぎ‼︎」


「…あっ…つい…」


…が、我に返り落ち着いた。




「じゃあライブは今度の土曜日だからね♪」


「了解。……ん?」




…今度の土曜日って…




「…明日じゃん‼︎‼︎」


「時間は4時に私の所の駅に来てね!」


「ok!」


「…チケットは、カズが失くしたら困るので、私が預かりま〜す♪」


「…えっ?失くさねーよ?」


「ダ〜メ〜!そう言って失くしちゃうのがカズなので〜す(笑)」


「…いつの話だよ。」








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








…まあ確かに、小さい時はそうだった。


…大事に肌身離さず持っている物ほど、気が付いたら失くしていた。




…オモチャとか、お菓子とか、ゲームとか…色々……。




…その度に泣きべそをかいた事も雫は覚えているんだ。








「ねぇ……もう泣かないで。アタシのお菓子あげるから。」




…あの時は…




…幼稚園の行事か何かだったかな?




…お菓子を貰った。




…すぐに食べた子もいたけど、俺は後で食べようと取っておいた。




…そしたら、どっかいっちゃって…




…落ち込んでいた俺に、1人の女の子が近寄って来た。




…それが雫だった。








…って…


…俺、そんなに泣き虫だったっけ?
















「かーくん♪」




……?




…聞いた事のある声…




…この声は…




…俺の事をそう呼ぶ人は1人しかいない。




「その呼び方やめろよ!」


「かーくんは、かーくんだもん♪」


「引っ付くな!」








…懐かしいな…








…母さん…








「こうやって歩いてると、何か恋人みたいだね♪」


「いや、親子だよ。」


「かーくん冷めてるなぁ〜」


「アンタがガキっぽいんだよ。」








…母さんは…


…いつも明るくて…


…無邪気で…


…笑顔の絶えない人だった。








「…ちょっ…やめろよ…」


「照れるな照れるな〜」




…腕を組んで歩きたがる母親に、誰かに見られたら恥ずかしいって気持ちの俺。








…あの時…


…何処に出かけてたんだろう。








「かーくん…………大好き…………。」
















「…………っはっ‼︎」




……あれっ?




「折原、やっと起きたか。」


「……えっ?」




…先生?




「和馬〜また寝不足か〜?」


…トラのからかう声と、教室に広がる笑い声。








…夢…だったのか。








…チャイムが鳴り、授業が終わった。


「折原、ちょっと来てくれるか?」


先生に呼ばれた。


「あ、はい。」


「和馬〜何やらかした〜?」


横からチャチャを入れるコイツ。


「バカトラじゃあるまいし。」


「ぅげっ」


…トラさん、あっけなく返り討ち。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「…えーっと…確かこの辺りに…」




…学校の帰り、俺はメモを片手に街にいた。




…メモというのは手書きの地図。




…地図を書いたのは担任。








…少し遡ると…


今日の授業の後、先生に呼ばれた時…




「えっ…俺が?」


「同じ駅を最寄りにしてるのが折原しかいなくてな…頼まれてくれるか?」


「別にいいですよ。」








…こんな会話があって俺は今、社の自宅を探している。




…プリントを届けに…




…原付は駐輪場に置いてきた。




…社に見つかったら、校則違反だーって怒られるかもしれないから。








「此処かな?」




…目印の建物…


…その向かいにある小さなハイツ。


…番号が書いてある部屋の前まで行き、インターホンを押した。








…応答が無い。








「あ…開いてる…」


…ドアには鍵がかかっていなかった。




「社さーん?」


…ドアを少し開けて呼んでみた。




…いないのかな?




…不用心だな…




…玄関から部屋を覗いた。




…足が見えた。




…これってまさか…




「…社‼︎」




…部屋に入ると倒れていた。




「おいっ…しっかりしろ‼︎」




「……ん…………スゥーー……………」




…寝てる?








…昨日から、彼女の様子がおかしいと思っていた。




…気絶する様に眠る…




…本当にただ、眠っているだけ。








…ただ、眠っているだけ?








…彼女をベッドに運んだ後、俺は見つけてしまった。








「……仮面だ……。」


…それは足元に無造作に転がっていた。








…それは、以前俺が拾った物で…


…社が持って行ってしまった、あの仮面。








…思い出した。








…俺が倒れたのは、夜通し仮面で遊び過ぎたから。


…それが社の手に渡り、翌日から彼女はこのザマ。


…それに今だって…








…原因は、この仮面だとして…


…もし、社がこの仮面で俺と同じ事をしていたら…








…寝不足になるまで仮面を使ったのか…








…会いたい人がいるのか…








…そういえば昨日…


…お姉ちゃん…って言ってた…。








…だとしたら…








「…………ん…………」


…社が目を覚ました。




「…大丈夫か⁈」


…俺は近付いて声をかけた。




「……折原さん……?」


…あんまり見えてなさそうな視界の中、彼女はぼんやりと俺を見ていた。




「プリントを届けに来たんだ…。」


…俺は机の上にソレを置いた。


あと、昨日忘れて行った眼鏡も。




「…勝手に入ってゴメン…それじゃあ。」


俺は部屋を出ようとした。




「あの…………」


…彼女の方から俺を呼び止めた。




「…あなたに…話しておかなければならない事が……あります……。」








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