第四十三話 生真面目な若いふたり
最年長者と最年少者がショーラ町へ向かい、良くも悪くも気安い旅となった一行は、時に軽口を言いふざけ合いながらも、若者らしく軽やかに進んでいった。ただひとり、セプルゴを除いて。傷はふさがっているものの、歩くために身体をひねるのがこたえる。不自然な歩き方をしているせいで背筋から腰にかけて重くなってきた。
「大丈夫か、セプルゴ。もうすぐ俺とアイレスはテイノ町に向けて道を外れるよ」
「私とトールクもそろそろ分かれるね。ユーフラがいるから何かあっても大丈夫だと思うけど」
「ファレスル、せめて滋養のつく食べ物を持たせてあげられない?」
皆口々にセプルゴを案じるが、ようやくセプルゴにもいつもの空元気が戻ってきた。
「大丈夫だって。傷は完治するまで消毒して放っておくしかないし、あとは気合い気合い!」
「でも無理しないで。わたしがセプルゴと一緒なんだから。あなたを支えるだけの力は持っているつもりよ」
ユーフラの真剣な眼差しに、一同は「ユーフラと一緒なら大丈夫だ」とうなずく。
ワン川を越える手前で街道はふたつに分かれる。本道はまっすぐ伸びており、アイレスとドゥナダンが向かうテイノ町へは横道にそれて進むことになる。
「じゃあセプルゴ、気をつけて」
「ちゃんとユーフラに頼ってね」
ふたりが何度も振り返るのを見て、セプルゴは「参ったな」と苦笑した。
「ふたりともセプルゴが心配なんだって」
「分かってるよ。あいつらは生真面目だから」
「私たちと違ってな」
ファレスルにそう言われ、
「一緒にするなよ」
とセプルゴも冗談を返した。ユーフラとトールクは調子の戻ってきたセプルゴを見て安心して顔を見合わせた。
「そういえばさ、ドゥナダンとアイレスを同じ組にしたの、ケーワイドはどんな考えでそうしたんだと思う?」
新たな話題提供は決まってファレスルだ。
「そうね、やっぱり峡谷を越える時に離ればなれにしたのを後悔してたんじゃないかしら」
「どうだろう、ケーワイドは何か裏がありそうだからなあ」
「我が師匠ながら、否定はできないわね」
4人とも含み笑いをする。
「しかし私がケーワイドの立場でも、あのふたりを組にするだろうな」
ずっと言葉を発しなかったトールクも意見を言い出した。珍しいことなので他の者も耳を傾ける。
「ドゥナダンもアイレスも、お互いがいた方が潜在能力が発揮されると思う。守るものが明確な方が力を出せる手合いだ」
「使命感が原動力になるんだろうな」
「やっぱり生真面目なのよね」
「そうそう、ファレスルと違ってな」
ヒョコヒョコと無理な歩き方をしながらもセプルゴは軽妙に茶々を入れた。
「さて、あの橋を渡ったら今日は休もう。明日からはこの4人もふたつに分かれるのだから、負担に備えて早く寝るべきだ」
トールクはケーワイドが考えた組分けの絶妙さを改めて実感していた。落ち着いている自分とユーフラを分け、負傷しているセプルゴと腕利きの魔法使いであるユーフラとを組ませる。アイレスとドゥナダンはふたりでいると力を発揮し合えるから離さずに。体力のいる船旅は自分とファレスルだ。最年少で危なっかしい面もあるポルテットはケーワイド自身の手元に置く。
(しかしケーワイドは結論しか言わない。よくよく考えないと理解できないこともある……)
少し年長である自分がどうケーワイドを支えていくか、トゥライト平原で再合流する前に考えを固めておきたいとトールクは思った。




