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仮面β  作者: 霧咲 ユウ
2/8

日課と日常。

□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








…アナタハイツデモ ブキミニワラウネ…








悲しみをそこに込めた

願いと一緒に封じた

ねぇ…不思議と…


一瞬で涙は枯れた

目は死んで口は笑った

あぁ…自然と…


失った顔はもう

何処にも無く

代わりの物を求めて

夜道を一人で歩いていたんだ


アナタハイツデモ ブキミニワラウネ

オドケタカオシテ


甘い髑髏は真っ赤な瞳で

私を見つめて剥製にした。








『お送りしたのは、リクエストランキング第4位、KILLTOでJesterでした。』




『ナンバー…スリー!』




『リクエストメールを紹介します。

ラジオネーム、おりひめさんから頂きました。』


《Jack-13の独特の世界観が大好きです。

楽曲を聴きながら背景を想像するのが楽しくて、リクエストしました。》


『それでは聴いて頂きましょう。

Jack-13でSad Sheep Songです。』








メリーはただの羊飼い

特に裕福でもない

恵まれているのは

その美しい容姿


僕はただの飼い羊

不特定多数

その中の1匹

迷える子羊


負けず嫌いだけれど

気が強い訳じゃない

いざ 喧嘩をしたって

敵う筈がない


そんな時 貴女は

僕の背を撫でて

それだけで充分と

言い聞かせ我慢


春は緑が広がる牧場の中で

貴女と楽しく暮らせられるのに

雨上がり日差しが照りつける季節

夏の僕 見ないで ミニクイスガタ








『お送りしたのは、リクエストランキング第3位、Jack-13でSad Sheep Songでした。』
















…月曜日の深夜、このラジオを聴くのが俺の日課だ。




…おりひめ…


…実は俺のラジオネーム。




…Jack-13は女性ファンが多いから、俺は性別を隠してメール投稿していた。




…とはいえ、自分のリクエストが紹介されて、ちょっと嬉しい。




…敢えて欲を言うなら…


…この曲、最後まで聞きたかったな。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








…俺の名前は【折原 和馬】。


…ラジオネームが【おりひめ】なんて何の捻りも無いんだけどね。




…このラジオは、つまらない日常の細やかな楽しみ。




…もう他に聞きたい曲も無いし…




…寝るか。
















…電気を消した。








…ライトの残像で目がチカチカする。








…もう、3年経ったんだよな…。








…ハイビームにされた車のライトが目に刺さる。








…それが猛スピードで歩道に突っ込んで…








…通行人を次々と跳ねた。








…その中には、俺と母親もいて…








…あの時の人々の悲鳴や、血まみれの光景が脳裏に焼き付いて離れない。








…ねえ、母さん…








…どうして俺だけが助かったの?
















「…………ん…………」




…朝。




…何か変な夢を見た。




…あんまり覚えてないんだけど…




…悲しい気持ち。








…取り敢えず…


…コーヒーを淹れて、テレビをつける。








…またやってる…


…コンビニ強盗事件。


…被害に合うのは高校生のバイト代ぐらいの金額で、覆面の犯人は未だ逃走中。


…もう何件目だっけ?








…つまんねえニュースを見ながら、朝飯を食べる。








…適当に支度をして、家を出る。








…父親は俺より先に起きて仕事に行き、俺が寝た後に帰って来る。








…だからこの家は、ずーっと俺1人…。








…つまんねえ家。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「お〜い和馬ぁ〜‼︎」


…向こうから俺を呼ぶ声。




「おう、虎秀。」


「秀虎だっつ〜の‼︎」




…このウルサイ茶髪は【勝木 秀虎】。


中学の時からつるんでいて、『虎秀』とか『トラ』とか呼んでいる。




「昨日のラジオ聞いたか〜?あのJesterって曲、サイコーだなぁ♪」


「ああ…何となく聞いてた。」


「和馬はJackしか興味ねぇもんな〜(笑)」




…俺のJack好きは公にはしていないが、身近な友達2人にだけ話してある。




…トラがその1人。




…一見、俺が素っ気ない様に感じるかもしれないが、これでもそれなりに楽しんでいる。








「カズ〜、トラちゃ〜ん‼︎」


…歩道橋の上から声がした。




「ん?」


「あっ雫ちゃ〜ん☆☆」


…トラの顔が緩んだ。




…わかりやすっ‼︎




…こっちのウルサイ奴は【荒澤 雫】。


俺の幼馴染。


小学生の時に大阪に転校したんだけど、高校でまさかの再会。




…今ではトラと3人で遊ぶ事が多い。




「2人とも、おはよ♪」


…歩道橋から駆け降りて追い付いた。




「おはよ〜☆☆」


ニヤニヤが止まらない人。




「ああ。」


…こっちは愛想無し。




「ふんっ相変わらずインキな人やねぇ〜(笑)」


…俺に対しては、こんな態度。




「方言入った雫ちゃんも可愛い〜☆☆」


…目がハートのおバカさんも健在。








…まぁ大体、朝はこんな調子で始まる。








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「うげっ…‼︎」


…靴箱を開けると雪崩が起こった。




「…相変わらず大量だな。」


…トラが雪崩た物々を一緒に拾う。




「うわぁ〜…これ全部ラブレター?」


…雫も一緒に拾いながら驚く。




「…カズっていつからこんなにモテるの?」


「…オレが知ってる時には既に。」




…あの、聞こえてるんですけど。




「…はぁ…。」


…2人から集めた物を受け取って、俺は近くのゴミ箱に捨てた。




「…あ〜〜勿体無い…。」


…トラの悲壮な声。




「さぁ行こうぜ。」


…3人で教室に向かう。




「…そこの折原さん?」


…後ろでイヤ〜な声。




「うわ、出たぁ…。」


「あ、社さん…おはよう!」


…トラが俺を盾に隠れ、雫は普通に挨拶した。




「おはようございます。」




…少し沈黙。




「…何?」


俺はやっと振り向いた。




「…紙は燃えるゴミです。分別して下さい。」


…彼女はそう言って立ち去った。








…彼女は【社 蝶子】。


無表情の黒縁メガネ。


めっちゃ真面目で全く隙が無くって、絡み辛い人。


…なんだけど…


…何か俺、嫌われてるみたいです。








「ひぇ〜おっかねぇ…あのサイボーグw」


…虎秀、ビビりすぎ。




「此処、空きカン専用だもんね…社さんが正論だ。」


…雫がゴミ箱からそれらを拾った。




「雫、わりぃ。」


…俺が捨てた物を拾わせるハメになったので。




「いいよ、次から気を付けよ♪」


…嫌な顔一つせずに動く雫に、実は頭が上がらない。




「何か雫ちゃんの方がお姉さんみたいだな!」


トラがニヤニヤしてからかう。




「ふふ〜ん♪私の方がお姉さんなんだよ〜♪」


…ちょっと得意気に威張る。


「2ヶ月だけな。」


すかさずツッコむ。


「それじゃあ圧倒的にオレが1番年上じゃねぇかよ‼︎」


トラが騒ぐ。


「10ヶ月だけな。」


…まぁ全員同級生な訳だから、数ヶ月単位の数字は大した事じゃない。








…普通の高校生活。








…平凡な日常が当たり前だと思ってた。








…まだこの時はね。








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