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WORLDEAR  作者: ちひろ
第一章
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第六十七話 トゥライト平原に集結

 道々語り合いながら、一行はトゥライト平原を目指した。

「そうか、ウェール村もえらい目にあってるわけですね」

「うむ。我々を追ってきたのも、留まるに留まれなかったからであろうな」

 ウェール村の皆の今の様子、セプルゴの妻の出産、それぞれの道中について。話題は尽きない。

「そういえばケーワイド、ローホー山の抜け穴! あれ崩れてて通れなかったんですよ」

 ドゥナダンは散々だった横穴での経験を思い出して声を上げた。

「そうそう! 結局山を迂回したんです!」

 アイレスもケーワイドを問い詰めにかかる。ケーワイドは杖で頭をかきながらすまなそうに、

「そうか、それは知らなんだな。悪いことをしたの」

 と言った。ショーラ町など周囲の住民にとっては、ローホー山を通り抜けられないことは周知のことであるようだ。ショーラ町長のミグラルが、

「旅の前に道程を確認するのは基本だろう? 相変わらず適当だな」

 と辛口で批判した。しかしアイレスがボソリと、

「でも真っ暗な中で、日のあまり当たらないところで暮らすのは気が滅入るなって思ったんです。白い人が元々は無気力なのってもしかして…」

 とつぶやき、皆は無言になった。

「………」

「………」

 アイレスたち8人以外は白い人と対面するのが初めてであった。白い国とモクラス山脈だけを隔てたウェール村以上に白い人の情報が希薄なのだ。

「まあ、積もる話は座ってしよう。今夜はようやく援軍すべてが揃うわけだな」

 そうケーワイドが朗らかに言うと、ファレスルやセプルゴが賛成する。

「そうだな! ドゥナダンたちが合流したら食わせようと思って、ユーフラが買ってきた果物で焼き菓子を作ったんだよ」

「ポルテットが新しい剣術を体得してね。アイレス、相手してやってくれよ!」

 今夜は二の月が満月だ。温かい夜になるだろう。



「さあ、ここに集いし勇敢なる戦士たちに誉れあれ!」

「おおーっ!!」

 トゥライト平原に集合したケーワイドら8人、ショーラ町からの3500人、テイノ町からの3000人、ローホー村からの2000人、カイシキ村からの1500人が初めて一堂に会し、ささやかな宴を開いた。酒もほんの少し振る舞われた。

「宴もたけなわだが、皆の衆!」

 ケーワイドが群衆の中央で話し始めた。隣のユーフラが空気を操っているのか、輪の端にまで声が響き渡っている。

「改めてここまで参じてくれたことに感謝を申し上げたい。諸君の気高き精神にこの上ない敬意を表そう!」

 一同から割れんばかりの拍手や指笛が返ってくる。その盛り上がりが静まるのをケーワイドはゆっくり待って間をとった。

「ここから先の計画を諸君に伝えたい。夜はどこで何が聞いているか分からぬから、まずはこの1万人すべてを防壁魔法で覆いたいが異論はないか?」

 あちこちから「異議なし」と声が上がった。それを確認してケーワイドは満足そうにうなずき杖を高く掲げた。見る間に援軍の全員が納まる大きさの防壁魔法が現れた。

「これは特殊な防壁魔法での。内側からは出ることができ、また内側から手を伸ばせば外にいる者を引っ張りこむことができる。諸々の用を足す時も安心めされるが良かろう」

 男ばかりの援軍の中から豪快な笑い声が聞こえた。ケーワイドの側にいるユーフラは露骨に眉をひそめている。

「まずは白い人の進路の予測だが…」

 ケーワイドは長々と演説し続け、援軍の士気を上げていった。そして最後に、

「皆の衆。決して勘違いしてほしくないことがひとつだけあるのだ。それは、これは単なる戦ではないということだ」

 と告げた。ケーワイドは慎重に言葉を選んで話し続ける。

「我々8人は白い人8000人に追われておる。その多勢を足止めさせるというのが狙いなのだ。納得できぬかも知れんが、これを誓ってほしい。白い人を殺してはならぬと」

 シンと静まり返った中からミグラルが立ち上がった。

「我が友ケーワイド。私も含め、皆持ちうる限り最高の装備でここにいる。それで白い人を殺さずに戦うのはかえって難しいものだぞ」

 テイノ町の隊長も立ち上がった。

「殺さないようにするには手を抜く必要があります。それではこちらが命を奪われましょう」

 全体がザワザワとし始めた。ケーワイドは少しうつむいたが、キッと決心したように顔を上げた。

「ではこうしよう。皆の武器に私が魔法をかける。その武器で命を奪うことができなくなるが、代わりにそれで切りつけるとかすり傷でも気絶するほどの痛みを感じるものだ。どうだ?」

「それなら急所を狙わなくても倒せますな」

「遠くから矢で射られたら?」

「それは隊列の組み方で防げる。私は賛成だ」

「回りこまれた場合はどうすれば?」

「船乗りは目がいい。見張りは我々に任せていただきたい!」

「こちらには魔法使いが3人いるから…」

 その後、各地区の指導者が集まり、さらなる作戦を練ることとなった。

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